SESでクライアントとの事前面談は違法?
SESとは何か?
SES(システムエンジニアリングサービス)とは、ITエンジニアが所属企業(SES企業)から客先企業に常駐し、業務を行う契約形態の一種です。契約形態としては「準委任契約」と呼ばれる業務委託の一形態であり、派遣契約とは異なります。派遣との違いは、SES契約ではあくまで業務遂行の責任を負う点で、納品物の完成責任は負わないことにあります。また、SES契約では本来クライアント側にエンジニアへの直接的な指揮命令権がない建前になっています。
事前面談とは何を指すのか?
SESにおける「事前面談」とは、エンジニアが客先企業のプロジェクトに参画する前に、クライアント(客先)とエンジニア、そしてSES企業の担当者が顔合わせを行う場のことです。プロジェクト開始前の打ち合わせのような位置付けで、案件内容の説明やエンジニアの自己紹介、スキルの確認などを行います。この面談は形式上は採用面接ではなく「顔合わせ」ですが、実態としてはエンジニアとクライアント双方が互いを知り、参加是非を判断するためのものです。
本記事では、「SESでクライアントとの事前面談は違法か?」という疑問について、SESエンジニア向けに分かりやすく解説します。まず事前面談の目的と背景を整理し、その後に法的な側面やグレーゾーン、実際の運用状況を説明します。さらに、SESエンジニアが知っておくべきポイントや適切な対応方法、そして安心して働くために注意すべきことを紹介していきます。
事前面談の目的と背景
SES業界における事前面談の慣習
SES業界では、客先常駐案件に参画する前に事前面談を行うことが一般的な慣習となっています。多くのSES企業では、自社エンジニアをクライアントに紹介する際、契約前に一度顔合わせの場を設けています。それは形式上「打ち合わせ」や「顔合わせ」と呼ばれますが、実質的にはエンジニアとクライアントのマッチング確認のプロセスです。この慣習が広まった背景には、案件のミスマッチを防ぎ、プロジェクトを円滑に進める狙いがあります。
企業が事前面談を行う理由
事前面談を行う主な理由は、エンジニアのスキルや経験がプロジェクトの要求に合致しているか、そして人柄やコミュニケーション能力がチームに適応できるかを事前に確認するためです。具体的には以下のポイントがチェックされます。
技術スキルの確認: クライアントが求めるプログラミング言語やフレームワークの知識、開発経験などをエンジニアが備えているかを確認します。過去のプロジェクト経験や得意分野について質問されることが多いでしょう。
プロジェクト内容の説明と適性判断: クライアント側からプロジェクトの概要や進め方、開発環境などの説明があり、エンジニアは自分の経験・スキルで貢献できるか判断します。これにより双方が案件内容への認識をすり合わせ、参加是非を検討します。
コミュニケーションや人柄の評価: 実際に一緒に働く上で問題がないか、人間性も見られます。チームの一員として溶け込めるか、協調性はあるか、コミュニケーション能力に問題がないかといった点も重視されます。「この人と一緒に仕事ができるか」という観点で、人柄や態度もチェックされるのです。
業務条件の確認: 勤務時間や休日、契約期間、報酬などの条件面についても確認されることがあります。ただしこれら契約条件の詳細交渉は本来SES企業同士で行うものであり、面談では大まかな認識合わせ程度に留まることが一般的です。
要するに、事前面談はエンジニアとクライアント双方にとって「ミスマッチの防止策」です。面談なしでいきなり常駐を開始すると、仮にスキル不足や職場環境の不適合が発覚した場合、双方にとって不利益となります。そうしたリスクを減らすために事前面談が慣例化しているのです。また、クライアント企業にとっては即戦力となる人材かどうか見極めたいという思惑も大きく、実際「即戦力になりうるか確認する」ことが事前面談の大半の目的だとも言われます。エンジニア側にとっても、事前面談はプロジェクト内容や職場の雰囲気を知り、自分に合う案件か見極める貴重な機会となっています。
事前面談の法的側面
職業安定法との関係(労働者供給事業との境界線)
事前面談に関してしばしば問題になるのが、職業安定法で禁止されている「労働者供給事業」に該当するかどうかという点です。職業安定法第44条では、他人の指揮命令下で労働させる労働者の供給事業は原則として禁止されています。平たく言えば、正式な許可なく「労働者を他社に供給する」行為は禁止されているのです。この禁止規定に抵触しないため、企業間契約でエンジニアを常駐させる場合は、派遣法に基づく労働者派遣事業の許可を取得するか、もしくは請負・準委任契約(SES契約)として適法な範囲で業務委託にする必要があります。
