初恋の話
これは小学校の時の話。当時私にはものすごく好きな子(Rさん)がいたのだが、それはもうほぼ実りかけの恋であり、正直Rさんには脈を感じられた。ていうか、これほぼ私に好きだと直接言ってるんじゃね?といったこともあったと思う(これは蜜月の記憶なのかもしれないが)
そんなある日、私は遂に告白することを決めた。それは、今までなんとなく人を好きになったことはあったが、それ以上の進展のなかった私にとってこれからの運命を変える大きな選択だったのであった。
今でもそうだが、私はとても口下手なので、ラブレターをこっそり渡す選択をしたのであった。
ただ、私はその手紙を書いた際の記憶をあまり覚えていなくて、これを書いていても思い出す気が起きないのだが、確か、文法はぐちゃぐちゃだし誤字もエグいし行は真っ直ぐじゃないしで、どうせチソチソでも出しながら書いたであろう事が簡単に伺えるようなものだったと頭の片隅で記憶している。
そんなこんなでどうにかラブレターを完成させた私は、告白しようと決意しておきながら直接渡せるような勇気も湧かなかったので、放課後に彼女の机の中に入れておく事にした。
6時間目のチャイムが鳴った後、私はいつも一緒に帰ってる友達を先に帰らせた。すごく不思議そうな表情をしていたが、私は友の信用よりも目の前に迫った恋の成就の可能性を優先したのであった。
そして、みんなが帰ったのあろう時間帯までトイレに篭った後、ラブレターを持って彼女の机へと向かった。しかし、その時私はとんでもないミスに気づくのであった。
なんと、私は彼女の机の場所を知らなかったのである。
実は、私と彼女は別のクラスであり、休み時間に廊下で談笑こそしていたが、彼女のクラスにズカズカ入ってまで何かをしていたわけではなかったのであった。
私は、自分の教室に置いてあったラブレターを持っていく際にそのミステイクに気付き、後悔したが、まだ私には幸福の女神は味方していたようだ。
というのも、彼女の教室には、生徒こそ誰もいなかったが日課か何かをするために残っていた担任がいたのだった。しかもその人は私と仲の良い教員だったので、急に彼女の席を聞くのは不自然だが、ある程度の会話をすれば彼女の席の場所を聞き出すことはそう難しいことではなかった。
5分ほどの世間話をした後、容易に彼女の席を聞き出した私は、とにかく計画がうまくいったことに安堵して、その日は、彼女の机にラブレターをほり込んだ後、中学の受験勉強もそっちのけで、明日の彼女の返事を待って即刻ベッドに潜り込むのであった。
十分な睡眠時間を確保して調子としては最高のコンディションで迎えた次の日、正直私は、彼女の脈から、その返事についてはかなりの自信があった。
なので、朝食のフロッグは牛乳を纏って朝日を反射して煌めいていたし、いつも眠い目を擦りながらイヤイヤしている着替えを森の中をかける春の鹿のように軽やかに済ませ、つまらない友人とのだる絡みも、その日は全てが年末年始のバラエティーに思えて仕方なったのであった。
しかし、そんな最高な一日はとある違和感を帯びていく事になった。
というのも、いつになっても彼女が私に何も言ってこないのだ。
その違和感を感じた私は、彼女のクラスを覗きに言った。なぜか、いつも比較的静かなその教室は女子たちのざわめきで異様に盛り上がっていた。私は、とりあえずこの違和感の正体を把握するために、少し親しかった唯一のその組の友達を呼び出し、なぜあんなに盛り上がっていたのか事情を聴取する事にした。そこで私はとんでもない事に気づいたのであった。それは、
私はラブレターを別の女子の机に入れていたのである。
どうやら、ラブレターの内容から、それが私のものであることは教室中に知れ渡っていたらしく、その蔓延具合は、昼休みを挟んだ5時間目から覆せるようなものではないらしい。
普段私は周りからキモがられていたし、私が普段つるんでいる友人は、そんな流行りを捉えられるような奴らではなかったので、その話は私まで回ってこなかったのであった。(そんなことあるか?)
それからの1年間は一生そのことでいじられて、結局彼女とは疎遠になってしまった。
ちなみに、ここから大どんでん返しがあってどうせ私が付き合えるであろうことを期待しているそこの諸君。残念だが、私はこの後、彼女から無視され、なんなら浮気もされる。
私は気が弱いので、そこから彼女をもう一度私の虜にさせられる気力もなかった。
そのせいでその後にあった中学受験に支障が出て、私はとあるFラン私立中学に進学するのだが、それはまた別のお話。
ただ、正直小学生の初恋なんてそんなもんなのではないだろうか。とはいえ、それからそこまで行動が伴う恋をしていないので、私にこれ以上を語る資格など無い。
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