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システム/AI開発でもサクセスクライテリアを活用しよう

何やら聞き慣れない言葉で恐縮ですが、最近私が大事だなと思った話を皆さんに共有できればと思いこの記事を書いております。

みなさんサクセスクライテリアという言葉をご存知でしょうか。日本語でいうと成功基準と言います。
近年、プロジェクトの成功基準(サクセスクライテリア)の明確化がさまざまな分野で注目されています。特に宇宙開発の現場では、難易度が高く不確実性も大きいため、「ミニマムサクセス」「フルサクセス」「エクストラサクセス」といった段階的な成功基準を設定してプロジェクトを進めています。実は、この考え方はシステム開発やAI開発などのプロジェクトにも大変有効です。

今回は、JAXAやNASAの実際の事例を取り上げながら、なぜシステム開発やAI開発の現場でもサクセスクライテリアを取り入れるべきか、そのメリットを解説します。

宇宙開発から学ぶ成功基準の考え方

宇宙開発は常に挑戦的で、完璧に成功することが難しい分野です。そのため、JAXAではプロジェクトごとに次のような成功基準を設定しています。

  • フルサクセス(完全成功)

    • プロジェクトの目標をすべて達成した状態。計画したことが100%実現した完璧な成功です。

  • ミニマムサクセス(最低限の成功)

    • 一部トラブルがあっても、最低限の目的を果たした状態。例えば、小型月探査機SLIMでは月面に軟着陸することが最低限の目標とされ、実際に成功しました。

  • エクストラサクセス(追加成功)

    • フルサクセスを超える追加成果があった状態。例えば、当初の計画以上の長期間稼働や追加の科学的発見がこれにあたります。

NASAも同様に、最低成功基準(Threshold)と計画目標(Baseline)を設定しています。例えば火星探査ローバーの場合、最低90日間稼働が成功ラインとされ、それを超えて活動が続けば追加成功と評価されました。この考え方により、「すべてを成功させる」または「完全に失敗する」という極端な評価を避け、部分的な成功を正しく評価しています。

なぜシステム開発やAI開発でも役立つのか?

システム開発やAI開発では、完璧な成功を前提にプロジェクトが進められることが多いですが、現実には予想外のトラブルや問題が頻繁に発生します。そのようなときに「ミニマムサクセス」を明確に設定しておくと以下のようなメリットがあります。

  1. 関係者間での認識統一が容易になる

    • どの程度の達成で成功とするのかを事前に共有できるため、顧客や開発メンバー間での期待値のズレを防ぐことができます。

  2. プロジェクトの判断基準が明確になる

    • PoC段階でミニマムサクセスを達成できれば、本格的な開発フェーズへの移行が明確になり、プロジェクト進行がスムーズになります。

  3. トラブル時の対応が柔軟になる

    • 一部の機能に問題があっても、最低限の成果が達成されているなら「プロジェクトは一定の成功を収めた」と評価できるため、落ち着いて次のステップを検討できます。

システム開発やAI開発での具体的な成功基準の設定例

以下は、システム開発やAI開発プロジェクトにおいて、実際にサクセスクライテリアを設定する際の具体例です。

  • フルサクセス例(業務システム開発)

    • 計画した全機能が納期と予算内で完成し、運用後のトラブルも最小限に抑えられた。

  • ミニマムサクセス例(AI開発のPoC)

    • モデル精度が目標値(例:画像分類精度90%)をクリア。ただしUI改善や追加機能には課題が残るが、次のフェーズで十分対応可能な状態。

  • エクストラサクセス例

    • 精度が想定以上(95%以上)を達成し、推論速度も改善。新たな利用シナリオが見つかった。

サクセスクライテリアを広げるメリット

実際、宇宙開発だけでなく、IT業界でもMVP(Minimum Viable Product)やリリース基準といった形で類似の考え方が実践されています。特に、新規事業の立ち上げやPoCを行う際には、サクセスクライテリアを明確にすることで、無駄なコストや時間を抑え、プロジェクトが成功に向けて効率的に進められるようになります。

成功の基準を明確に設定することで、プロジェクトの運営に柔軟性が生まれ、トラブルが起きても冷静かつ合理的な判断が可能になります。

まとめ

  • 「ミニマムサクセス」「フルサクセス」「エクストラサクセス」を設定すると、

    1. プロジェクトの達成度が明確になる

    2. 認識のズレや混乱を防げる

    3. トラブル時も冷静に対応可能 といったメリットがあります。

  • 完全な成功や失敗の二元論から脱却し、現実的で柔軟なプロジェクト運営が可能になります。

非常に有用ながら宇宙開発以外の文脈ではあまり聞かないサクセスクライテリアですが、システム開発やAI開発プロジェクトでも十分活用出来るものだと思いますし、むしろスタンダードな概念として組み込まれても良いのではないかと思っています。
このサクセスクライテリアの考え方が広がり、多くの現場で役立てられることを期待しています。

それでは。

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