SES契約は派遣ではなく準委任の業務委託契約ですが、もし実態が「労働者を指揮命令下で使う」ものと判断されれば、職業安定法違反(無許可の労働者供給)に問われる可能性があります。偽装請負と呼ばれる状態がそれです。偽装請負とは、契約上は請負や準委任(業務委託)となっていても、実態が派遣と変わらない(発注者が労働者の配置決定に関与している等)場合を指し、法律違反となります。事前面談は、その偽装請負かどうかを判断する一つの材料になり得ます。もしクライアントが事前面談の結果によって特定エンジニアの採否を決めるような行為は、違法と判断される可能性があります。
労働者派遣法との関係(派遣契約での禁止事項)
もう一つ重要な法規制が、労働者派遣法です。派遣契約(労働者派遣)においては、クライアント(派遣先)が派遣労働者を事前に選考する行為が明確に禁止されています。労働者派遣法第26条第6項には、「派遣先は、労働者派遣契約の締結に際し、派遣労働者を特定することを目的とする行為をしてはならない」と定められています。これは派遣契約締結前のいわゆる事前面接を禁じた規定です(紹介予定派遣を除く)。したがって派遣契約での事前面談(事前面接)は100%違法であり、これを行えば派遣法違反となります。
一方、SES契約(準委任契約)の場合、法律上は派遣契約とは異なるため、契約上ただちに「事前面談禁止」の明文規定があるわけではありません。そのため、形式的には「SES契約なら事前面談をしても違法ではない」という解釈も成り立ちます。しかし、ここで注意が必要なのはその事前面談の内容や結果によっては、実質が派遣・労働者供給と見做されうる点です。厚生労働省が公表している『労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド』では、以下のような趣旨が明記されています。
「発注者が請負労働者の職務経歴書を求めたり事前面談を行ったりする場合は、一般的には当該行為が請負労働者の配置決定に影響を与えるので、労働者派遣事業又は労働者供給事業と判断されることがあります。」
つまり、SES契約であっても事前面談や経歴書提出によって発注者(クライアント)が誰を配置するか決定できる状況になれば、それは派遣または労働者供給と見做されかねないということです。このように法律・ガイドライン上は、SES契約の事前面談は「グレーゾーン」として扱われています。「形式は業務委託だが実態は派遣ではないか?」という疑いを生まないように運用しなければ、違法との指摘を受けるリスクがあるのです。
偽装請負・違法派遣と事前面談
総括すると、事前面談が違法かどうかは契約形態と運用によります。派遣契約での事前面談は明確に違法ですが、SES契約での事前面談は違法になり得るケースがあるという位置付けです。事前面談そのものを直接禁止する法律はSES契約にはありませんが、その結果クライアントが人選に介入すれば偽装請負(労働者供給事業)と判断される可能性があります。違法と判断された場合、SES企業・クライアント企業共に行政指導や罰則の対象となり得ます。SES企業が派遣の許可なく実質的に派遣行為を行えば職業安定法違反となり、クライアント企業もそれを受け入れて労働者を使用していた場合は同法違反に問われかねません。
以上が法的な側面の概要です。では、実際の現場ではこの事前面談がどのように運用されているのか、そしてどこまでがグレーゾーンとされているのかを見ていきましょう。
実際の運用とグレーゾーン
違法と判断されるケースの具体例
事前面談が「アウト(違法)」と判断されてしまう典型的なケースとしては、クライアントがエンジニア個人の採否を実質的に決定している場合が挙げられます。例えば、SES企業がエンジニアAさんを提案し事前面談を設定したところ、クライアントB社が面談後に「Aさんは今回はお断りで、別の人を紹介してほしい」と伝えたとします。これはクライアントB社が特定の労働者を拒否し、別の労働者を求めている状況であり、発注者が労働者の配置決定に関与していることになります。このように、事前面談の結果によってクライアントが誰を働かせるか選別している場合、労働者派遣事業または労働者供給事業と見做され違法となります。
また、派遣契約の場合は先述のとおり事前面談自体が禁止事項ですから、名目が何であれ面談を行えばそれだけで派遣法違反です。派遣契約で「顔合わせ」と称して事実上の面接を行ったケースでは、過去にも行政指導の対象になった例があります。派遣の場合は100%違法行為なので分かりやすいですが、問題はSES契約でのグレーケースです。
