プロレスとわたし
8月の毎日うだるように暑い頃のことである。
新日本プロレスの大きな大会であるG1クライマックスの最終決戦が開催された。
常に追っているわけではなかったが、たまにくるプロレス熱で勢いあまってその数ヶ月サブスク課金していたので、今回のG1は興味のある選手の試合だけはなんとなく見ていた。
ふと目にした準決勝結果の速報で、翌日の決勝戦がオカダ・カズチカ対ウィル・オスプレイというわたしにとっては夢のような対戦カードであることを知り、飛び上がった。
どちらも大好きな選手で、スピード感あるアクロバティックな空中戦が期待できそうな対戦カードなのである。
絶対見たい。
この時期にサブスク課金しとってよかった。
これが片方違う選手なら、試合は見ずに結果だけをチェックして終わりだったかもしれない。
なんという最高のカード…
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わたしが新日本プロレスを見始めたのは8年ぐらい前だったと思う。
新日本プロレスの番組「ワールドプロレスリング」を深夜につけていたテレビでたまたま目にして、その白熱した試合に釘付けになった。
いうなれば実写版格闘ゲーム。
とても人間業とは思えない多彩な技を次々と繰り出す選手たち。
それぞれに個性的な選手のキャラクターやコスチューム、決めゼリフ。
入場テーマ曲やマイクパフォーマンスの盛り上がり。
どのスポーツにも格闘技にもなんの興味もなかった(別に今もない)わたしの心をなぜか一瞬にしてさらっていった。
なかでもわたしが大ファンになったのは、現在アメリカで活躍中の中邑真輔選手だ。
ヒゲにパーマのロングヘア、色気のある衣装に長い脚、独特の動き…
月並みすぎる言葉だがめちゃくちゃかっこよかった。
それはもうめちゃくちゃに。
滑舌が悪くてマイクパフォーマンスで半分ぐらい何て言っとるかわからんところもまた最高に良い。(悪口ではない)
マニア気質で好きになるととことんな性分なので、その当時は女性ファン向けの雑誌やらネット記事やらを読み漁った。
その当時「プ女子」というプロレスファンの女性を指す言葉が出てきたぐらいの頃だったと思うので、そういう情報源には事欠かなかった。
選手のプロフィールや必殺技から好きな食べ物に至るまで微に入り細に入り…
それまでのプロレスをまったく知らない女性ファンでもわかるように、アイドル雑誌顔負けにわかりやすく楽しく書いてくれている。
THE・にわかファン!!!!!
昔のストロングスタイルなプロレス時代からのファンの方々からすると、わたしみたいなのがプロレス好きですーとぺろっと言うことすら許されない程度のやつです。
ごめんなさい、でもわたしも今のプロレスが好きなんだもの。
中邑真輔、棚橋弘至、オカダ・カズチカあたりは見た目もかっこよくて華やかで、昔のプロレスのイメージとはまた違う新しい時代のプロレスを支えてきたトップ選手たちである。
このへんの選手たちは新日本プロレスの人気復活の立役者だそうで、そのスター性と高い身体能力でわたしのような何も知らない人たちをも見事にプロレスワールドに取り込んだのだ。
中邑真輔が新日を退団してアメリカに行ってからしばらくはあまり試合を見なくなってしまったが、SNSだけはずっと追っていた。
その後しばらくして、中邑真輔と棚橋弘至が久々の再会を報告したインスタで、私服姿の2人が笑顔で並んでいる写真を見て、胸が熱くなり泣いた。
我ながら気持ち悪い。
…でもほら、ちょっと見てみたくなってきたでしょ?
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G1クライマックス決勝戦が見たすぎて、そろそろ今日の動画があがったかなと待ちきれず仕事帰りの電車でいそいそとサブスクサイトを開いた。
するとなんとちょうど決勝戦が終わった時間でまだライブ配信が終わっておらず、しかもどっちが勝ったかが明らかにわかってしまう瞬間を目にしてしまった。
うっかりすぎる失態である。
プロレスに対する前のめりな姿勢が招いた悲劇…
でもどっちも好きやけんどっちが勝ってもいい!!
