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【就職試験対策】グループディスカッション
先日グループディスカッションの対策授業を行った。
今ホテル業界の新卒試験でグループディスカッションが微増している。
何より不安視しているのは今まで大卒枠と専門卒枠で採用者数を分けていた一部ホテルの採用枠が、初任給を統一したことで大卒、専門卒合わせて何名というように変化してきている事だ。
そのようなホテルで就職試験を受ける学生達は、同じ専門生だけでなく2歳年上の大学生とも同じ土俵で就職試験を受けることになる。
二十歳前後の2年間の差は大きいが、どのようにグループディスカッションに臨むか。
授業ではグループディスカッションの概要、一般的な役割分担を説明したのち、例題を出し実践したが、皆集中した表情で、難題に頭を抱えていた。
集中し、本気で立ち向かう姿は決して悪い訳ではないが、本質を勘違いしている。これは就職試験であり、問題解決の場ではない。
学生からすれば、就職試験のグループディスカッションを通過し、次の面接試験に進むことが目的のはずだ。
採用担当者も問題解決が目的ではない。
自社で、ホテルマンとして期待ができる学生を残したいのだ。
ではどうすれば良いのか。ここでも前出の記事と同じく、必要なのは「感じの良さ」
ホテルの現場で求められる事。行きつく先は、印象なのだ。
ホテル慣れしていないお客様はホテルマンに何か尋ねる、話しかけるだけでも緊張される。この人なら安心して話しかけられる。この人ならこんな事聞いてもこちらに恥をかかせないような返答をしてくれるだろう。特に高級店であればあるほど、ホテルマンはそんな気軽に話しかけられる雰囲気を作り出さなければならない。
姿勢良く立ち、別にうれしくも楽しくもないのに、まるでお母さんに抱っこされた赤ちゃんがふいに向けてきた笑顔に微笑み返すような。
そんな柔らかな表情で、決して特定のお客様を注視せず、辺り一面にアンテナを伸ばす。これがホテルマンの基本技能だ。
この感じの良さはお客様相手だけではない。ホテルマンは協力して力を発揮する。個人の能力には限界があるが、ホテルは他のスタッフと連携する事で、お客様を驚かせるような感動を生み出す事ができる。
それを理解しているホテルマンは部門を超えたスタッフ間のコミュニケーションを欠かさない。別に全員と仲良くなれという事ではなく、仕事として、常に協力し合える関係を築いている。
採用担当者たちはこのようなホテルマンを求めているのだから、おのずとグループディスカッションでの「演じ方」も見えてくる。
最優先はグループの全員が、自由に、忌憚なく意見を述べる事ができる雰囲気を作る事だ。
グループディスカッションでは一般的に採用担当者が巡回しながらそれぞれのグループを観察している。
肘をついたり、発言者の話を無表情で聞き入ってはいけないのだ。
相手に圧を与えるという事は(自分にそのつもりが無くても)、採用担当者から見ればそれはお客様相手に圧を与えている事と同じ。
自分の立ち居振る舞い、表情や話し方を相手がどう受け取っているのかが分からなければ、ホテルマンは務まらないからだ。
姿勢や表情、相槌で、発言者が自信をもって話しができる環境作りに注力する。
もちろん意見を求められれば述べる事も必要だ。
ただ、コミュニケーション能力が高いと自負している学生ほど、これも一度冷静になって考えて欲しい。
ホテルマンに話す力、トーク力が必要かと言われれば、私はほとんど必要ないと思っている。なぜなら、全てはお客様が何を求めているか次第だから。
お客様が自分と話をしたがっている、と勘違いしているホテルマンも多いが、その多くはお客様が聞き上手なだけだ。
一部スタッフの話を楽しみにいらっしゃるお客様も存在するが、少なくともそれ以外はお客様の「目的」ではない。
そもそも素人のトーク力などたかが知れている。
我々は接客のプロであって、トークのプロではないのだ。この勘違いは他の接客業従事者でも同じことが言える。自分のトーク力が高いと思っている素人ほどやっかいなものはない。
言葉は多いほど軽くなる。要望を聞かなければ良いサービスができないのであれば、察する力をつける努力をするべきだ。
ホテルマンに必要な話す力、聞く力を割合で示すなら2対8。1対9でも良いかも知れない。
聞く力というのはただ相槌を打つだけではない。
特にグループディスカッションでは、メンバーの発言を深堀したり、俯瞰的な質問を投げかける事で議論を深めていく事ができる。
自分の意見を主張する事も大切だが、まずは「今の自分が採用担当者の目にどのように映っているか」を意識する事が試験突破の第一歩だ。