消える自由席と、増える全席指定列車。今後、自由席の命運は!?
SNSで広がりを見せる、のぞみの自由席問題
どうもゴハチさんです。
さて皆様、ゴールデンウィークはどのようにして過ごされていましたでしょうか
旅行に出かけた方もいれば、家でごろごろしていただけの方もいると思います。
どちらにせよ、今日からは平日、いつもの日常ですね( '▽')
かくいう私は、最繁忙日である5月3日に東日本系統の新幹線を記録したり、推しアニメの聖地巡礼をしたり、ブルアカのアニメ見たり、いろいろ満喫してました。
新幹線は、臨時列車の増発などで、10分待たずに次の列車がすぐにやってきたので、新幹線の撮影にはうってつけな1日でした(最も、朝方の山形新幹線内カモシカ衝突で遅れていたのもありますが…)。
と、そんな新幹線でゴールデンウィーク中話題になっていたのが、「のぞみ号の全席指定化」についてです
「のぞみの全席指定化のせいで、ひかりの自由席に混雑が集中してる」というつぶやきを発端に、多くの方から意見が出されました
ところで、自由席と指定席の違いは何があるのでしょうか。
料金が安い?列車を自由に選べる?それとも…?
今回は、そんな自由席の歴史とメリットとデメリット、そして全席指定列車が増えているわけをお話ししていこうと思います。
そもそも自由席って何者?
さて、そもそも自由席とはどのような制度なのでしょうか
Wikipediaより引用させていただきました
要するに、座席を指定せずに利用できる切符のことを指します。
定員を超えた場合には、着席ができず、あくまで移動手段や観覧のための切符であることになります
さて、日本の列車に自由席という制度が登場したのは1964年の12月
現在のJR東海相談役の須田寛氏(ほかにも青春18きっぷやL特急を発案した人物)の提案により、東海道新幹線に設定されたものでした。
当時、開業したばかりだった新幹線には、東名阪移動の旅客だけでなく、物珍しさで伊豆方面へ向う観光客もおり、それらで窓口が大混雑していました。
一方、当該の全席指定だったこだま号はいくらか空席を残して発車しているのが現状
要するに、窓口は混んでいるのに売れ残りがいくつもあったのです。
当時の切符の販売はコンピューターが導入されたばかりで、発券までの手続きはほぼ人力、発車までに発売が間に合わないことがほとんどでした。
そこで、最繁忙期になる12月より、お試しで「着席保証はないけどすぐに発券できる切符」として通常の特急料金の100円引きで設定されたのが自由席でした
この結果は大成功し、全国に特急網を広げるきっかけとなったヨンサントォ改正こと1968年10月より、新幹線に接続する在来線特急「はと」「みどり」「なは」「しおじ」「うずしお」の各列車に自由席車両を設定
1972年のL特急設定の際にも、「新幹線と同等のサービス水準を提供する」ことを念頭に、全席指定が当たり前だった特急列車に自由席を設定しました。
これが、日本の鉄道における自由席の始まりです
要するに、簡単にまとめると
切符を販売するコンピュータ装置(以下:マルス)がまだ貧弱なもので、発券が追いつかない
そのため、窓口は混むのに当該の電車には空席がある
じゃあ着席保証のない切符を販売して、空席を穴埋めしよう
というように、マルス黎明期だった昭和半ばの時代に、妥協策として作られたものが自由席でした。
先述したように、特急列車は当初指定席のみだったため、その名残として指定席特急券の場合は、単に「特急券」あるいは「新幹線特急券」という記載が。自由席特急券の場合は「自由席特急券」あるいは「新幹線自由席特急券」という記載があり、あくまで指定席がメインで、自由席はそこから着席保証料金を差し引いた特急券という扱いなのです
マルスも躍進、割引切符も充実、人手不足も問題に。さて、自由席の存在意義は?