「グレーゾーン」と言われる運用
SES契約における事前面談は、多くの企業で建前上「面接ではなく顔合わせ」として実施されています。クライアント側にも「これは選考の場ではなく、お互いのための顔合わせです」という説明がなされることが一般的です。法律上はエンジニア側にも選択の自由がある形をとることで、「一方的な人選ではない=派遣の事前面接とは異なる」と位置付けようとする意図があります。具体的には、「事前面談」ではなく「職場見学」「顔合わせ」「打ち合わせ」といった名目を使い、あくまで「エンジニアにも案件を選ぶ権利がある場だ」と強調する運用です。
しかし実態としては、顔合わせと称しつつも内容は面接と大差ないことが多いのが現状です。エンジニア側も事実上「この案件に受かるか落ちるか」という意識で臨みますし、クライアント側も「この人に来てもらうかどうか」を判断しています。SES業界では法律と現場慣習のミスマッチから、このような「法律の抜け道」を探すグレーな対応が横行しているのが実態です。実際、「顔合わせだから形式上は問題ない」と言いつつ、内容は質疑応答やスキルテストなど採用面接さながらだったという話も珍しくありません。
重要なのは、名称を変えても違法性の判断は本質で行われるという点です。仮に「顔合わせ」という名前でも、実質が採用面接と同じでクライアントが人選していれば労働局から指摘を受ける可能性があります。労働局や監督署は名目ではなく実態を見ますので、「面談か顔合わせか」という呼称よりも、その場で何が行われ、結果として誰が決定権を持ったかが問題になるのです。SES企業の中には法的リスクを恐れて事前面談自体を避けるところもありますが、多くはクライアントの要望もあって形だけ「顔合わせ」にしているのが現状です。業界的には「やらないとミスマッチで困るし、やると法的にグレー」というジレンマを抱えており、結局ほとんどの案件で何らかの顔合わせが行われているのが実情でしょう。
SES企業・クライアントの対応
グレーゾーンを踏まえ、SES企業やクライアント企業は違法にならないよう工夫を凝らしています。例えば、以下のような対応策が取られることがあります。
事前面談の位置付けを工夫: 前述のように「顔合わせ」「打ち合わせ」という位置付けで実施し、クライアントからも「ぜひ一緒に働きたいか判断する場」としてエンジニアにも選択権がある旨を伝える。面談中も「業務内容の説明と質疑応答」が中心となるよう配慮する(採用面接のような圧迫質問や人格査定的な質問は避ける)。
契約形態の使い分け: SES企業の中には労働者派遣事業の許可を取得しているところもあります。そうした企業は、実態として人選を伴う案件については契約を派遣に切り替えて対応する場合もあります。派遣契約に切り替えた場合は事前面談は禁止なので、本来クライアントはエンジニアと契約前に会うことはできませんが、「紹介予定派遣」にして合法的に面接するケースもあります。ただしSESと派遣を都度切り替えるのは手続き面で簡単ではないため、現実にはあまり多くありません。
偽装請負と指摘されないための管理: SES契約でエンジニアを常駐させる際、クライアント内での立場が社員と混同されないような措置をとることがあります。例えばクライアント社員とは別の島(デスクエリア)に座らせる、業務上の指示・連絡は必ずSES企業の担当者をCCに入れてもらう、日々の作業報告をSES企業側のリーダーに行わせる、といった方法です。こうした運用で「直接の指揮命令はしていない」という形を整え、万一調査が入っても偽装請負とならないよう気を付けているのです。
以上のように、違法すれすれにならないよう各社が配慮しつつも、事前面談自体は事実上行われているというのが実状です。エンジニアにとっても、事前面談なしで配属されてミスマッチが起きるリスクを考えれば、完全になくすのは現実的ではないでしょう。そのため多くの現場では、グレーと知りつつ「お互いのため」という大義名分で事前面談が行われていると理解しておく必要があります。
SESエンジニアが知っておくべきポイント
法的なグレーゾーンを踏まえた上で、SESエンジニアとして事前面談に臨む際や日々働く上で注意すべきポイント、適切な対応方法を解説します。
1. 事前面談に対する適切な対応方法
まず、事前面談に呼ばれた際は「採用面接」ではなく「業務打ち合わせ」だという意識を持ちつつも、実質的には面接と同様に臨むことが大切です。建前上は顔合わせですが、あなたがプロジェクトに参加できるかを判断する場であることに変わりはありません。以下の点に留意しましょう。
