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プレイ記録(The Stillness of the Wind)

先日、The Stillness of the Windというゲームをプレイしました。
備忘録も兼ねての、考察も攻略も何もないただの記録です。
(※ネタバレあります)


なんとなくピンと来て買ったゲーム、少し寝かせてからプレイを開始したら、絵本のようなグラフィックで物語がはじまった。
どうやらここは田舎のはずれ、自分はマルタというおばあさん。
家の周りには荒野が広がっていて、少しばかりのキノコや井戸、風車などがある限り…

庭にはヤギが2頭とニワトリが6羽。

操作の説明もないままにおばあさんになったわたしは、とりあえずカゴを持って歩いてみる。
ニワトリ小屋を調べたら、卵が収穫できた!なるほどなるほど。

ヤギをさわってみたら、愛おしそうになでていた…
もう一度なでてみる。おばあさんがヤギを愛でる声が心からのものであることがわかって、何度も聴きたくなってしまった。

これからこの家での生活をどうやって楽しもう?考えている間に辺りは暗くなって夜が来た。
台所で料理ができることに気づき、卵とキノコをナベにいれる。
スクランブルエッグかな。

朝が来て外に出てみると、昨日の自分の足跡が残っていることに気づいた。
まだ何もわからずに、迷いながら歩き回った軌跡。
何気なく手に取った鍬で地面を耕すと、土が整い種を蒔けた。
だんだんとできることがわかってくる、親族から手紙がくること、バケツでヤギのおちちをしぼれること、それを使ってチーズが作れること、行商人がやってきて花のタネなどと物々交換ができること……

この物語は何が目的なんだろう?
数日過ごしたところで事件は起きた。

井戸から水を汲んで戻ってきたところで、
あんなに可愛がっていたヤギが、目の前でぱたりと倒れ死んでしまったのだ…

あまりのショックに「なんで!!」と画面に向かって声を上げてしまった。
撫でているだけでごはんをあげなかったのが良くなかったのか……
オロオロしつつも、やって来た行商人から品を見せてもらうと「干し草」があった。
もっと早く気づいていれば………
物々交換のための貴重品としてチーズを作ろうと、残った1匹のヤギからミルクをしぼる。

明日は干し草をあげるからね、ごめんね……


その日からわたしは囚われたように門の前で行商人が来るのを待ち、干し草を調達しては庭に積み上げるようになった。
もう1匹のヤギを死なせるわけにはいかないからだ。
庭を整えトマトを収穫し、これも干し草の足しにする。
棚に並べたチーズはもはや食料ではなく通貨だ、
晩御飯は卵だけの日が続いても、ヤギが生きているのを確認してなでているだけでホッとした。
溜まったチーズを雄やぎと交換しかわいい小ヤギが生まれた時には、あまりの可愛さに一日中追いかけ回した。
小ヤギはお母さんヤギの後ろをメェメェついていき、ちゃんと夜には小屋に戻ってくる。

そんな日々も長くは続かないことは、たまに届く親族からの手紙が段々と不穏になってくることからも察していた。
行商人は「オオカミに気をつけて」と脅かすようなことを言ってくる。
庭には銃があることには気づいていた、それをいつ使うのか、知りたくもなかったけれど。

ある夜、柵を閉めて家に入ろうとすると、
唸り声が聞こえて来た。

オオカミだ。

私は真っ先にヤギのことを心配した、
銃を手に取ろうとしたけれど、真夜中で辺りが暗すぎてどれが銃だかわからない。
クワや棒切れをとり間違えてガシャガシャやっているうちに、唸り声が近づいて来た。
せまる恐怖心に打ち勝てず、たまらず家の中に飛び込んだ……
そのままご飯も食べずにベッドに入り、オオカミが帰ってくれることをひたすら願った。

次の日の朝。

庭に出ると、ニワトリも、ヤギも、小ヤギも、みんないなくなっていた。
雨で育った花だけが虚しく咲いていて、わたしはひとりぼっちになってしまった…
こんな日に限って行商人もこない。
残っている卵を1つだけ調理した、こんなんじゃお腹が空いちゃうよ、おばあちゃん……

不運を象徴するかのように天気が悪い日が続くなか、
やっと来てくれた行商人に余った卵をすべて渡して1羽だけニワトリを買った。呑気に庭を歩く姿を見て少しホッとした。

1日ひとつの卵を食べながら、
ただ、玄関と門を行き来するだけの日々。
何重にもなった一筆書きの足跡が単調な日々を物語っていた、
やることがない、
できることがない。
魅力的なものを持って行商人が訪れても交換できるものがない。外の様子を伺い、家族からの不穏な手紙を受け取るだけだった。
いつまでこんな日が続くのか…

井戸は干上がり、いつしか花も枯れてしまった。ニワトリも死に、卵が手に入らなくなったので空腹のままベッドに入るしかない。

ああ。死ぬ時は門の外にある家族のお墓の前で倒れたい…とぼんやり思った。

唯一の他者であった行商人に別れをつげられてからは外に出る意味すら無くなってしまい、わたしはついに一歩も外に出ずにベッドで眠りについた。

悪夢を見た次の日の朝、咳き込みながら外に出ると辺りは一面の雪。
少し新鮮な風景だったので、以前狂ったようにチーズ作りをしていた小屋に久しぶりに向かってみた。
おばあちゃんはびっこをひいている。
ご飯も食べていないので具合が悪いのかも…
小屋の入り口にたどり着いたところで、ばったり倒れて動かなくなった。
あの日、餓死したヤギと一緒であっけなかった。
随分と感情移入してプレイしていたわたしはしばらく何もできなかった……


ヤギや行商人、拠り所をみつけては必死に縋りつき、それらが消えてしまってからは生きる意味すら見失ってしまったおばあちゃん。
わたし以外がプレイすれば、もっと他の展開があったんだろうか。
あの時銃を握ってオオカミを撃っていれば。
干し草だけでなく、役に立ちそうなものを手に入れていれば。
行商人を待たずにもっと家の外に足を伸ばしていれば。
動物じゃなくて畑仕事に振り切っていれば。
数多のifが浮かんでは消えたけれど、ゲームの画面は真っ暗になって動かない。


やり直しはさせてくれない最後の日々を、
日記のように書くことしかできなかった。


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