あくまで時代に合わせた妥協策として作られた自由席。
一方で予約不要というメリットを生かして、昭和半ばより広がりを見せたL特急ではすべての列車に自由席を設定
「数自慢 キッカリ発車 自由席」というキャッチフレーズのもと、L特急はその利便性から全国へと広がりを見せていきました
さて、時代は元号を二つまたいだ令和の時代
自由席を生み出す発端となったマルスの性能は格段に向上し、窓口に並ばずとも、駅の青色の券売機はもちろん、自宅や職場でも思い立った瞬間にインターネットで予約ができるようになりました。
また乗客は、列車に対して移動には質を求める時代に変わり、確実にゆったり座って移動できる指定席の需要も高まりを見せています。
また、指定席にも各種割引が設定され、モノによっては自由席より格安なものも多く出てきました(中には運賃より新幹線セット券のほうが安いとかいう馬鹿げたものまであったり…)
さらに、割引きっぷの中には「発車時刻まで変更自由」というものまであり、これらを踏まえると、もはや自由席という座席の存在意義自体が怪しくなってきます
そして、自由席の廃止が進むもう一つの要因が「人手不足」、そして「人件費の高騰」です
自由席の場合、車掌さんが切符のチェックをしに車内を巡回します。自由席の立ち客も座ってる人も、一人ひとり切符を確認し、持っていない人に対して販売も行う。そして車掌さんの仕事はそれだけでなく、ドアの開閉や車内アナウンスなどなど多岐にわたります。これらの業務を当然ながら一人で行うことは難しく、場合によっては特急料金を徴収できず不正乗車が頻発していたりしますので、主要な列車には、車掌が2〜3人乗っていることがあります
一方、すべての座席を指定席にしてしまえば、指定された席に座っている人は手元の端末に情報が書き込まれているため、空席のはずの席に座っている人だけ声をかけて切符の確認を行うだけで済みます
要するに、車内改札の業務を簡略化することができ、ほかの仕事に回せる時間も増えます。となると、1列車に乗せる車掌さんの人数も減らすことができ、人手不足に対応できるほか、人件費の削減にも繋がります
時代遅れな制度、と言われても仕方ないように感じてしまいます
自由席のメリット・デメリットは?
さて、ここからは自由席のメリットとデメリットを、乗客、鉄道会社(乗務員含む)という2つの視点から考えていきましょう
乗客側のメリット
まずは私たち乗客が感じるメリット・デメリットを考察していきましょう
・指定席と比較して安い
自由席の良さとして真っ先に挙げられるのが「指定席より安い」という点
通常期は530円、ゴールデンウィークや夏休みなどの最繁忙期には930円もの違いが出てきます
片道だけで考えるとあまり差は出ないかもしれませんが、往復で考えれば通常期の差額は1060円。駅弁が1個買えます
最繁忙期は往復の差額が1860円、東京ばな奈12個入が買えます
というように、浮いたお金で旅行先を満喫したり、お土産を買ったりと、いろいろ楽しめるのが自由席の良い点ですね
・列車を自由に選べる
自由席とは、その名の通り自由席区画なら、列車や席を自由に選ぶことが可能です
早めに帰れる場合や、予定していた列車に乗り遅れそうというときでも、列車の予約がないため、柔軟に対応することが可能です。現に、私もそのおかげで何度も助けられました
ギリギリまで観光したいけど、最終電車は満席…というときでも自由席を使えば混雑覚悟でもギリギリまで遊び呆けることが可能です。おかげさまで例年ののぞみ64号の地獄ぶりはいざ知らず
とまぁ、乗客側にとってのメリットはこんなところでしょうか。ほかにもあるかもしれませんが、パッと思い浮かぶのはこれくらいですね
乗客側のデメリット
・確実に座ることができない
自由席は、確かに空いている座席に自由に座ることができる良いシステムですが、裏を返せば着席保証がなされていないというもの
旅行までの道中で2時間や3時間と立ち席の場合は、旅行先に着く前に疲弊しきってしまいます
実際、最繁忙期ののぞみ号で自由席を設けていた期間は「乗車率200%超え」という状況が連日続いていました
要するに、自由席の座席数に対して、その倍のお客さんが乗車しているということになります
座席に確実に座りたい場合は指定席を取るか、始発駅で30分以上待つかしないと、最繁忙期には座席にありつくことができません
