<美術館日記>五島美術館「白・黒・モノクローム展」


はじめに

10月9日日曜日、東京の、上野毛にある五島美術館に行った。
ここに来るのは3回目。
ネットサーフィン中に今回の白黒モノクローム展を知り、牧谿の水墨画が出る〜とホイホイつられてきた。

展示概要

平安から近現代までの白黒の作品を集めた展示。
大和絵から下絵、水墨画、鎌倉から近代、現代までの書画、版、陶器、玉まで多種多様なジャンルのモノクロが少しずつよせ集まっていた。
さらに源氏物語原本とその復元模写もあり、スペース少なめながら盛りだくさん、バリエーションが多く、時代と国の幅に酔った。

みどころ

《尹大納言絵巻断簡》(いんだいなごん えまき だんかん)鎌倉時代(14c)

「尹大納言」のひとまとまりで役職を表すらしい。
作者は鎌倉時代の歌人、花山院師賢(かざんいんもろかた)と推測されている。

出典、五島美術館「尹大納言絵巻断簡」(https://www.gotoh-museum.or.jp/2020/10/01/01-017/)2023年10月10日取得。

御簾や床、服は精緻な極細の均一な線で描かれている。
線を引いた後に胡粉をかけたのだろうか。元々見えないような細さの線にも関わらずさらに淡くなっていた。
そこに髪と冠の黒の塊がリズムよく配置され、御簾の模様のみが線の黒で書き起こされているようだった。
手前の後ろを向いた女性の髪の毛シルエットが特に美しい。
黒一色なのに、髪の内側に空気が含まれたふわりとした空気感を感じさせられる。
よく見るような源氏物語の大和絵は、色のリズムが意識されているように見えるので、その感覚で黒を置いていったのだろうと想像した。

調べてみた

大和絵とは、同時に展示されていた源氏物語のような色鮮やかなものだと思っていたので、このようなモノクロで完成だったのか?と不思議に思った。
調べてみた。


白描、白絵(はくびょう、しろえ)というジャンルが鎌倉時代にあるらしい。多分このジャンルのものなのだろう。
中国の白画がこれに相当するそうで、白描絵巻はそれに影響された大和絵と想定されている。

貿易で白描画といわれる線だけの水墨画のようなものが入ってきて、それとやまと絵が組み合わさってできたのだろう。
13世紀(宋代)の白描画↓

京都国立博物館《維摩居士像》
(https://www.kyohaku.go.jp/jp/collection/meihin/chuugoku/item01/)2023年10月10日取得。

《維摩居士像》の優美な表現をしようとしたであろうポイントの女性を比べてみると、その違いが面白い。髪型や服装のモチーフの違いはもちろんとして、その表現が違う。
髪について、維摩の方は、ぼかしで髪質を表現するのに対し、尹大納言は黒の面のシルエットで表す。
服について、維摩の方は、ひだを抑揚をつけて追っていき、顔や髪よりも断然存在感が強い。一方、尹大納言は髪の毛や頭を重視している。


より重視されていたのが、中国では服装のきらびやかさだったのに対し、日本では髪や烏帽子など顔や頭だったのだろうか、などと妄想が広がる。楽しい。やまと絵が中国の白描画から受けた影響って、「色って別になくても良くない?」の概念を取り入れたに過ぎなかったんだろうな、と思った。

多分このことについてはやまと絵様式の成り立ちや変遷について知るのが必要そう。勉強します。

五島美術館について

昭和35年(1960)、東京都世田谷区上野毛に開館。
東急グループの五島慶太氏(1882-1959)の構想。
古写経を中心に色々な古美術を蒐める。
最寄り駅は、東急大井町線上野毛駅。歩いてすぐ。

出典、五島美術館(https://www.gotoh-museum.or.jp/history/)2023年10月10日取得。

「白、黒、モノクローム展」は2023年10月15日(日)まで。

おまけ

最寄りの上野毛駅付近くのラーメン屋さん、らぁ麺みうらさんで冷やし中華とミニうな丼を食べた。
そこまで高くないお値段で、もちもちの麺とふわふわのうな丼が食べられて最高に幸せだった。
次回のお昼も絶対にここに寄る。

らぁ麺みうらさんの冷やし中華と鰻丼。

参考

五島美術館webサイト(https://www.gotoh-museum.or.jp/)

h-museum.or.jp/)2023年10月10日取得。
辻惟雄『日本美術の歴史 補訂版』東京大学出版、2021年。



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