地震2日目
おかしい。身体が痛む。肩にできた湿疹が痛む。目で見たものの現実感がない。しかし、昨日までのモヤがかった空気は普通に戻っている。断続的に肩が痛む。
本棚から落ちた本が部屋を乱雑にしている。余震が定期的に起こる。
原発は大丈夫だったのか。日本の喉元にいくつもの刃が突きつけられている。原発、ワクチン、自由貿易協定、改憲。世界の全ての人々の喉元にいくつもの刃が突きつけられている。
しかし、眠っている。多くの人が眠っている。喉元に触れた刃の、あのゾッとする冷たさで、目を覚ましてほしい。みんな、目を覚ませ!我々は崖っぷちだ。
皮膚がビリビリ痛む。ここ数日ばかり、ずっと、断続的に痛む。レンジの中に放り込まれた、電気で炙られた、みたいだ。
心の中から薄暗い感情が湧いてくる。あるいは、心の外から降ってきたのか。薄暗い感情、湧いてきたなら、泥混じりの井戸水だ。降ってきたなら、濁った雨水だ。どちらにしても、純水には程遠い。飲んだら死んでしまう、毒の感情だ。
感情が痛い。心は遠い。身体が痛む。
家族も疲れきっている。今日、両親は、祖母と叔母の家に行って、地震後の片付けを手伝った。家具は倒れていた。マンションのエレベーターホールのコンクリの壁も崩れていた。3.11の時のようだった。
木々、自然、雲、太陽もざわめいている。現実感が薄くなっている。命が遠い。
私は、私自身が遠くなっていく。自信がなくなっていく。私自身を見失っていく。訳の分からない不安があった。つかみどころのない心であった。
まだ地震は来るのか。また地震が来るのか。地震が来て、地獄の門が開けば良いのだ。悪人をすべて飲み込んでしまえば良い。その悪人の中に私が含まれていても良い。この世界を狂わしている狂人を、地獄よ、飲み込め!悪人を!私を!深い深い地の底に閉じ込めてしまえ!
しかし、実際に開いたのは、福島原発の放射能の扉だった。善人も悪人も、放射能の雨に打たれる。ワクチンに撃たれる。薄暗い感情が外から降ってくる。薄暗い感情が中から湧いてくる。悪意の花が私にも咲いていた。枯葉剤が心を枯らした。
しかし、妄想だ。妄想だ。原発はなんともないかもしれない。なんともないと信じたい。昨日の地震ですべて終わってほしい。いや、終わったのだ。本当に?
とりとめもない想いが生じる。肩が痛み、頭がぼやける。想いが中断されていく。
命は中断されない、たとえ死んでも。