【光る君へ】二人の女性〜見えない影響力〜
先々週(2月11日)の大河ドラマ『光る君へ』の話です。
人物の見せ方でなんとも見事だなと感じたことがあり、とても印象深かったのでnoteに書いてみます。個人の感想です。
第6回目のその週のタイトルは『二人の才女』でした。
『二人の才女』とは、まひろ・紫式部(吉高由里子)とききょう・清少納言(ファーストサマーウイカ)のことで、ききょうは初登場でした。
しかし、私の印象に強く残ったのは別の二人の女性でした。
一人は藤原道隆(井浦新)の妻・高階貴子(板谷由夏)。
もう一人は左大臣・源雅信(益岡徹)の娘・源倫子(黒木華)。
倫子は、後に藤原道長(柄本佑)と結婚する女性です。
この日の放送では、この二人がどういったタイプの女性なのか、それぞれの個性の一部分を垣間見ることができ、「(ストーリーの中で)こういう風に見せるのか。はぁ~なるほど」としきりに感心してしまいました。
まずは源倫子。
(ドラマで)いつものように、左大臣家(倫子の家)に貴族の姫君たちが集まり、和歌の勉強会をしています。その日は『蜻蛉日記』について話していました。
会話の流れからまひろが
「家に(蜻蛉日記の)写本があるので、今度お持ちします」
と言うと、倫子は
「いらないわ 私、書物を読むのが一番苦手なの」
と、にっこり優雅にお断り。
他の姫君たちも、私も~。私も~。おほほほほ、という感じでした。
倫子役の黒木華さんが上手いのですよねぇ。
少しあとの場面では倫子は、自分だけでなく、まひろの苦手なことに対しても、
「苦手は苦手ということで」
とおおらかにサッパリしたもので、それを克服しなければ、などの拘りもなさそうでした。
源倫子は「書物を読むことが一番苦手」
このセリフを聞いた時は「おお! そうなのか」と、一人で盛り上がりました。
個人的には結構大事な情報だと思ったので、それをこんなにサラっと入れる脚本家の大石静さん、すごい。
この場面から倫子は、物語や、おそらく漢詩などにも興味がなさそうだということが伺えます。それらが得意なまひろとは違うタイプの女性のようです。
他の姫君たちの様子からしても、これはさほど珍しいことではないのかもしれません。
文学について意見を交わし合うよりも、
「父親の顔にホクロができたのかと思ったらハエだった」
のような話で他の姫君たちとケラケラと笑い合ったりして、ガールズトークが好きな、健全な若い女性という感じです。
(まひろはこういった話がはまらないようで、周りに合わせて無理して笑っているのが面白い)
次は高階貴子です。
藤原兼家の邸には、長男の道隆とその妻子や、道長も一緒に住んでいます。
道隆とその妻・貴子が仲睦まじく過ごしているところへ末弟の道長(柄本佑)が訪ねてきて、政治関係の情報を兄道隆に伝えました。
それをきいた道隆が、どうやって藤原公任(町田 啓太)や藤原斉信(金田 哲)ら若い公達を、強引なやり方ではなく、いい感じに懐柔できるかと思案をするのですが、それまで黙って話を聞いていた妻の貴子が、
「漢詩の会をお開きになってはいかがでしょうか。漢詩には、それを選んだ者の思いが出る……といいますでしょ。
それに若い方々は学問の成果を披露する場に飢えております」
と柔らかく提案をしました。
道隆も、なるほどといった感じで
「そういたそう。では学者も呼ぶことにいたそう」となりました。
貴子って……なるほど。
ここでも私は一人盛り上がりました。
道隆の妻・貴子は漢詩の知識がある?
(このドラマの中で)何気にすんごく大事なポイント、と私は思うので、その情報をこんなにサラリとストーリーの一場面に表した脚本家の大石静さんは凄いなと再び思いました。
高階貴子について、軽くネットで調べてみました。
やはり貴子は和歌や詩文、漢詩の教養があった
しかもそのレベルはかなり高い。
なんと〝ちょっとできる〟程度の女性ではなかったようです。かなりの才女。
貴子も、ざっくり言うとまひろやききょうのような才女タイプでした。
話はドラマに戻り、後日、漢詩の会が開かれ、そこに若い公達たちが招かれました。まひろとききょうも、学者として呼ばれた父親たちと共に出席。
その時のききょうの物怖じしない発言に、貴子が微笑む場面もありました。
道隆も若い公達たちの心を掴んだようで、漢詩の会を提案した妻貴子の内助の功が光りました。
私は、高階貴子のことも源倫子のことも、殆ど知識がありませんでした。
でも、『光る君へ』のこの回で、二人の対照的な部分を垣間見て、なるほど、と
もの凄く腑に落ちたことがあったのです。
まだドラマには出てきませんが、
道隆と貴子の娘の定子(ていし・さだこ)も、
今後、道長と倫子が結婚して産まれてくる彰子( あきこ/しょうし)も、
この母あってのこの姫なのだと。
定子が才気煥発で、彰子が学問得意派というわけではなかったその理由が、ちょっと理解できた気がしました。
将来、定子も彰子も一条天皇に入内します。
(それはもちろん政治がらみ)
そして、宮中で定子に女房として仕えたのが清少納言で、その清少納言が、敬愛する定子のことなどを書き綴ったものが『枕草子』。
容姿が美しいだけでなく、和歌や漢詩の教養があり、明るく朗らかな定子がその定子でなかったら、おそらく『枕草子』は生れなかったか、または現在のものとは全く違うものになった。
そう思うのですよねぇ。
定子が教養深いことは、間違いなく母・貴子の影響があるはず。
となると、何気に母・貴子の存在、すごくない? と思うわけです。
一方、彰子( あきこ/しょうし)の女房だったのが紫式部です。
彰子は道長と倫子の娘。当代一のスーパーセレブな高貴な身分の姫です。
そんな彰子も「書物を読むことが一番苦手」と言う母・倫子の影響を少なからず受けていると思うのです。
どちらが良いとか、そういう話ではなく、今も昔も人は育った環境や、育ててくれる親から受ける影響は大きいのだなと、つくづく思いました。
貴子という母あっての定子であり
倫子という母あっての彰子
このピースが、本当に私の中ではまりました。
それぞれの娘を通して、歴史にも大きな影響を与えたかもしれない二人の女性の個性を、ドラマの中のほんの一瞬の場面に表した脚本が見事で、それを書いた脚本家の技にハートを射抜かれました。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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