大谷の精子がコンビニで売っていたら買うべきなのだろうか?

WBCでの侍ジャパン、特に大谷選手の活躍を受けて、大谷選手のみ一夫多妻制を解禁しろというツイートや大谷選手の精子を配れば少子高齢化は解決するといったツイートが多くみられました。

では、真面目な話としてコンビニで買えるくらい手軽に大谷選手の精子を手に入れる機会があったら、それを使って自分の子どもを作るべきなのでしょうか?
結論から言えば僕はそう思いません。それは精子バンクが優生思想的だからというような倫理面での話ではなく、それをすることが有意義だとは思えないからです。

大谷の子は大谷にならない

遺伝の世界には平均への回帰という言葉があります。
遺伝学者のゴルドンが発見した法則で、背が高いなどの平均から外れた形質を持つ親の子どもは平均に近づく(背が親よりも低くなる)という法則です。

大谷選手の子どもは平均よりはスポーツができるのでしょうが、大谷選手ほど群を抜いてスポーツができるようになるようになるのは遺伝子の組み合わせの奇跡としかいいようがなく、少しの違いが大きな違いとなるので子どもに受け継がれないのでしょう。
そして、プロ野球選手としての収入はおおむね勝者総取りになります。大谷選手の年俸は85億円とも言われ、同世代の若者の2000人から3000人分の年収を稼いでいるわけですが、甲子園に行ってプロになれなかった人と大谷選手の間に2000倍以上の才能差があるとは思えません。一般人と比較しても2000倍の速さでボールを投げられるというわけでもないですしね。

大谷選手がそれだけの金額を稼げているのは野球という勝てばリターンの大きい勝負の勝者だからであって、その才能を多少受け継いだだけの子どもが同じように稼げるかと言われるとそんなことはないでしょう。

自分より出来がよければいいのか

そんなことを言っても自分の子どもが自分よりいくらか出来がよければそれでいいじゃないかという考えもあるかもしれません。しかし、それは子どもの立場からの目線が抜けています。
前述の通り、大谷選手の子どもは大谷選手になりません。その子どもから見たときに遺伝子UR(ウルトラレア)の父親と遺伝子N(ノーマル)の母親がいることになります。
精子バンクという遺伝子至上主義の極みのような環境から産まれた彼もしくは彼女は自分が大谷選手になれない原因を遺伝子Nの母親に求める可能性は大いにあると思います。
私の高学歴の「友達」は短大卒の教育ママに育てられたことでその価値観を内面化し、母親を尊敬できなくなったと語っていました。それと同じことが遺伝子でも起きる可能性があると考えています。
遺伝的に抜きんでることができない子どもを遺伝子至上主義の環境に産むことは誰にとっても不幸です。
「遺伝」は子どもの能力を考える上で外せないことではありますが、少なくとも建前は遺伝子や優秀さよりも大切なものがあるという姿勢で子どもと接する必要はあるのではないでしょうか?
大谷選手になれない多くの魂を救うためにも大谷選手の精子がコンビニで売っていたとしても買わない方がいいと思います。

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