No. 50 息子、殻を破る その時小学校四年生
前回、前々回からの続きです。
小3の時に息子が不登校になり、学校に相談しながら対応をしていた。
でも、なんだか腑に落ちない。なにが?
数ヶ月たち気づいたのは、こちらが言えばそれについては対応してくれる。でも学校は、先生は、積極的に解決しようとはしない。
いじめや不登校に対して、学校の考えがどういうものか私は知らない。
でも結局親だな。家庭がどう動くかだ。そう思った。
こちらも色々言いたいことはあるけれど、親にしたら子供は学校に人質にとられているようなもの。
何か言ってその矛先が子供に向いたら困る。そんな考えがあった。
実際先生によっては、子供への態度を変える人もいたし。
4年生になり、息子の担任は新卒の先生に変わった。
そこに教員を退職したという男性の補助教員がついた。
昨年までのことを何も知らない人たち。
その日の朝も担任に電話をした。
「今日も行かないと言っています。遅刻して、登校できたらそうします」
そしたら先生はなんと?
「まあゆっくり休んでください」
「……………………」 「はい」
私が一体どんな気持ちで毎朝連絡をしていると思っているのか。
息子がどんな気持ちでいると思っているんだ。
まあゆっくり休んでください?
病気じゃあないんだから。
今までさんざんゆっくり休んできましたけど、ここから更にゆっくり休めと?
私は怒りを感じた。
さーっと冷めて行くような怒りだった。
わかりました。そうですか。そういうことですか。
先生、あなた、眠れる獅子を起こしまたね。
母ライオン、母熊。怒らせたらいけないと聞いたことはありませんか…
息子、ごめん。私が悪かった。私が弱かった。
腹をくくっていなかった。
小さい時から「お母さんが守ってあげるからね」なんて言ってきて、
守れていない。ごめん。
私が守るから。
まずは学校だ。
この息子の「いじめ」についてどう捉えているのか。
その考えを確認してみよう。
相手の子のことを庇い始め、学校に行けない息子を責めている、
クラスの補助教諭は、息子にとって危険な存在とみなす。
解決は先生と本人たちに任せていたが、
「状況が変わらないなら私が相手のお子さんと話をします」
「学校側でこれ以上どうしようもないと言うのならば、
教育委員会に相談しようと思います」
「それでも変わらないならば転校させます」
「こんな状態のまま、5年生のクラス替えまで在校させておけません。息子の人生が壊れます」
「先日、区からいじめについてのお手紙がきましたよね。そこに書いてあったことを信じて対応します」
朝一番で学校に行き、運動会の全校練習の為、校庭に行く途中だった担任をつかまてそう伝えた。
担任は驚いて「あの、またご連絡します」そう言った。
その日の放課後、学年主任から連絡がきた。
息子の1、2年生の時の担任だった学年主任は、私に面談を申し込んできた。
その日、直ぐに先生に会った。
開口一番なんと言われたか。
「お母さん、まあ落ち着いてください」
はい、私は落ち着いています。
別に切れて担任にああ言ったのではない。感情的にもなっていない。
あれが私の結論だ。
でも、話してみて、解決しようとしているとは思えなかった。
ただ私の話を聞いている。でももうそういう時期ではない。
私の考えも気持ちも整理されている。
そして学年主任は最後にこう言った。
「私は20年教師をやっていますけど、
私のクラスからは、まだ一度も不登校児を出したことはないんですよ」
今、私に言う言葉かと、自分の耳を疑った。
「そうですか。すごいですね」
その後ものりくらりと、学校の姿勢は変わらなかった。
そんなある日のこと。
6月のその日、学校から帰ってくるなり息子が
「今日ぼくね。すごく大きい声で『うるさいっっ!!!』って言ったんだよ。多分となりのクラスにも聞こえていたと思うね」
とさらっと言った。
話を聞いてみるとこうだった。
グループで話し合いをしていた授業中、昨年から息子にいやがらせをし続けている男子が、また何かいいががりをつけてきたのだそう。
息子は否定をしたけれど、あまりにもしつこいので、ものすごい大声で
「うるさいっっ!!!」と一言。
児童たちは何事かと驚き、息子たちの近くに集まってきた。
そばでやりとりを聞いていた他の男子が息子を庇い
「そんなことを言ったらかわいそうだよ」と言ってくれたらしい。
授業中だったので先生もいて、「何があったの?」と相手の子にたずね、
彼はことの成り行きを全て自分で話さなくてはならず、
息子曰く
「△△(相手の子)はしょんぼりしながら小さい声で話していた」
ということだった。
そのクラスメイトに対して息子がそれほどまでに大きな声で、しかも大勢の人のいる場所で応酬したのも、その子と息子との揉め事の場に先生がいたのも、その半年以上の間で初めてだった。
クラスの皆がいるところで大きな声を出すのは、とても勇気のいることだったと言っていた。
本当に本当に「よくやった!」と抱きしめた。
帰宅した時の息子の声は、明るく晴れ晴れとしていて、
私は「この子脱皮した」と感じた。
その出来事があった時に思った。
私が前より強くなったから、私の内側が逞しくなり揺れなくなったから、
それが息子を通して表れているのだ……
息子に伝わったのだ……
そのあと息子は変わった。まさに脱皮した。
男子の世界がどういうものなのか、私にはわからない。
でも、息子には、揉まれで脱皮するその時間が必要だったのだと思う。
数年かけた長い試練だった。
つらい数年だったけれど、あれは生みの苦しみだった。
今はそう思う。
このあと私は力尽きました。
今日も幸せな一日でありますように。
Love & Peace,
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