![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/169880608/rectangle_large_type_2_1916439b5cf021eface64970f922dcb4.png?width=1200)
コンサルティングファームがSES企業を買収する理由と事例:人材獲得とサービス拡充の戦略
近年、デロイトやキャップジェミニといった大手コンサルティングファームによるシステムエンジニアリングサービス(以下、SES)企業の買収事例が増加しています。
この背景には、コンサルティング業界特有の事情に加え、情報技術業界全体の人材不足、そして顧客のニーズの変化という複合的な要因が存在します。
なぜコンサルティングファームはSES企業を買収するのか?
コンサルティングファームがSES企業を買収する主な理由は以下の通りです。
サービス提供能力の拡大
顧客に対し、戦略策定といったコンサルティングだけでなく、システム開発や運用といった実行段階まで含めた、より包括的なITソリューションを提供するため。これにより、顧客の課題解決を一気通貫で支援することが可能になります。専門性の強化
クラウド、サイバーセキュリティ、AI、金融システムなど、特定の技術領域における専門知識や技術力を迅速に獲得するため。変化の激しいIT業界において、スピーディーな専門性獲得は競争力強化に直結します。人材の確保
深刻なIT人材不足に対応するため、優秀なエンジニアを確保することは喫緊の課題であり、買収は有効な手段となります。特に高度な専門性を持つ人材の獲得は、自社育成に時間を要するため、買収が有効な手段となります。事業ポートフォリオの拡充
新たな事業領域に進出し、収益源の多様化を図るため。コンサルティング以外の収益源を確保することで、事業の安定性を高めます。
これらの目的を達成するために、コンサルティングファームはSES企業を買収し、自社のビジネスモデルを強化しています。
コンサルティングファームによるSES企業買収事例
![](https://assets.st-note.com/img/1736748789-OgyeFCRxpbfQD6vKIwtn04lS.png?width=1200)
以下に、具体的な買収事例をいくつかご紹介します。
グローバルファームの事例
キャップジェミニ(2023年)
日本国内におけるクラウドとデジタルインテグレーションの能力を強化するため、SIerであるビッグツリーテクノロジー&コンサルティングを買収しました。デロイト トーマツ(2023年)
サイバーセキュリティ分野の強化を目的として、km2yの全事業を譲受しました。
km2yは情報セキュリティイベント管理(SIEM)に関する豊富な経験を持っており、この買収によりデロイト トーマツはSIEM基盤のコンサルティング、開発から保守までを一貫して提供することが可能になりました。
国内ファーム・その他企業の事例
ATLIKE
コンサルティングファームであるATLIKEが、システムエンジニアリング事業等を行うレバテックへ株式譲渡を行いました。アステックコンサルティング
アステックコンサルティングは、SES事業などを行うインサイトの全株式を取得し、完全子会社化しました。GSX
情報セキュリティとサイバーセキュリティに重点を置くGSXが、SES事業会社であるBBSグループEPコンサルティングサービスのITソリューション事業部を譲受しました。ITbook
ITコンサルティングを展開するITbookは、エンジニア派遣などを行うRINETを子会社化しました。ゼレンホールディングス
AI/機械学習、データサイエンスといった先端技術を活用したシステム開発やコンサルティングを行うリブゲートを子会社化しました。これにより、ゼレンホールディングスはAI・データサイエンス分野を強化し、サービスラインナップの拡充を図っています。ISID-IT
株式会社電通国際情報サービス(ISID)グループの株式会社ISIDインターテクノロジー(ISID-IT)は、キャスレーコンサルティング株式会社のSES(システム・エンジニアリング・サービス)事業を譲受しました。これにより、ISID-ITは開発体制を強化し、事業領域の拡大と事業成長を目指しています。
SES業界の現状と今後の展望
![](https://assets.st-note.com/img/1736748804-qL8ykbX3MpG2gmW0zHn6Jr5x.png?width=1200)
SES業界は、ITの進化と企業のデジタル化で、求められることが増えています。クラウドやビッグデータ、AIなどの分野では、専門知識を持つエンジニアがとても必要とされています。
とはいえ高齢化で労働人口が減っている背景もあり、深刻な人手不足になっています。これに加えて、お客さんの求めるものがより高度で専門的なものに変わってきていることが、コンサル企業がSES企業を買う大きな理由になっています。
これからもIT人材はもっと必要になり、コンサル企業によるSES会社の買収は増えるかもしれません。SES企業側も、コンサル企業と協力することで、より高度な仕事に参加できるチャンスがあるという良い点があります。
まとめ
コンサルティングファームによるSES企業の買収は、人材獲得とサービス拡充、そして顧客ニーズへの対応という明確な目的を持った戦略です。
この動向は、IT業界全体の構造変化を反映しており、今後も注目していく必要があります。
この変化は、コンサルティングファームとSES企業の双方にとって、新たなビジネスチャンスと成長の機会をもたらす可能性を秘めていると言えるでしょう。