死んでほしいおばはん(入院顛末記1)
実は12年前まで、私は痔主でした。
18歳ぐらいから発症し、大便のときたまに出血したり、お酒飲んだりしたら肛門が腫れてしまい、痔に悩まさせていました。
そして、12年前、私が30歳を超えた頃、遂にピークを迎えました。
それは、夏場、仕事の出張先で立って、書類の上げ下ろしをしていたとき。
お尻から太ももの裏にかけて液体が滴り落ちてくる...。最初は暑いからお尻から大量に発汗してしまったと思っていました。
しかし、それにしてはちょっと量が多過ぎる...
異常を感じた私は確認に、出張先のトイレを拝借して、個室へ。
ズボンを下げ、便器にまたがり、お尻付近を確認しに手をお尻に当てると、赤いものが手にべっとり...
そして、ボトボトと真っ赤な液体が便器に滴り落ち、みるみるうちに真っ白な便器は鮮血の海に!
うおおおおーーー!!
俺は、俺は失血死するんじゃないか!?
真夏なのに、そんな恐怖で背筋が凍りました。
実際は、便器が白い分だけ血が目立ってただけで、そんな出血量はなかったのかも知れません。男なんで、生理とかの経験ないんで、トイレでの出血には敏感だったのかも。
とりあえず恐怖に震えた私は、明日病院に行くことに決め、今日の仕事が終わったら、上司に報告することにしました。
なんとか出血を食い止め、オケツにテッシュを大量にあてがい、仕事を続行しました。
出張先での仕事を終え、タクシーで会社に帰る車内で、とりあえず一緒に二人で出張していた上司に報告することにしました。
が、ひとつ問題が。
今日一緒に出張した直上の上司は、40代の女性で、鉄血のオンナと言われる冷酷無比で有名なH女史だったのです。
一応余談的な話ですが、彼女は40代バツなし独身です。
「H女史、ひとつご相談があるのですが?」タクシーの後部座席に二人並んでいるとき、私は恐る恐る切り出しました。タクシーの中は、運転手と、後部座席の私とH女史の三人。
「なに?仕事の話は、会社に帰ってからするべきでしょ?守秘義務あるし!あなた常識ないわねぇ。」さっそくわけのわからないダメ出しを食らう。
「いいえ、そうではなくて私事のご相談なんです。実はさっきお尻から出血しまして...たぶん痔だと思うんですが、明日休ませていただいて病院行かせていただきたいんです。」上司とは言え、女性に自分は痔だと伝えるのはやはり勇気が要る。
「はぁ〜!?明日も明後日もずっと出張入ってるこの忙しい時に休むって?アンタ今ウチの部署忙しいことわかって言ってんの!?来週は東京行かなきゃいけないのよ。まったく...仕事する気あるの?」
「いや、でもこのままのカラダの状態では仕事に集中できないと判断したからでして...」
「ハァーー!毎日変なお店で酒飲んで、風俗とか行ってるからそんな変なビョーキになるんでしょ?それにそんな汚い話を女性である私にしてっ!まったくデリカシーないわねー!」
え!え!え!えーーーー!!!
ちょ、ちょっと待ってくれ!
私は今、直上の上司に年次休暇の申請の相談と自分の病気の相談を真剣にしてるのに、この完全拒絶はなんなん!!?
まるでおれが女性上司にセクハラしてるみたいやん!?
おい!アンタそれでも上司か!?
女性上司とは言え、男性部下の訴えに対してそんなに横暴に扱うか?
もはや、デリカシーとかそんな問題ちゃうやん!
それに痔は性病ちゃうし!
かつ、俺、風俗店とか行ってへんし!
曲解するにも甚だしきすぎるやろ!
お前、上司ととして完全に失格や!
もうダメや!もうお前では話にならん!!
申し訳ないけど、あえて、アンタをお前と言うしかないやろ!
そのままタクシーでの会話は、私の絶句で終わり会社へ到着。その後のフォローも女史からは無い。どころか、この話で機嫌を悪くしたのか、なんの話もしない。なんやこいつは?
このとんでもないアホ上司とは話にならんと判断した私は、会社に着いた途端、すぐさま女史のその上の男性上司に事情を説明した上で相談し、すぐに年次休暇を申請した。
翌日、病院に行くと、すぐに手術が必要なことが判明。その後3週間の入院を余儀なくされた。
結局実際の病名は「直腸脱漏」
痔よりも、はるかに重篤な状態でした。
腸がハミ出てるんやで...。
入院中、年休申請を許可してくれた上の上司や、もっと上の管理職、あまり関係ないのに、隣の部署の上司などもわざわざ見舞いに来てくれた。有り難いことだ。
しかし、肝心の直上のH女史だけは、見舞いに来ることはなかった。
3週間後、退院して、H女史に一応「この度は、長期入院でご迷惑をおかけしまして申し訳ありませんでした。」と一応挨拶をしたが、その返事がまたおったまげた。
「いやー、私も見舞いに行こうとも思ったんだけどぉー、ほら、ビョーキが恥ずかしいビョーキでしょ?女性のアタシがお見舞いに行くと逆に気を遣わせるでしょぉー?だから、行かなかったの。ウフフッ。」
「......あのー、私、あなたのこと女性だとも上司だとも思ってないどころか、そもそも人間だとも思ってませんが!」と叫びたい衝動を抑えるのに当時たいへん苦労いたしました。
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