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新スタートレック:大好き

ミスタースポックでおなじみのスタートレックは日本では「スタートレック宇宙大作戦」という名前で、ぼくが小学生のころ再放送されており夢中になって観たものです。

もともと宇宙に興味があったし、知らない星へ行って知らない生き物が次々と出てきて、共通の価値観とか、単純な善悪といったものがはっきりしないところが好きでした。

当時の日本のアニメとかは見た目の色だけで悪か善かわかってしまうし、子供なりにも理不尽じゃないかというくらい善とされる方が勝ちまくるのであまり好きにはなれなかったのもあります。

とはいえ、当初のスタートレックもいま思えば白人でマッチョのカーク船長がムカつく宇宙人をぶん殴るってのがけっこうありました。

スタートレック88?ふざけんなよ

上述のスタートレックはアメリカで爆発的な人気を博しました。そもそもプロデューサーのジーン・ロッテンベリーという人の企画書題名が秀逸だった。

「宇宙を探検する幌馬車」

だったそうで。そりゃあ開拓国のアメリカ人は熱狂して当然です。ぼくも学校で孤立し、家に帰ればアル中無職の親父がいて母は必死に働いているという、あんまり楽しくない境遇にあったのでスタートレックにははまりましたねえ。

けど、なんにでもおしまいはあるのでカーク船長のスタートレックは終わってしまいます。

終わってだいぶ経った1988年に出てきたのが「新スタートレック」。日本のビデオ屋さんでは「スタートレック88」というタイトルで出始めました。「お!カーク船長また観られるのか!」と思って手に取ると知らないハゲがジャケットに写っててがっかりしたものです。

当然、アメリカ人も同じように感じたようで、当初の新スタートレック(むこうではStar Trek Next Generation)はとてつもない不評で、物騒な話まであったそうです。

じわじわと変わった評価

アメリカテレビ物の製作陣はすごいなあと思うのは、そんな不評は見越してたってとこですね。

なんでそんなに不評だったのか。まあ、そもそも大人気シリーズのあとってのはそもそもキツい。

それに、最年少船長にして船長自ら宇宙人をぶん殴る前作と違い、白髪のスキンヘッド、官僚エリート的なピカード艦長はビール片手にケーブル観てるだけの下層アメリカ人にはムカつく存在だったんでしょう。

それは解ってたのかのごとく、第一シーズンで最初のスタートレックで固定ファンがいたであろうドクターマッコイを出して、ミスタースポックや機関長のチャーリーもその後ちょいちょい出して視聴者をなだめるわけです。

艦長が万能じゃないとこがいい

新スタートレックのジャン=リュック・ピカード艦長は、その名前からしてそもそもアメリカ人じゃない。フランス人。おうちはワインぶどう農家。そんなにマッチョじゃないし、好戦的でもない。精神的な弱みも見せる。

カーク船長がケンカもメンタルもパーフェクトなリーダーだったのとはそこが全然違う。まあ、頭の良さではスポックに全然負けてたけど。アメリカ人はそこらへんどうでもいいし、ぼくもそうだった。

結局のところ、あらゆるスタートレックシリーズで最も強烈にヒットしたのはこの新スタートレックでしょう。いまでも続編があるくらいだし、その後のシリーズもピカード艦長の威光にすがっている。

そのピカード艦長のなにがいいって、ホントに素敵な管理職なんですよ。部下の方がうまいことは部下に任せるけど全責任は取る。田中角栄みたい。いまじゃもう夢中。30時間スタートレックなんて企画もマジで全部観た。

善悪がはっきりしない

ぼくは仮面ライダーとかタイムボカンとかアンパンマンとかがあんまり好きじゃない子供でした。善悪は自分で判断したいって思ってたんです。

その点、スタートレックは善悪が判らない、疑ってかからないと観られないものが観たかった。カーク船長のでもけっこうそういうエピソードはありましたがピカード艦長になってその傾向はさらに鮮明になった。