スキルと経験を的確にアピールする: プロジェクトに必要なスキルセットを事前に確認し、自分の経験でどう貢献できるか整理しておきます。面談では経歴や技術スタックを質問されるので、具体的なエピソードを交えて即戦力性を伝えましょう。これは通常の面接対策と同様ですが、「自分を売り込む」というよりプロとして提供できる価値を説明するイメージです。
不明点は遠慮なく質問する: 面談はエンジニア側もクライアントに質問できる場です。プロジェクトの進め方やチーム体制、使用技術、働く環境など気になる点は積極的に確認しましょう。あなた自身も案件を選ぶ立場であることを示すことは、法的にも「双方の合意形成の場」という建前を強化しますし、何よりミスマッチ防止に役立ちます。
態度やコミュニケーションにも配慮: 技術だけでなく人柄も見られていることを意識しましょう。「一緒に働きたい」と思ってもらえるよう、明るくハキハキと受け答えし、相手の話にも真摯に耳を傾けてください。コミュニケーション能力は評価ポイントであり、極端に無口だったり横柄な態度だと不安視される可能性があります。プロジェクトメンバーの一員としてふさわしい振る舞いを心がけましょう。
契約や条件の詳細交渉は自社担当者に任せる: 面談中にもし契約条件や報酬の具体に話が及びそうになったら、詳しくは「自社の営業担当から改めて」といった形で自社同士の協議に委ねるのが無難です。エンジニア個人がクライアントと直接契約条件を交渉し始めると、これも本来の業務委託の範疇を超えかねませんし、後々のトラブルにも繋がりかねません。面談には通常SES企業の営業担当も同席しているはずなので、契約面の話題は任せてしまいましょう。
以上のように、事前面談は「顔合わせ」とはいえ実質的に選考の場ですから、エンジニアとしても万全の準備と適切な対応が必要です。ただし内心では「法律上は面接ではない」という建前も忘れずに持ち、プロジェクトへの相互確認を行うビジネスミーティングとの意識で臨むと良いでしょう。そうすれば緊張しすぎず、かつ双方にとって有意義な情報交換の場とすることができます。
2. 違法性を回避するための注意点(エンジニア視点)
エンジニア個人ができる範囲で、偽装請負など違法状態に巻き込まれないための心構えも持っておきましょう。以下のポイントに注意します。
自分の所属会社を意識した行動: 常駐先ではクライアントの指揮命令系統に入るのではなく、あくまで所属するSES企業からの指示で動いているという形を意識します。実務上はクライアントの現場担当者から日々タスク指示を受けるでしょうが、それをそのまま自社に報告・相談しながら進めるなど、自社の管理下で業務を行っている体裁を保つことが重要です。もし現場で自社を飛び越えて直接的な指示命令がなされても、「では自社にも共有します」といった対応を習慣づけましょう。これはエンジニア個人にできる小さな工夫ですが、積み重ねれば偽装請負の指摘を受けにくい環境作りに繋がります。
範囲外の依頼は安易に引き受けない: 契約上の業務範囲を超える依頼や、常駐先の正社員しか本来行えないような権限行使(例えば人事評価に関わる作業や、社員のように社内システムの管理権限を与えられる等)を求められた場合は慎重に対応します。明らかに契約外の指示については自社の営業担当やリーダーに相談し、必要なら契約の見直しや派遣契約への切替え等を提起してもらいましょう。エンジニア自身がその場の好意で何でも引き受けてしまうと、結果的に偽装請負状態を深刻化させる恐れがあります。
経歴詐称など違法行為はしない: 事前面談で少しでも通りやすくするために経歴を偽る、スキルシートに誇張した嘘を書く、などは絶対に避けましょう。経歴詐称はビジネス上の信用を失うだけでなく、場合によっては詐欺行為にもなり得る立派な違法行為です。残念ながらSES業界では営業側がエンジニアに経歴誇張を持ちかけるケースもありますが、そのような提案には毅然と断るべきです。健全なSES企業であれば経歴詐称を奨励することはありませんので、そうした不正を要求される時点でその会社自体を見直す必要があります。
エンジニア個人としては、法律的な線引きを厳密にコントロールすることは難しいですが、「おかしな状況には流されない」ことが肝心です。自社のルールや契約範囲を守り、疑問を感じたら周囲に相談することで、自衛策としましょう。違法状態のリスクから自分を守ることは、結果的にプロジェクト全体の健全性を保つことにも繋がります。
3. SES企業を選ぶ際のチェックポイント