・列車によっては自由席がついていない列車もある
東北新幹線の「はやぶさ」や、北陸新幹線の「かがやき」などの列車は、一部区間を除き自由席での利用は原則できません
同じ区間を走行する準速達型には自由席がついているので、誤って乗らないようにしましょう
なお、今回の東海道新幹線では「のぞみは全席指定だけど立ち席なら乗れる」という但し書きがあったのですが、あんまり認知されていなかったように感じます
それのせいでひかり大混雑とかいう状況につながったんですよね。もう少し周知したり、駅構内でも案内したりしておけば混乱は避けられたのかも…
余談ですが、全席指定の「はやぶさ」や「かがやき」にも、繁忙期には立ち席特急券というものが販売されます。こちらは、通常期の速達料金(はやぶさ・こまちのみ)を含めた特急料金から530円を差し引いたもので、繁忙期などを中心に発売されます
なお、近年JR東日本で設定されている「スワローサービス」と呼ばれる料金体系の場合では、この立ち席特急券と同等の仕組みを持つシステムとして「座席未指定券」を発売しています。但しこちらは指定席料金と同額となっております。ご注意ください
乗務員側、鉄道会社側のメリット
さて、乗客視点はいったんこれくらいにしておいて、次は乗務員、鉄道会社目線で見て行きましょう
なお、私はただの鉄オタなので、一部憶測も交じっています
・一つの列車に定員以上の乗客を乗せられるので増収につながる
鉄道車両にも、定員というものはありますが、ある程度オーバーしても大丈夫なように設計がされています。
ただ、全席指定にしてしまうと、定員だけを乗せる列車になってしまうため、それより多くの乗客を一つの列車に乗せることで増収にもつながります
割引があるものの、トータルで見れば1列車当たりの収益は上がることになります
・簡単に発売する事ができる
そもそも自由席はすぐに発売するためのシステムでしたので、簡単に発売することができます
万が一、車内で特急券を持っていない面倒な客に遭遇しても「はいはい自由席でいいですね」ですぐに発券できます
いちいち空席情報を照会して切符を発券して…ということはしなくてもいいわけです。単純にレシート状の切符を出せばあとはご自由にどうぞ、ってなるわけですね
乗務員側、鉄道会社側のデメリット
・自由席の方が激混みなのに指定席に空席が出るため、混雑に偏りが生じる
自由席利用客に対して、乗車が許されているのは特別な措置がない限りは自由席区画だけ
つまり、その号車に上で述べたメリットを求めて乗客が集中するわけです
となると、本来売れるべきだった座席が空いているのに自由席区画に乗車率が集中するわけです
先ほど、トータルでは増収になるとお話ししましたが、それはあくまで指定席が埋まっていた場合のお話し
自由席の混雑のうち、立ち席の数名を指定席の空席に移せばその分増収にもつながります
実際に以前サンダーバード号に乗車した際に、12号車はガラガラだったのに自由席は大混雑していたことがありました
こういうのを見ていると、全席指定になる理由も納得だと感じます
要するに、定員以上乗っていれば増収にはなりますが、それは同時に定員と同じ、あるいはそれ以下の場合だと極端な混雑を生み出す要因になりかねないのです
・切符の確認が面倒だし、確認しきれていない場合は不正乗車が発覚する場合がある
そもそも、自由席に座っている人たちは自由席特急券を持っている人なのか持っていない人なのかの判別がつきません
そのため、車掌さんは一人ひとり切符を確認しに車内を巡回します
一方、現在の特急は小・中規模都市にも停車する列車も多くあり、発車から停車まで所要時間が長くありません
先述したように、車掌さんは車内巡回だけではなくドアの開閉や接続列車の案内などなど、走行中に行う仕事は多岐にわたります
そんな中でも最も時間がかかるのがこの車内巡回
自由席の旅客に対して一人ひとりの切符を確認し押印、持っていない人に対しては切符の発売など、かなり面倒な対応を行っていました
そうして自由席の巡回が終わらないうちに次の停車駅へ接近
巡回できなかった車内からお客さんが降りてくのが見えると、その人が特急券を持っていたのか否かがわからず、肩を落とす
こういう情景が思い浮かびますよね?
