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038 蓮華・宰牙逝去
ひとり、ふたりと訪れて。
ひとり、ふたりと去って。
1023.8 蓮華・宰牙逝去
8月になりました。
入道雲が浮かぶ、暑い夏です。
クーラーなんて現代的な物は無いけど
現代よりは過ごし易い暑さのはず。
「よぉし!僕が大きいカブトムシの
捕まえ方を教えてやるから着いてこい!」
「凪ちゃんすげぇ!よっしゃー!!
デカいの捕まえるぞ!!行くぞ蒼紫!」
凪・葵・蒼紫のお子ちゃま組は
炎天下の下でも元気そうだなぁ。
麦わら帽子被って野山を駆け巡る姿が
想像できる。
今月は選考試合があるから
はしゃぎすぎて怪我しないように、と
彗が口を酸っぱくして伝えても
全然聞いてないんだろうな。
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宰牙・蒼紫の親子訓練の成果報告です。
宰牙はあまり厳しく指導する印象無いし
2人で筒の指南読み込みながら
あーやってこーやって色々試したり
頑張ってたのかな。なんか楽しそうだな。
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蒼紫も訓練期間を無事に終えて
実戦部隊入りしました!めでてぇな!
日ノ崎一族初の大筒士、華々しく
デビューしようじゃないか。
今月の選考試合でな!
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も〜〜〜めっちゃ待ってた〜〜〜!!
彗の御子が来訪しました!
彗と紅子様の顔面偏差値強強な二人から
どんな子供が生まれるのか、
楽しみで仕方なかったんだよ〜。
男女が交互に生まれてる当主ラインなので
セオリー通りに行けば、この子は
女の子になるはずだけど……どうかな?
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神秘的な瞳の女の子でした〜〜!
結構目力が強いのかな?
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THE 美女。
凛々しい美人さん!!
そしてめちゃくちゃ彗に似てる!!
こんなん親子じゃん!!親子だけど!!
紅子様の面差しも何処となく感じる……。
彗の娘として来てくれてありがとう!!
好きなものはキジ鍋らしいです。
君の祖母にあたる織姫はね、
カモ鍋が好きだったんだよ……。
さては、君も家族とワイワイ騒ぎながら
鍋を囲むのが好きなタイプだな?
そして気になる素質ですが。
強すぎでは???
技素質・体素質ともにとんでもなく高いし
技火と心水は他に比べると低いけど
それでも低すぎる訳では無いし。
両親の長所をそれぞれ受け継いだんだね。
彗の弱点だった低い体風が
ゴリゴリに補われています。すっご。
でもこれは、福郎太様の母系体風かな?
彗が裏で待ってたんだね。
この素質バーのまま育っていったら
最強になるのでは?はい優勝。
次の当主は貴女です。
心素質も結構安定してるから、
何があってもどっしり構えて
明るく笑ってる感じの子なのかも。
だって見てくれよこの心土。
もしかしたらカンストするんじゃない?
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名前は、お父さんと同じく彗星から取って
「星乃叶(ほのか)」にします。
ちょっと気に入ってる名付けです。
彗もこの名前を思いついた自分を
ちょっと誇らしげに思ってそう。
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職業は、拳法家を受け継ぎます。
織姫以来の女拳法家だ〜〜!!
まだ一つも奥義を編み出せてないから
星乃叶には頑張ってもらいたい。
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一気に大所帯になったね〜〜!!!
でも風目は星乃叶だけなんだなぁ。
……今気づいたけど、星乃叶って
夕海ちゃんとカラーリング全部一緒?
うわぁ〜!!ちょっと感動。
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……大所帯になったね、って今すごく
喜んだんですけれども。
今月で蓮華と宰牙とお別れとなります。
蓮華の健康度が痛々しいよ……。
宰牙も63まで下がってるよ……。
現時点での一族の中でこの2人だけ
戦闘不能経験があって、
更に同じ月に一緒にお別れするって、
こんな事あるんだねぇ……。
辛い事や悲しい事を分かち合って
ぶつかった事もあったけど、それでも
同じ時代を生きてきた2人だからこその
運命の導きだったりするのかな。
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彗世代は、上の子と下の子で
温度差が違うような感じが常にあったけど
上の2人がこういう結末を迎える所まで
知ると、あの大江山での事が無ければ
もっとこの4人は歩み寄ることが出来て
今とは違う関係性が築けたのかなって
ちょっと寂しく思っちゃうね。
たられば、の話なんだけどね。
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君達は、これからどんな未来を
歩んでいくのかまだ分からないけど。
まっすぐに歩いて行って欲しいな。
……にしても次世代強すぎでは??
