◇好評連載【子どもたちのメッセージ】スーパーの小さなヒーロー
僕が小学校を卒業した後の、春休みに起きた「心あたたまる話」です。僕はその日、姉とスーパーへ買い物に行っていました。お互い受験も終わり、時間にも余裕ができた頃。受験前の張りつめた空気から解放され、このような普通の買い物も久しぶりだったので、気分も良かったです。
姉と話しながらスーパーをまわり、一週間分の食料や日用雑貨を一通りそろえ、レジに向かいました。
しかし、その日は日曜日で、時刻は昼の二時前。快晴だったこともあってか、レジには多くの人が並んでいました。少し困りましたが、姉は、
「まあ今日みたいな日なら、これぐらい混んでてもおかしくないか。」
と、落ち着いた様子で言いました。僕も納得し、時間に余裕もあったので、焦らずに並んで待つことにしました。
しかし混雑は全く収まらず、むしろレジに並ぶ人は増える一方。どうやらレジの対応をしているのは研修生のようで、そのうえ買い物客は僕達と同じように一週間分の物をまとめ買いしている人々がほとんどのようでした。
すでに僕達が並び始めてから十五分ほど経過しているのに、行列はほとんど進みません。さすがに周囲の人達もイライラしているようで、場の空気は悪くなっていきました。僕と姉もさすがにつかれ、困っていました。 その時、一人の女性が声を上げました。
「いつまで待たせる気なの!? もう十分以上も待っているんだけど!?」
その言葉でさらに場の空気は悪くなってしまい、ますます困りました。女性の怒りは収まっていないうえに、並ぶ人は増える一方。女性は、
「早くしてっていってるでしょ! お客様は神様なんじゃないの!? さっさとしてよ! こっちはお金、払うんだから!」
と、怒鳴り続けていました。もはや場の空気は最悪。僕達も困り果てていました。
しかしその時、レジに並んでいた小さな男の子がその女性に、
「そんなに怒らないで。レジの人もがんばっているし、お姉さんは笑っていた方が可愛いよ。」
と言いました。その女性は恥ずかしかったのか、「お姉さん」と言われて少し嬉しかったのか、黙ってしまいました。僕や姉、周りの人達は皆、面白そうに笑っていました。
その男の子のおかげで場の空気は和やかになり、僕達も無事買い物を済ませることができました。姉は、僕に
「面白かったね。」
と、笑いながら言いました。レジの小さな男の子は、まさに「小さなヒーロー」でした。
大林 叡思 ( おおばやし えいし )
鹿児島県 ラ・サール中学校 1年( 令和元年度当時 )
本稿は第19回作文コンクール「心あたたまる話」の受賞作文です。
原文のまま掲載しています。
( 主催・一般社団法人人間性復活運動本部 )
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