速度V1に達したら……
先日書いた「会えば会うほど損をする」の記事の中に、確認できない事項が含まれていました。
そのままにするのもいけないので、訂正させてください。
米国産トウモロコシの収穫に「プレハーベスト」といって、収穫前に除草剤を散布して葉や茎など全体を枯らしてから収穫する乱暴な方法が取られていると書きました。
アメリカの大規模農業の穀物収穫において、非常に多く普及している方法なのは間違いないのですが、調べたところ、トウモロコシについて行っているという資料が見つかりません。
行っていないという資料もないですが、行っているというソースもないので訂正させていただきます。
そして今回日本政府が追加輸入を約束させられた推定250万トンに及ぶ余剰コーンのほとんどが、安全性を十分に保証されていない、遺伝子組み換えであることは、ほぼ間違いないです。
ちなみにプレハーベストは、米国産の小麦と大豆の収穫で広く行われていることが確認できました。
小麦が危ないならパンとかうどんとか食べなければいいという問題ではなく、米国産の小麦や大豆は、日本食には欠かせない醤油と味噌の主原料として使われています。
値段が非常に高い、高級なおしょうゆやお味噌は、貴重な国内産小麦や大豆だけを使っている可能性がありますが、私たちが普通にお料理に使っている味噌醤油には、プレハーベストによる残留農薬の危険が高い、米国産小麦や大豆もたくさん使われていると考えて良いでしょう。
それでなければ、たぶん中国産の大豆とかになるのかもしれないですが、それはそれでまた別の問題があります。
これまたちなみにですが、お料理には欠かせない食用油(サラダ油など)にも、米国産の大豆やトウモロコシ、綿実、菜種などが使われています。
そして、醤油と食用油に関しては、遺伝子組み換えの表示義務が今のところないので、まあ、私たちの口に入っているものには、GMO作物が使われていると思って間違いないと思います。
庶民が本当に安全な食品を食べるのは、現代においては非常に難しいことで、単に献立を変えるだけではどうしようもないのだということがわかりますね。
それから、今回、日本政府が250万トンもの米国産コーンの追加輸入を約束させられた件で、一部マスコミやネットの発信者から出されている、擁護の記述に、明らかなごまかしや誤りがあるので、それも指摘しておきます。
1.まずNHKなどが出している、国内産飼料用トウモロコシに害虫が発生して収穫量が減ったので、その分に充てるためでもある、といういいわけについて。
まず国内産の飼料用トウモロコシというのは、ほとんどが、葉や茎ごと粉砕して飼料にする種類で、いわば牧草に近いもの。今回アメリカから追加輸入することになった「デントコーン」とは全く別種なので、代替にはなりません。
しかも、国内産飼料用トウモロコシの生産量は20万トンにも達しないうえ、害虫の被害を受けたのは、九州各県で生産される、わずか2万トン足らずの分だけ。
2万トン足らずの収量減の代替として、250万トンの輸入とはいったいどういうわけでしょうか。
明らかに意図的なごまかしによる、下手過ぎるいいわけです。なんでこんなことを、NHKのニュースでやるんでしょう。
嘘をついてまで政府をかばう公共放送。NHKニュースで流れることは正しい、と思う情報弱者は、それでも頭から信じてしまいますよね。
2.追加輸入は、これまで日本がアメリカから輸入してきたコーンの年間量の3か月分を、前倒しすることを約束しただけだ、という言説。確かに、250万トンはこれまでの年間輸入量の1/4ほどになります。
でも「前倒し」というからには、9か月後から1年後には、その期間分の250万トンの輸入をストップしてしまわないといけないことになります。でも、そんな約束、政府は米国政府としていませんよ。
もしそんな約束をしたら、トランプは中西部のトウモロコシ農家(トランプの重要な保守系支持層です)から大変な突き上げを食らいます。
あくまでも今回の分は、本来中国が引き受けるはずだった分を、単純に日本に「追加」輸入させるということに過ぎないです。「前倒し」というのは、とりあえず引き受ける量を、年間輸入量と比較して作ったいいわけにすぎません。
中国がその分の輸入を再開しない限り、今後とも引き続き日本が引き受けてくれとアメリカは言ってくるに違いないです。そうでないと、アメリカは生産量を落とさないといけないから困るんです。
3.押し付けられたコーンは、食用にしなくてもいい、バイオアルコールにしてエネルギー源にすれば?という考え。
でも、バイオアルコールを燃料にした車とか機械、発電施設などが、現在、日本でどれだけ普及しているでしょう?