素質的にも、個性的な意味でも、
成長が楽しみです。
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星乃叶の訓練は、蓮華にお願いします。
次期当主の訓練って事でめちゃくちゃに
張り切りそうだけど無理はダメだからね。
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初陣を経た葵の術修得状況です。
こんだけ覚えられたら優秀でしょう!!
円子・仏酔酒が使えたらもう偉い。
凄いぞ葵!よく頑張ったな葵!
実は感覚派なのかも?
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最後に、蓮華に茶器を渡しました。
忠心が100に戻り切らない所も
蓮華らしくて好きです。
宰牙にもあげたかったけど
忠心100だったので無理でした。
くそ〜〜!代わりにイツ花せんせに
何か美味しいものでも作って貰いなさい。
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それでは!!
蒼紫の初陣という事で、
8月の選考試合に出ようと思います。
彗・凪が前衛、葵・蒼紫が後衛です。
優勝もぎ取って、お留守番組への
お土産にするぞ〜〜!!
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やっほ〜〜帝〜〜!!
今日は若手組を引き連れて来〜たよっ!
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まずは桜花攻撃班!
いつもの顔馴染みだね。
ちょちょっとしばき回しましょう。
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短期決戦、されど一本勝ちで行くぜ!
飛び蹴りでまずは1人撃破!
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蒼紫のへなちょこ初攻撃!!
まだ一回も成長してないから仕方ないね!
かわいいダメージです。
ここから強くなるんだよ蒼紫!
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最後は凪のフィニッシュ。
安定のエグすぎ火力で勝ちました。
大丈夫これ?凪ちゃん出禁にならない?
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蒼紫の初成長だ〜〜、と喜んでたら。
彗が奥義を創作!!!????
お前!!!??マジか!!!!??
完全に諦めてたのに!!???
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金剛変だぁぁぁ!!!!!
強すぎて縛ってもいいレベルの奥義!!
えっ、彗よく頑張ったな!!!!!!
彗の名前が後世に残るのマジで嬉しい。
絶対来月は彗が星乃叶の訓練をして
継承させなきゃ。残さなきゃ。
やった〜〜嬉しい〜〜!!
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若手組もいい成長です。
体はゴリゴリに上げていけ〜〜。
特に蒼紫は防具に期待できない分
素の防御力を上げていかないとね。
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お次は毘沙門会。
どんな人達だったっけ……?
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剣士4人組でした!!
薙ぎ払って終わり!
避けられて一本勝ちは逃しました……。
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大原野魔術団は確か踊り屋集団でした。
めちゃくちゃ避けるから嫌いです。
頑張って倒すぞ〜〜。
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凪どうした!!?防御進言!!?
「あいつら避けるから嫌い〜〜!
僕相手したくないから彗やってよ〜!!」
みたいな感じ?その気持ちよく分かる。
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「葵達にいいところ見せるチャンスだろ」
って彗に言われて素直に攻撃しちゃう
凪ちゃんの図です。
結局避けられててわろた。
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後はお前だけじゃ!
鏡戦法とか小賢しい事すな!
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ほら〜〜!!凪が防御するとか言うから
葵も真似してんじゃん!!!
当たらなくてもいいから戦え〜〜!!
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お前ら!!やる気あんのか!!
ちょっと真似して防御進言出してみよ!
じゃないんだよ!!
ビビってるわけじゃないだろ!
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おら!!若手の教育に悪いから
さっさとご退場願います!!
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どたばたしながらも2人とも成長!
この調子で行こう。
葵の心土が死んでる気がしてるけど
気のせいだよね。まだ伸びるよね。
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最後は池田本家代表!
この人達も覚えてないな、何だ何だ?
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踊り屋のおかわりやめろ!!!
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蒼紫の成長〜〜!
情に厚い男に育っています。
ねぇ技土!!さっきまで伸びてたじゃん!
諦めるな!もっと伸びろ!
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騒がしい選考試合でしたが、
無事優勝しました。
この試合、蓮華に見られていたら
葵は間違いなく鉄拳制裁だろうな。
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やったね優勝!
