満州からの手紙#155【追憶の記】幼い頃の思い出より
お母さん
私の幼い頃の思い出を
覚えているだけ
このノートに書き留めておきます。
満州からの手紙#155「幼い頃の記憶の中のお父さん」
私の幼い時の記憶の中には「懐かしいお父さんの姿」はどう考えてみてもうかんでこないのです。
お父さんは私にとって厳格すぎたのでしょうネ。
考えても考えても、しかられて、なぐられたことばかりしかよみがえって来ないのです。ハーーーーーーーーー。
私は一度何かの事でひどくしかられたことがありました。
まだ宇和島に出ない頃で、せまい私の家の店には反物が広げてあったと思います。
パン!!頭の辺りで音がすると同時に私は根かぎりの力と声を出して泣きました。そして私はたったなりで畳の上へ小便をジャーとやったのです。
これが小さい私のお父さん達に対する反抗だったのです。
お母さんは四つの私を大急ぎでだいて庭へホースを向けかえてくれましたよ。ハーーーーーーーー。
其の後から、又、お父さんのフシクレだった手がパンパンと来ました。
私は泣きながら「痛いな!!小便をやるとやっぱり嫌だ!!」と思いました。
ハーーーーーーーー。
それから後、お父さんにしかられて以前と同じように私が畳の上に小便をやったかやらぬかということは私の記憶にはありません。