ナウシカが好き
「風の谷のナウシカ」、しらない人はほとんどいないでしょう。映画が最初にテレビ放映された1985年当時ぼくは14歳。「どうせ『未来少年コナン』のパチもんだろ?」とあまり期待せずに観たところ、がっつり恋した。
そもそも宮崎駿作品の女の子はタイプなんですよね(ポニョと千尋は除く)頬のふっくらしたカーブとか。
1985年というと日本がバブルに突っ込もうという時代であったとともに、ぼく自身わりあい自然に触れる機会が多い子供でした。小さな借家でしたが深い裏山があり、山の中を駆け回っていて地形も熟知していましたね。
一方、当時は公害のことを習ったりしたし実際に電車で多摩川の上を通るといまじゃ信じられないようなバブルバスみたいなアワアワでした。その光景を見るにつけ、子供なりに「こりゃまずいな」って思ったものです。
人間が自分たちの都合で自然に手を加えようとすることの危険さをナウシカは身をもって訴えます。
結局ぼくが環境科学をかじるきっかけになったのもナウシカです。ナウシカに関してはいくらオタクとののしられてもいいと思っています。
原作は4回買い替えた
案外知らない人が多いんですが、映画のナウシカは原作のマンガが3巻までしか出ていない段階で公開されたものです。原作が全7巻で完結したのはたしか90年代だったような。
つまり、映画では本当のナウシカ原作について半分しか描かれていないわけで別物といえば別物なんですよ。
原作のマンガは良心的な価格で中学生でも手を出せるものでした。結局完結するころには大学生になっていたけれど、とにかくガッツリはまった。
全7巻読みに読んでボロボロになり、全巻買い替え、またボロボロに、を繰り返し、現在持っているのはたぶん4セット目だと思います。そのほかに「愛蔵版」という内容は全く同じだけれどハードカバーになっていて2冊にまとまっているのがありますが、読んだことないです。
ここから先はナウシカオタクのおかしな世界だと思って大目に見てください。
クロトワが好き
映画ではとにかく横暴なトルメキアの司令官であるクシャナの腰ぎんちゃく程度に描かれているのですが、原作では実に味のある人物です。
軍参謀というかなりの地位にいますが平民出の叩き上げ。しかも、せこいおべっかとかでのし上がってきたのではなく、本物の実力派であるカッコよさを原作1巻からいきなり見せつけられます。
汚いこともするし、ズルもする。度胸があり、賢く機転も効く。はっきり言って生きるためには何でもやってきた、と言わんばかり。時には残虐だけれどしかし一本スジが通った、一言でいうなら男が惚れる男ですね。
彼は戦争の現実をイヤというほど見てきているからナウシカが孤児を2人助けてきたときに、女子供ばかりなん100人も死んで積まれている場所の上空をわざわざ低く飛んでナウシカに見せつける。
「これが戦争の現実なんだよ。ガキのひとりやふたり拾ったとこでどうにもならねえんだ!」って言うんです。
けど、ナウシカが助けたのは1人じゃなく2人なんですよ。1人じゃ不十分だが、みんなが2人ずつ助ければ世界が変わるかも、というメッセージと解釈しています。
ま、あんな男になりたいもんですわ。彼の設定年齢の倍ちかくになってしまったけど。一晩飲み明かしたい男ですね。
クシャナに踏まれたい
前述のとおり、映画のクシャナはトルメキアの司令官として同盟関係にあるはずの風の谷へ侵略同然の横暴な訪問をし、暴虐無人なふるまいをする美しい狂気として描かれています。
原作でも彼女の凶暴さはあるのですが、映画とは真逆のイメージな、人としての魅力が深く描かれています。
彼女は王女ではありますがトルメキア王の娘ではない。細かく描かれてはいませんが先代のトルメキア王の娘であり多くの貴族や高官は彼女こそ本筋だと思っているわけです。
王としては超うざい。
当然彼女は子供のころから身の危険にさらされ続けます。しかし生き残って大人になり、地位からいって軍の一つも渡さねばならないということでトルメキアの「第3軍」を指揮することとなります。
彼女には兄が3人います。もちろん血のつながりはないと思う。兄貴が3人もいてなぜ4番目のクシャナが「第3軍」を持つのか。「第1軍」は当然、国王の直轄ですよね。