しかも、その少ないアルコール燃料を製造する製造機械でさえ、飼料用デントコーンからアルコールを作るものではないので、改めて一から全部作り直さないといけません。
そのコストをかけてまで、アルコールのエネルギー源化を進める企業があるでしょうか?もしくは、政府がお金を出してくれるのでしょうか?
それでなくても、自然エネルギーの活用に消極的で、いまだに原発再稼働を進めたい国では、非現実的なことです。
どう考えても、押し付けられたトウモロコシは、今まで牛、豚、鶏の家畜に食べさせていたほかの飼料を削ってその代替に使う。もしくは、人間が食べる食品に工業的に変化させて使う以外にないんです。
(もちろん、スイートコーンみたいにゆでたり焼いたり缶詰にしたりして食べられるものではないです)
どうやって食品に混ぜるか。ぶどう糖果糖、異性化糖、コーンシロップ、ガムシロップなどと表記される甘味料にするか、水あめにするか(米などから作る水あめはとても高いので、普通の食品に入っている水あめはほとんどトウモロコシ由来です)。
果糖ぶどう糖液糖、異性化糖、水あめ、そのほか、コーンスターチ、食用油(植物性油脂)、加工用でんぷん、調味料(アミノ酸等)、醸造酢、醸造用アルコール(安いウォッカなど)、デキストリンなどの食品添加物……いろんなものに、トウモロコシは使われています。
お店で売っている食品の原材料表示の中に、よく見かけるものが多いと思います。
危ないトウモロコシが、どれだけ普段から我々の口に入っているかというのも、これをみればわかる通り。
先進国の人間の髪の毛に含まれる炭素を分析したところ、大半が「トウモロコシ由来」だったという研究もあります。
いずれにしても、日本人の口の中に放り込む方法は、いくらでもあります。だぶついたコーンは、他の食品原材料の代替として、今後どんどん増えて行くのかも。
あるいは、こんなことを予想する人もいます。
もうすぐ、日本で「アジアアフリカ開発会議」というものが開かれます。
ここで、「途上国への食糧支援」という名目で、日本で消費しきれないアメリカ産トウモロコシを、アフリカ諸国に押し付けるのではないか、と。
もちろん、途上国にはお金がないですから、アメリカから輸入したコーンを、そのまま今度は日本人のお金でアフリカまで運んで行って、何らかの形で食べさせるということになります。
それならアメリカから直接食糧支援してもらえばいいのですが、日本を経由すれば、かかる経費も日本人に押し付けられるから、アメリカには好都合でしょうね。
それに、アフリカ諸国は、我々が食べたくない、危ないものやら要らない食べ物の捨て場所じゃない。そもそも失礼な話です。
このように、どうやってこじつけようとも、今回の日米貿易交渉で日本政府がトウモロコシを押し付けられたことに大義名分を与えるのは無理なんです。
それだけじゃなくて、各種食肉の関税も仰天するほど引き下げを約束しちゃったし。
こちら側の「ウィン」になるはずだった自動車関税に関しては、期限なしの先送りになっちゃったし。
ウィンウィンの関係じゃなくて、日本の一方的な負け。ルーザー。
アメリカの従僕?ATM?金づる?カモ?
