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満州からの手紙#161【追憶の記】幼い頃の思い出より

お母さん
私の幼い頃の思い出を
覚えているだけ
このノートに書き留めておきます。

満州からの手紙#161「ふかの鐸丸」

私の家の隣は田中の清進さんの家でしたネ。
魚屋で店のチンレツ棚にてんぷらがのせてありました。
その清進さんのお上さんは、ほんとうに茶目な人でした。

いつか甘いものが出来たから一口食べて下さい。そういって丸い卵形の物に塩をもぶってもって来られたでしょう。
お母さんは大喜びで口にもってゆこうとされて顔をしかめて、それを又、元の皿にかえされたでしょう!!ハ・・・・・・。
田中の叔母さんは腹をかかえてころげ廻って笑はれましたネ。
その珍物は、生のままの『ふかのきんたま』に生塩をもぶったものだったのですから。ハ・・・・・・。


私が入營する四五日前、思い出の生地を尋ねました。盛んだった青木家も見る影もなく落目に成って、昔上がって悪戯をした土べいも、かべがバラバラに落ちて、初血を流した私の生れ家はとりのけられ畠に成って、かれた雑草の上に寒い木枯がふきまくっていました。     完・・・。

【投稿者より】
忠勝さんの手記もこれで最後を迎えました。お読み続けていただいた皆様、本当にありがとうございました。
忠勝さんから届いた満州からの手紙は、今を生きる皆様の心にお届けすることが出来たでしょうか?

コツコツと一文字一文字を大切に打ち続けていると、なんだか忠勝さんの精神が私を突き動かしてくださるような不思議な感覚を覚えました。私もまたその精神を受け継ぐものとして恥じることのない生き方をしなければ・・・などと考えてみたりして。
チョット大げさですけど(^^♪

最後に忠勝さんから届いたであろう詩をご紹介して、満洲からの手紙の締めといたしましょう。潔い忠勝さんの最期の思いです。
  
  『浮草の 身につまされし悲しみに 
   迷いこそすれ 思いとどめん』
  ※ペガサスと共に

次回からは満洲からの手紙原文でお届けしようと思います。
感想やコメントいただけたら嬉しいです(*^-^*)
             ~お読みいただいている皆様へ~



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