対策として、巡回用の車掌とそれ以外の車掌の2名を乗せるのも一つの手ですが、人口減少や人手不足がただでさえ叫ばれている時代に、そんな非効率的なことはやらない方がいいですよね
であれば、全席指定にして車内巡回の時間を省略、指定していない場所に座っている人に声をかけて切符を発売したりすれば、そっちの方が断然早く済みます
自由席の今後を占う
さて、自由席の今後ですが、私的な予想ではなくなる日が近いと予想します
お話ししたように、自由席とはコンピュータ黎明期の昭和半ばに生み出された妥協策なのです
現在では、コンピュータは世界が競争しながらその精度を日に日に向上させています
専用の部屋を設けるほど大きな装置が必要だったコンピュータ桿体は、現在ポケットサイズの板になるほど小さくなり、60年で大きな進化を遂げました
さらに、日本では人口減少が叫ばれています。要するにJR側としては乗ってくれるお客さんの数も減っているのです。
定員以上の乗車で収益を出せるのが自由席ということはお話ししましたが、この定員に対する乗車率が割れてしまっては、結局指定席で乗ってもらった方が収益は増えます
コロナ禍で大きな減収を迎えた民営会社のJRにとっては、1円でも稼ぐビジネスをしないと今後がやっていけません
指定席はガラガラなのに自由席は満員御礼、という事態になったら何のために指定席をつないでいるのか、という話になりますね
JR東日本では、指定席と自由席のちょうど中間くらいの値段設定の特急料金(通称スワローサービス)を新たに設けたり
JR西日本ではe5489を利用した割引切符の拡大で、全席指定化に踏み切ったりと、各社独自のやり方で不公平さが出ないような特急券の販売システムを出しています
結局、乗客が求めているものは何か
自由席ユーザーの人たちが求めているのは、自由席に存在した2つの利点のどちらか、あるいは両方を兼ね備えた切符です
改めて自由席のメリットをおさらいしましょう
指定席より安い
列車を自由に選べる
要するに、これらの条件さえ当てはまってしまえば、なにも自由席でなくともよいのです
現在では自由席より格安な切符はJR各社で売り出されていますし、インターネット上では発車時刻まで列車の変更が可能な切符も発売されています
自由席のメリットは、JRの経営努力や現在のネット技術で十分覆すことが可能なのです
乗客はが求めているのは「自由席特急券」ではなく、「自由席並みの特急券」
えきねっとやe5489などが発達した現在では、この「自由席並みの特急券」は多々発売されています。特急に求められるものは、時代と共に変化していきます。今の時代、自由席というものは昭和の遺産として、徐々に過去のものに変わっていき、特急列車はかつての「全席指定」という姿に原点回帰する日が近いのかもしれません
まぁたまにある「自由席乗り放題」のフリー切符まで考えると話は変わってくるかもしれませんが…
ゴールデンウィークののぞみ自由席問題はなぜ起きた
さて、最後に今回のゴールデンウィークに起きたのぞみ自由席問題はなぜ起きたのかについて軽くお話ししましょう
要因はいくつかあったと思いますが、この混乱を引き起こした最大の原因は「いつもと違う」というイレギュラーさだと考えます
のぞみの全席指定で混乱する人が後を絶たなかった一方、普段から全席指定の東北・北陸新幹線では、目立った混乱は発生していませんでした
つまるところ、ゴールデンウィークに起きたのぞみ自由席問題について最善の解決策は「最初から全席指定にしておく」という一言に尽きると思います
確かに、東名阪移動では自由席にも一定の需要があることは確かなのですがそれが全列車の増収につながっているかと言えばそんなことはなく、混んでいる新大阪行もあれば、その直後を走る博多行きは3列独占できたりと、混雑率に偏りがあるように感じます
常時全席指定にすれば、その混雑も分散できますし、JRにとっても増収につながります
そのためのハードルはいくつかあるように感じますが、少なくとも今回発生した「のぞみ全席指定とか聞いてないぞ!」という事態は回避できると思います
ついでに会社としても、広告で周知するコストもかかりませんしね
終わりに
昭和の時代に妥協策として作られた自由席
元号を二つ超えた現在では、その役割は割引切符などに譲りつつあります
昭和の遺産、と呼ばれてもおかしくない制度である自由席は、人口減少が進む今後においてはあまり必要とされない制度なのかもしれません
確実なのは、今後自由席は衰退していき、20年以内にはほとんど消えているということでしょう
時代と共に役目を変えてきた自由席という制度は、令和の今、大きな節目を迎えているのかもしれません
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