これからSES企業へ就職・転職するエンジニアや、プロジェクト参画先を選べる場合には、できるだけ法令順守と社員思いの企業を選ぶことが大切です。以下の点をチェックしてみてください。
法令知識とコンプライアンス意識: 面接時や会社説明で、SES契約や派遣法についての知識・姿勢をそれとなく質問してみましょう。「御社では客先との顔合わせはどのように位置付けていますか?」などと聞いてみると良いかもしれません。しっかりした会社であれば「法律上面接ではないが、○○のように注意して行っています」といった回答があるでしょう。逆に全く気にしていない様子だったり、軽い調子で対応する会社はコンプライアンス面で不安が残ります。
労働者派遣事業の許可有無: SES企業でも派遣事業の許可を持っている会社があります。許可を持っている=きちんと法律対応しているとも限りませんが、少なくとも無許可で派遣行為をするリスクは避けていると言えます。許可を持ちながら基本はSES契約で運用し、必要に応じ派遣契約に切り替える柔軟さを持つ企業もあります。会社概要やホームページに「労働者派遣事業許可番号」が記載されているか確認してみましょう。
社員フォロー体制: 常駐エンジニアを適切にフォローしている会社かも重要です。例えば定期的に営業担当が客先を訪問して様子を確認してくれる、あるいはチャットやメールで常駐先での困りごとを相談できる窓口が用意されている会社は安心です。そうしたフォローがない会社だと、現場で法に反する扱いを受けていても放置される恐れがあります。面接の際に「客先常駐中のフォロー体制」を質問し、具体的な対応を説明できない会社は避けた方が無難でしょう。
違法行為へのスタンス: その会社が過去に偽装請負や派遣法違反で問題を起こしていないか調べておくのも有効です。ネットで社名を検索し「違法」「派遣法違反」などのキーワードがヒットしないか確認してみてください。また社員や元社員の口コミで「経歴詐称を強要された」「〇〇会社はグレーな案件ばかり回してくる」といった声がないかもチェックしましょう。もちろん口コミは鵜呑みにできませんが、複数見られるようなら注意信号です。
これらのポイントを参考にSES企業を見極めれば、違法な働かせ方をされるリスクを減らせます。自分のキャリアと法令順守を両立できる企業を選ぶことが、長期的に見てエンジニアとして安心して働く秘訣です。
まとめ
SESエンジニアとして気をつけるべきこと
「SES契約でクライアントとの事前面談は違法か?」という問いに対する答えは、法律上グレーであり注意が必要、というのが実情です。SES自体は適法な契約形態ですが、その運用次第では偽装請負となり得るため、事前面談を含め現場の取り扱いには細心の注意が求められます。エンジニア個人としては、事前面談を上手に活用してミスマッチを防ぎつつも、法律知識も身につけて「どこからがアウトか」を理解しておくことが大切です。正しい知識を持っていれば、万が一怪しい状況に遭遇しても早めに対処できますし、自身のキャリアを守ることにも繋がります。
今後の業界動向と変化の可能性
現状、SES業界では事前面談は事実上不可欠なプロセスでありながら法的にはグレーという状態が続いています。しかし、近年エンジニアの法務知識向上やコンプライアンス重視の風潮もあり、このグレーゾーンにメスが入る可能性も指摘されています。厚生労働省や労働局が今後さらに指導を強化すれば、企業側も事前面談のやり方を見直さざるを得なくなるでしょう。場合によっては法律やガイドラインが現実に即して改訂され、事前面談に関する明確なルールが整備されるかもしれません。
一方で、IT業界の人材不足という背景を考えると、企業としては今後も即戦力エンジニアを求めざるを得ず、事前面談的なプロセス自体はなくならないとも予想されます。そこで、オンライン上のスキルテストやAIマッチングなど、新たな形でミスマッチを防ぐ仕組みが発展する可能性もあります。直接の対面面談を介さずとも適切に人材マッチングができれば、法律違反のリスクも減らせるからです。
いずれにせよ、SESエンジニアとしては最新の業界動向や法規制にアンテナを張り、自分の働き方に影響する変化があれば敏感にキャッチすることが重要です。定期的にニュースや業界メディアで関連情報をチェックしたり、所属企業の法務研修があれば積極的に参加しましょう。
最後に強調したいのは、「知らなかった」では済まされない場合もあるということです。幸い本記事を読んでいただいたことで、事前面談とその法的リスクについて把握できたと思います。適切な知識と対策でグレーゾーンを乗り越え、安心して客先常駐エンジニアとして活躍していきましょう。