というかプロレスは!
勝ち負けとかじゃないんだ!!
とポンコツな自分を鼓舞し、改めて試合を見ようと家路を急いだのである。
ウィル・オスプレイとオカダ・カズチカの試合は決勝戦にふさわしく素晴らしかった。
2人とも身体能力が異様に高く、見ていて飽きのこないドラマチックな試合展開である。
その日の放送席実況ゲストは蝶野と棚橋というこれもまたスペシャルな顔ぶれであった。
その夜は興奮で肌の調子が良くなった。
プロレスラーにはどんどん宙を舞ってほしい。
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そしてこの元日に奇跡が起こった。
ノアのイベントで、グレートムタ対中邑真輔という信じられないようなシングルマッチが行われたのである。
中邑真輔の日本の団体での試合がまた見られる日がくるとは…!
あとで知ったのだが、WWEが他団体に選手を出場させるのは異例のことらしい。
ご本人も会見で語っていたが、控えめに言っても本当に奇跡である。
リアルタイムでは見られなかったのだが、数日後にAbemaで録画を見られた。
開催から実際に見るまでの間、G1と同じ轍は踏むまいとなんとかネットの関連記事を遮断し、結果がわからないように頑張った。
これからご覧になる方もいらっしゃるかもしれないので内容や結果についてはくわしくは語りませんが、最高の試合でした。
1人でも多くの人にあの奇跡を目撃してほしい!!
グレートムタを「僕のアイドルだった」と表現した中邑真輔の衣装はムタへのリスペクトが垣間見えるもので、それだけでも想いがひしひしと伝わり鳥肌だった。そしていつでも色気がすごい。
入場から試合運び、決まり方、終了後のインタビューまで、月並みな言葉ではあるが本当に最高だった。
誤解をおそれず言うのであれば、とにかく最初から最後まで最高のエンターテイメントだった。
興奮しすぎて呼吸が乱れた。
はずかしながらグレートムタの試合を見たのは初めてで、歴史を知らないわたしのような新参者のファンもあっという間に引き込むような世界観がどちらにもあった。
あんな真輔、見たことなかった!
最後のインタビューでの涙は込み上げるものがあった。
相変わらず滑舌は悪かった。
そこがまた良い。
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スポーツのなんたるかを知らない(というか興味がない)わたしがなぜこんなにプロレスに心惹かれるのかを考えてみた。
それはたぶん、そこにストーリーがあるからなんだと思う。
ただ単に闘うだけではない、選手それぞれの世界観があって、歴史があって、関係があって、そこにまつわるドラマがある。
それが見える入場パフォーマンスや試合後のマイクパフォーマンスに魅せられて、またその選手が好きになる。
かと言ってもちろん闘いをおろそかにはしない。
本気のぶつかり合いである。
プロレスは一回相手の技を受け止めてから攻撃する、その懐の深さに震える。
空中戦が大好物のわたしがなんだかんだいちばん心奪われるのはエルボーの応酬ですから。
この一戦のために選手たちがどれだけのトレーニングを積んできたのかと想像すると涙が出そうになる。
努力した者だけが見られる景色があることをみんな知っている。
どんな世界でも、本気でやっている人たちはみんな美しい。
かの中邑真輔はかつてこう言った。
「一番すげえのは、プロレスなんだよ!」と。
えらいでも強いでもない、すげえのは、というのが、他の選手たちへのリスペクトも感じる素晴らしい言葉のチョイスである。
また日本で中邑真輔の試合を見たい。
お願い、また帰ってきて真輔!
あの長い脚とイヤァオ!をいつか生で見られる日を楽しみに生きていこうと思う。
見る人をこんなにも興奮させられるプロレスって、やっぱすげえんですよ!
今年は試合を見に行きたい。
こんなに熱く語ったのに、生で試合を見たことが実は一度もない、まさににわかファン。
でも生で見たことないのにこんなに語れるって逆にすごくないですか?
大好きです、プロレス。
それは本当です。