ちなみに中国が今回、アメリカのトウモロコシの輸入を拒否したのは、米中貿易摩擦の影響というのもありますけれど、それ以前から、中国の「食糧安全保障政策」として、米国産農産物に頼る率を減らし、国内産に替えようという戦略があったのも事実のようです。
まさに、食料政策は安全保障政策、ということ。
武器を買うのだけが安全保障ではないんです。
本当はそんなこと、日本政府の下で働いている官僚なら、多くの人が実はわかっていることなんでしょう。
世襲でその地位にたまたまついた、政治家たちがわかっているのかどうかは、怪しいですけど。
(政府の要職に就いた人の子や近しい親族が、世襲でそれを引き継ぐのを制限する法律が欲しいくらい……中世から近世のヴェネツィア共和国にあった制度のような)
米国の言い値で高額兵器を購入するばかりで、農水産業政策はおざなりで「食料安保」に真逆のことばかりしている日本政府。
珍しくこの列島に豊かにある資源、外国に頼る必要がない資源は、「水」だけなんですが……
これについてまで、その保水の基盤となる山=林業の再建をまともに考えない。そればかりか、水道の利権まで外国の企業に売り渡そうとしている。
次は、きっと健康保険も外資の保険会社に門戸を開くため、危うい状態になりそう。
もちろん、これらの「国の資源と国民を売り渡す」政策の見返りとして、政治家個人や身内、献金してくれる大企業だけがトクする仕組みだけはしっかり確保して。
食べるものも、水も危なくなる。がんやその他の病気は増える。その上医療や社会保障まで先細るようにされたら、今のアメリカみたいに、お金がない人は病気しても医者にもかかれなくなります。死ぬのを待つばかり。
それで人口が減ったら、年金制度がいくら破綻しても大丈夫、むしろ好都合ってことですか。
いみじくも、なんだか安倍さんの後継者みたいな雰囲気に「勝手に」されてる、小泉進次郎氏は「日本の人口は今の半分、6千万人ぐらいがちょうどいい」と言ってましたね。なるほど。
このままじゃ本当に、日本は防衛するものとてない、空っぽの国になっちゃいますよ。
バカ高い武器を買ってる一方、政府の失政で国民の財産はむしられ、健康と生命が危機に晒される。
国民の生命財産を守るのが安全保障じゃないんですか?
このままじゃ本末転倒。
立派な兵器で空っぽの国を守るってどんなブラックジョークでしょう。
そういう政府を「安全保障や防衛政策を任せられるのはあの人たちだけ」と支持し続ける人たちは、本当に脳内お花畑、平和ボケですね。
「日本を取り戻す!」とか、「この国を守る!」とかいうスローガンは勇ましいですけど、こんな状況で「何を」守ろうというのか。みんなちゃんとわかってるんですかね?
そういうのに疑問をさしはさむと、「サヨク」「パヨク」「反日」「非国民」とネトウヨみたいな人に罵られます。
思うようにならないと「天皇も反日!」と言い出す始末。
じゃあ、守るべきもの、依って立つところは何なのでしょうか。今の「体制」?
日本の現体制が間違っていると思って、間違ってるんじゃないですかと指摘すると、反日と言われる。
それは絶対にして誤りのないものなのでしょうか?人間がすることなのに?人間と、人間集団を妄信するのが正しい普通の日本人?
もう、カルト宗教そのものですね。
ということに、早く気付かないと、本当に取り返しがつかなくなります。
取り返しがつかない、もしくは誤りやごまかしをもう隠しきれないとなったとき、この国の「体制」もしくは「大勢」はどうするのでしょうか。
前の戦争のときみたいに、無謀な破滅へと、みんなで突進するのでしょうか。
死なばもろとも、一億火の玉、総員玉砕?
もっとも狡い人たちは、逃げ道をちゃんと確保してるみたいですけどね。海外に「資産フライト」をしたり、生活拠点を世界の複数の場所に確保していたり。竹〇平△さんみたいに。勝ち逃げってやつですか。
でも99%以上の日本人にはそれは無理なこと。
航空用語で、飛行機が異常に気付いて、離陸を中止できるギリギリの速度を「V1」といいます。
そこに達したら、たとえ墜落する可能性が高くても、もう離陸するしかない。乗員と乗客は一蓮托生。大人も子供も、良い人も悪い人も、運命を共にせざるを得ない。
まだV1に達していないこと、達する前に、離陸が中止できること……もう祈るしかないです。