たとえば、いまじゃ絶対できないテーマでテロリストが出てくる話では「テロリストにも彼らなりの道理がある」てな感じで、テロリストを封じ込めようとする(当たり前なんだけどさ)ピカードをこずるいイヤなやつって描くエピソードもありました。

おまえが考えろっていうスタイルにほれ込みましたね。

当時のアメリカは寛容だった

最近のアメリカ映画を観て思うことは、「(キリスト教の)神をあがめないとカネが出ないんだな」ってことです。

それはぼくが科学に興味を持つきっかけになった「コスモス」を監修したカール・セーガン博士の映画「コンタクト」でかなり露骨に描かれています。

しかしピカード艦長のスタートレックは違った。いまのアメリカでできるのかな?

神が普通に出てくる

新スタートレックシリーズには神や神を名乗るものが普通に結構出てきます。一回や二回ではない。

場合によっては「この民族は未熟なのでまだ神という存在が必要なんだ」なんていまのアメリカ福音派が聞いたらなにしちゃうんだろうってことを平気で言ってます。

ほかにも「交渉無敵」って思いっきりイエスっぽい人出てきたり。

それらのエピソードとは別に、人気キャラクターになったQという存在も見方によっては神です。全知全能だし。死なないし。シリーズの最初から出てきてはちょっかいを出しにきます。

このQってのはぼくも大好きで、全知全能のくせにさびしがり屋でポンコツなんですよ。ただ、全知全能だけにかまってほしいからと仕掛けてくるイタズラがハンパではない。まあ、ギリシャ神話の神に似てます。

おいおい君たち共産主義は違法だろ?

ぼくも最近知ってびっくりしたんですが、欧米諸国の多くは共産思想を違法としています。だから日本には共産党があるよ、議席もある。って言うと欧米人はびっくりします。びっくりされてびっくりしたおれもマヌケだけど。

新スタートレックのピカード艦長は「我々人類は進化して、もはや富や名声のために働くことはしない。自らの人生をより充実したものにするために働くのである。」と明言しています。

共産主義じゃん。

80年代のアメリカは、こんな発言も受け入れる寛容さがあったんですよ。

窮屈だよな。いまのアメリカ。

最近になってピカード艦長の引退後を描いたTNG (Trek Next Generation)マニアでないと少しも面白くないであろう「ピカード」というのがリリースされています。

第一シーズンはオタクに言わせるとなかなかの圧巻でした。

第二シーズンに例のポンコツ全知全能Qが出てくるとのことですが、いまのアメリカで大丈夫なのかな。

おれとQ

最期にいつもの妄想で締めさせていただきたいと思います。

出たいんですよ。スタートレック。

役柄としてはピカード艦長の同期か近い年代の学校卒。ピカード艦長のようなエリートタイプではなく一発勝負に勝ち続けて偶然艦長になっちゃった感満載のクズ。

ある日ピカード艦長率いるエンタープライズ号と出会い(任務が面倒だから遭難してたことにしてた)、「君は任務を放棄して一体ここでなにをやってるんだ?」なんて訊かれたりして。

当然飲んでる。アメリカらしく茶色の紙袋に入った酒瓶をあおってる。お堅い連邦の戦艦ブリッジだというのに壁はスプレーの落書きだらけで爆音メタルがかかっている。

ピカード「連邦の艦船は君の所有物ではない。早急に本部へ報告し任務へ戻るんだ。」

おれ「やだよ。怒られるじゃん。おれ案外繊細なんだぜ。そんなことよりよ、ジャンリュック、おれ、すんげえ副長雇ったんだ。おまえんとこのライカーなんて目じゃないぜ!」

と言って副長を紹介すると、まさに先述のQが副長席に座ってる。

戦慄したピカードの表情アップでオープニングへ。

いいじゃん。タダでいいから出させてよこの企画。行き返りの飛行機も自費でいい!

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