妙なこというやつは雲助と呼ぼう
なんか雲助って言葉を無性に気に入ってしまって題名を先に書いてしまった。簡単に調べてみたら善良な雲助もいたってウィキベディアに書いてあるもんだから余計に気に入った。
とはいえ雲助ってのはほめ言葉じゃないから、ここではおれが出会ったダメな雲助について書いてみよう。本文と写真は関係ありません。
作法を知らない雲助
これは雲助だよね。けっこう刺激的な雲助がいた。なにしろ基本的な作法を知らないのに人さまにモノを教え賜るというのだからなかなか肝がすわっていた。お茶でいうなら下半身裸で茶をたてるくらいの迫力はあった。
研究、少なくとも学術論文の常識では誰だって知ってるに決まっている用語であっても突然略語を出してはいけない、という明確な決まりごとがある。学術論文はその分野のエキスパートだけでなく分野外の人々にも開かれているべきだから、ということなんだと思ってる。
仕事がらみで受講した有料のセミナーで突然略語を出した雲助がいた。なんも説明がなくてマジでわかんなかったので「それなんですか?」と質問したところ「論文でも略語のままで使われている。常識。」と強弁する雲助。
ありえない。学術論文では上述のような決まりがあり、論文の概要を記した「要旨」と本文、それぞれにおいて略語が最初に出てきたときに必ずその中身を明記しなくてはならない。どうも略語の中身を知らないようだった。
おれが査読した論文にもまれにそうした手落ちがあった。その場合には必ず指摘するし、直ってなかったら論文が雑誌に掲載されることはない。
つまりその有料セミナー雲助は論文を書いたことも、もしかするとちゃんと読んだこともない、ということが強く推認される。以来、有料セミナーのメールはすべて配信停止にした。会社のカネとはいえ万単位は許せない。
謎の権威を振りかざす雲助1
これはマジでびっくりした。日本のカネでアメリカへ行っていたころ、日本へ一時帰国するための航空券について「現金で購入し領収書をもらうこと」と抜かしてくる事務員がいた。
片道だと割引が効きにくいのでノースカロライナから日本の航空券は1800ドルくらいした。しかもアメリカのATMは20ドル札しか出てこないから90枚の札束を持って土地勘のないノースカロライナをお散歩しろという。
そんな大金を持った英語もままならないアジア人が南部の文化が色濃いノースカロライナで、幸運にも旅行代理店まで無事たどり着いたところで強盗を疑われて通報される可能性だってあった。
「ここはアメリカだしそんな多額の現金を持ち歩きたくない。クレジットカードでネット決済するから清算してほしい。」といったところ、「特例中の特例」などとわけのわからない恩を着せられた。
謎の権威を振りかざす雲助2
まあ特例中の特例が認められるなら今後も特例を認めてもらって当然だとおんなじことを繰り返していたら、なんとか抵抗したいとみえる雲助。
「航空券の明細書の内容が不透明。もっと詳しいものを提出してほしい。」と言ってきた。
なので、雲助は英語読めんだろうから日系の旅行代理店に「事務方が細かい明細が欲しいというので、あらゆる項目を明細化した明細書を出してもらえませんか。」とお願いしたところさすがはプロ。すんごい明細が出てきた。航空券のあれこれの中身、マジで勉強になった。
ところが前例のないことや未知のものが嫌いな雲助(人類の進化を妨げると言い換えてもいい)。自分で要求したガチの明細の内容がわからなかった模様。常軌を逸した行動に出た。
家族で帰国してた時、名も名乗らず嫁実家へ電話。おれを呼び出し名も名乗らず「この植物検疫費用というのはなんですか!?私が海外旅行へ行ったことがないことへの当てつけですか!!」と怒り狂う雲助。
しらねえよ。そもそもおまえ誰だ。
「まずですね。誰かのおうちへ電話するときはまず名乗りましょう。それとあなたの個人的な話には興味がありません。明細はあなたが詳細なものを要求したので私が旅行代理店に頼んだものです。」と答えたところガチャ切りされた。
雲助はすっかり根に持ったらしく、さらなる嫌がらせを仕掛けてきたので人を使って特大の爆弾を落としてやった。
ダメな雲助にならないために
今回紹介した雲助たちに共通しているのは、「矜持を持つこと」と「偉そうにすること」をはき違えてしまっていることじゃないかと思う。
これって明日は我が身かもしれない、襟を正さないといけないな、と思う。
だって我々は勝手に歳を取っていくので能力向上の有無にかかわらず年齢的には上がっていくことになるわけ。「まだ子供だから」が「まだ若いから」になったうちはいいけど「いい歳して」と言われたらダメな雲助だ。
自戒を込めて書いてみました。
ちなみに、アメリカの研究者もそうだけど、アメリカの事務方はホントに「正しい矜持」を持っていた。
彼ら彼女らは毎朝8時前には出勤して前日のリクエストをこなし、「いかに研究者に研究と関係ないことをさせずに済ませるか」を日々真剣に考えて実践してくれていることがよく分かった。伝票なんて見たこともなかった。
アメリカも日本もいま大きな問題を抱えているけど、いずれもこの「矜持の持ち方」が根底にあるように思う。