養老水・祝いの鈴・それと幾つかの
茶器をいただいて帰りました。
出来れば時登りの笛が欲しかったけど
次の試合に期待するしかないか。
帝、次は頼んだぞ。
わいわいと喜ぶ弟妹達を引き連れて
げっそり疲れた彗は屋敷へ帰ります。
帰ったら、蓮華と宰牙の様子を見てから
星乃叶の訓練報告を聞いて、携帯袋を
整理して来月の出陣予定を確認して……。
色々とやるべき事を考え続けているのは
帰還した時に起こるかもしれない事を
考えないようにしているからかな。
何となく彗も肌で感じ取っているの
でしょう。
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イツ花せんせ、ただいまー。
色々面白い事も起こったけど
無事に優勝してきたよ〜〜。
若手2人も活躍……はまだだけど
頑張ったから、蓮華と宰牙にちゃんと
報告しないとね。
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……。
遂にこの時が来てしまいました。
あ゛あああ゛ぁぁあ………。
早過ぎるよ、早過ぎるんだよぉ……。
まだ2人ともこの家には必要なのに、
まだいなくなって欲しくなんかないのに。
まだ状況が飲み込めてない弟妹達を連れ
彗はイツ花せんせの案内の元、
2人の所へ行きます。
自分だって、覚悟できてないのに
その足取りは真っ直ぐです。
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その頃の日ノ崎家は、朱点童子打倒を見据え
解呪後に訪れるだろう未来を夢見ていて。
彼女もまた、愛する父とこの先もずっと
一緒にいる為に訓練に励んでいました。
無邪気に未来を信じていたね。
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蓮華の胸中にあったのは、何が何でも
必ず朱点童子を倒すという強い思いでした。
絶対に橘を助けるんだという決意でした。
それが無惨に打ち砕かれた、あの冬の日。
どれ程の絶望が蓮華を襲ったでしょう。
冷たくなっていく父の手をいつまでも
握り締めていた彼女はどれ程泣いたでしょう。
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去っていく前世代の子達を見送りながら。
宿敵を前に何も出来なかった私は、
もっともっと強い素質を持つ子供を生んで
いつの日か黄川人を殺せる子が現れるように
血を繋いでいかなければ……、と
いつしかそれだけを考えるようになります。
家族といても、楽しいと感じる時があっても、
蓮華の心の根底には、
常に焦燥感があったのでしょう。
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鬼への憎しみを糧に自分だけの刀を育てて。
奥義を作る為に朱ノ首輪を使って。
彼女は生き急ぐように前に進み続けました。
自分の理解者でもあった宰牙に
咎められる事があっても、
その足を止める事なく進み続けました。
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授かった葵は確かに強い素質を持って
生まれてきました。けれど、やんちゃで
楽しそうに笑う葵に、在りし日の父の面影を
見てしまった時。
漸く、蓮華は足を止めたのかもしれません。
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休む事もできず走り続けた彼女ですが、
ずっと側にいた弟と一緒ならば
きっと道に迷う事なく。
真っ直ぐに、父親の元へ行けるでしょう。
強い刀を育てて強い奥義を作って、
彼女が貪欲にひたすらに求め続けたのは
朱点童子を殺す為の強さでした。
憎しみと無力感に苛まれ続けた
彼女の人生が、生き方が。
正しかったのか間違っていたのかなんて
もう誰にも分かりませんが。
きっと、橘なら。
いつもの優しい笑顔で
蓮華を抱き締めてくれるでしょう。
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蓮華らしい、強くて寂しい遺言でした。
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蓮華が先に目を閉じて。
姉の眠る顔を見てから、宰牙も
追いかけるように、瞼を下ろしました。
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実戦に出る前に朱点童子討伐の失敗で
絶望に満ちた家族の顔を見て、
そして初陣で戦闘不能になり。
戦いでの恐ろしさを伝聞でも実体験でも
思い知らされた子でした。
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敵を射抜きサポートと補助に徹していました。
よく敵に狙われて寝かされていたけど、
淡々と自分の仕事をこなす男だったね。
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挫けることなく戦況を読み、自分を切り捨てて
一族の要である当主の命を優先させる選択を
取りました。それを許さなかった彗を
当主としては甘い考えだと思いつつも
兄としてはどう思っていたのかな。
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その気持ちが痛い程分かる宰牙は止める事なく
ただ側で戦い続けました。
彼女が朱ノ首輪を使ったあの出陣で
敵を前に戦闘不能に陥った時になって、
宰牙は一度も姉を止めようとしなかった事を。
彼女の心の傷から目を逸らし続けた事を、
後悔したのかもしれません。
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弓ではなく大筒を与えたのは。
一度に多くの敵を倒して、少しでも
家族を助けられる男になれるようにという
宰牙なりの思いやりだったのかな。
母に似て優しい子に育つだろう蒼紫が、
家族に寄り添えるように。
無愛想でも、一匹狼でも。
それでも宰牙は彼なりに家族の事を
大事にしていました。
もっと、もっと。
彼等に時間があったのならば。
4人の心が一つになった瞬間も、
あったのかもしれませんね。
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縁側で、のんびりお茶を啜りながら
おにぎりを食べる君の姿が
いつまでも思い起こせるよ。
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きっと、2人が進む先で。
懐かしい皆が、手を振っているでしょう。
お疲れ様。
おやすみなさい。