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光の玉

同僚の何人かが、最近神社にはまっているということを知った。

有休を利用してけっこう遠くまで泊りで行っているようだ。

その中の一人が、私がなにやら見えるらしいということを知って

昼休みにわたしの食事が終わるのを待って、いくつか聞いてきた。


神社に行くと何が見えるのと聞いてきたので、

大きな木の上にたくさんの大小の光の玉が忙しく飛んでいるのが

見えるよと伝えると、どんな風に動いているのか聞いてきた。

本当は神社の神様はどういう姿なのかとか

そういうことを聞きたかったのかもしれない。

でも彼女は光の玉の方に興味が湧いたようで

自分のお弁当箱を急いでしまいながら聞いてきた。


光の玉は隣りの木に飛び移ったり、

ふわふわと動いて少し離れた木の上に移動したり

たまに人の頭の上にも飛び移ったりするよと答えた。

その他にも、大きさはどのくらいとかどんな色をしてるとか

いくつくらいあるのかとかどこから来るのかとかいろいろ聞いてきた。

何度もその光の玉はなんなの?と聞かれたが、

うまく説明できそうになかったので

わからないと答えたら、少し残念そうな顔をしていた。


もっと聞きたそうな感じだったけれど、午後の始業時間まで

あまり時間がなかったので、一緒に席を立って休憩室を出た。

廊下に出て歩きながら、午後は忙しいかなぁ

なんて当たり障りのない話をした。


午後は仕事が暇だったので、お昼のことを少し思い出していた。

今度あの光の玉のことを聞かれたら、もう少し話せるように

頭の中で整理してみた。


あの玉は、実はどこにでもいて神社だけにいるわけじゃない。

その辺の草むらの上にもいるし、畑にもいるし、鉢植えにもいる。


その子たちは音を持っている。

普段は聞こえないけど、じっと見ているとだんだん音が聞こえてくる。

その音を使って植物が成長するタイミングを管理しているようだ。

その音は、木の上にいる玉よりも

植物の上にいる玉の方が分かりやすい。


木を見ているのは上を向かないとならなくて首が疲れるけれど、

プランターの中の植物の光の玉の動きは、一日中見ていられる。

植物の上をせっせと飛んで回って、かわいくてたまらない。


ある時かわいくてたまらなくなって、

車に乗って一緒に会社に行こうよと誘ったことがある。

中くらいの玉が大人しくついてくるので仕事場に連れて行ったら

一日中わたしの席の周りを飛び回って、同僚の頭に乗ったり

机に乗ったりコピー機の上に乗ったりするので

わたしは光がしぼんだりしないか気が気じゃなくて

一日仕事に集中できなかった。


ところが、その日家に帰って驚いた。

プランターの横に丸いレンガ色の鉢があって、

数日間白い小さな花を咲かせていたのがしおれていた。


白い花には申し訳ないことをしたと思った。

光の玉は、植物にはなくてはならない命の光だ。


今度彼女が光の玉のことを聞いてきたら

この話をしてみようと思った。


追記

この白い花をかわいそうだと思った私だったが

その数年後、全く同じように

今度は小鳥さんで同じ間違いを犯してしまった。

その話はまた今度。




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