ではその次の息子が第2軍、その次が、でクシャナは5軍くらいのはずなのになぜ3軍なのか。兄貴どもがポンコツすぎるから。
クシャナの兄3人はどいつもこいつもポンコツで3人で第2軍を預かるのが精いっぱい。その残りカスを渡すからおとなしくしておけ、と言われたのがクシャナであり、彼女の第3軍なわけです。
だから血筋もよくないし、出世の見込みもあんまりない普通だったら全く士気の上がらない軍隊だったはずです。
しかし、そんな逆境にめげずクシャナは彼らを最強の軍隊に仕上げます。一兵たりとも軽んじない彼女の姿勢は全軍に染みわたっており、鋼の忠誠心で彼女に従い、またそのことを誇りに思います。
彼女もそれに応えるがごとく兵一人一人の特性を活かした奇抜な戦術で圧倒的不利な状況を打破し続けるのがなんとも痛快ですね。
あんな美人で賢くて育ちもいい女の人に踏みつけられたい。
登場人物が対になっていると思う
原作を読み込んでいると、どうも様々な陣営それぞれにいる人物が対として描かれていることに気づきます。
普通の民衆 vs 普通の民衆 → 普通の民衆
あたりまえ。
(おれが大好きな)クロトワ vs (トルメキアの敵対国家軍司令官)チヤルカ → 通常の人間の限界=秀才の類
(踏まれたい)クシャナ vs (ナウシカの叔父)ユパ → 人間の限界=天才の類
では、ナウシカは?
ぼくの解釈では人知を超えたもの、であって、原作の中にいくつか出てくる人間を超えた英知が彼女の対になると思っています。
おれの設定?あるよそりゃあ。
まあ、ここまでこじらせれば当然自分設定はあるわけで。
映画版にも出てくるペジテという街出身の技術者。
ナウシカの世界では飛行機(フネ)は造れるけれど、それを飛ばすエンジンを製作する技術はなく、過去に滅んだ文明が残したエンジンを発掘して利用するしかない、となっています。
ペジテはエンジン採掘で栄えた街です。そうやってなん100年も稼いできた。そういう街で当然技術者の考え方も「掘って再生してなんぼ」。
おれは違う。
「エンジンがいるんだろ?造ればいいじゃないか。エンジンのほかにわけのわからない器械がたくさん出てくるじゃないか。これらはエンジンを作る工作機械だったんじゃないのか?これらを使ってエンジンを造ろう。」
当然煙たがられる。予算も出ない。だからベテランと仲が悪い。王子であるアスベルなんて大っ嫌い。
しかし「誰だかわからないスポンサー」が常についていて地道に研究を進めている。そしてある日、エンジンの新規製作に成功し自分のフネ(当時最速)を造る。
そのころになってようやく、謎のスポンサーが毛嫌いしていたアスベルであると知るのだけれど、そこへトルメキアが攻めてきて街は滅亡、おれは自分のフネで命からがら逃げて(美人がいるって評判の)風の谷へ逃げて端の方へ住み着く。
ミトじいに訊いてはならないこと
ミトじいというと映画にも出てくる眼帯の猛者っぽいじいさんですね。「姫さま、もうだめじゃあ!」のじいさん。
あれは見たところかなりいけるクチだね。
で、風の谷の一番腐海寄りにあるおれんちにたびたび飲みに来るわけ。そりゃあ真面目な姫さまのおつきばっかりじゃあ疲れるだろう。「お。またきたの。飲もうか。」ってわけで。
まあ、いつも二人きりってわけでもなくて友だちの蟲使いとかも一緒に飲んだり、クロトワもたまに来る。楽しいねえ。ときどき誰かが事情のわかってないやつを連れてくる。
そんなときに、事情のわかってないやつに限って、「ミトさん、その眼ってどうされたんですか?」って、絶対訊いちゃダメなやつ訊くわけね。おれたち全員げんなり。
猛者たるミトじい、ケガして失った眼のことを聴いてほしくて仕方ない。
「(ナウシカの父)ジルさまの初陣のころはのぅ」から始まって延々数時間。しかも酔っているから終わったの忘れておんなじ武勇伝を繰り返す。地獄。
ま、そんなこんなで谷の祭りでミトじいと飲みすぎて翌日ミトじいと並んで正座させられてナウシカに𠮟責されたり。
クロトワに「クシャナってなんとかなんね?」と聞いて「生きて帰ってきたらほめてやるよ」って言われたり。
子供たちには案外人気だったり。
自慢のフネでナウシカの危機を救ったり。
ま、そんなふうに余生を暮らしたいねえ。
おわり