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【序1-1/3後半】 陽香漂う倭國

陽香ロマンただよ倭國わこく

民族の大移動

1 國長の悔恨 (前半)
2 北方民族  匈奴の分裂
3 奴國と好古都國
1 國長の悔恨(後半)

國長の悔恨 (後半)

奴國はトウの祖父の時代。
西に早良さわらという平和で小さなクニがあった。しかし、奴國の侵略に三日と持たず従属させられてしまった。
民は逃げ惑うなか子は親とはぐれ妻は主とはぐれ、乳飲み子だろうがわらべ、女子おなご、年寄りの区別もなく皆家族とも散りぢりとなり戦乱の露と消えてしまった。
運良くと言えるだろうか捕らえられた者でも五体満足ではなく男女の区別もつかずドロドロの格好のまま奴隷として大陸に送られた。

父親シンがまだ幼い頃、シン(十歳)と祖父エト(四十歳)も傷を負いながらもここ早良から大陸へ送られた。
船内は薄暗く乗り込む時からシン親子は離れ離れになった。
船内の衛生は酷かった。
しかし、大陸の船着場はもっと酷かった。
上陸する桟橋などはなく、船から浜までは腰上まで波に浸かる海面に落とされる。
生き残るだけの力がなければ容赦なく海の藻屑となる、それが奴隷の扱い。
シンの父エトは荒波に足を取られ憔悴しきったその体は波に沈んだ。
船内で父の消息がつかめず迷子で不安な時でも隣にいたソアラ(二十二歳)青年に励まされ幼いシンは波を頭から被りながらもなんとか陸地までたどり着いた。
傍についていたソアラの助けがあったことは言うまでもないがシンの片手には何故かヒョウタンが強く握られていた。

戦乱の犠牲は常に民である。
大陸の民たちも戦乱を避けるように僻地に追われ隠れ住む。
大陸の子供でパク(十歳)が仲間と川で遊んでいた時にドロと垢まみれのシンと出会う。
子供らの絆が不思議にもシンの父子おやこのめぐり合わせを叶える。 実はパクの父親は奴隷船の周りを漂う物をあさっては金や食料にするため、その日も船着場に来ていた。
ちょうど目の前で海中に沈み込む奴隷(エト)を見つけたので仲間と共に引き揚げ、家で介抱していたということだった。
その後、成長とともにパクとシンの絆も深められていく。
ソアラは上陸時、岩場で転倒した際に右手の小指と薬指をなくしてしまった。ソアラは傷が癒えるまで横になっていたが高熱が続き苦しむなかでも、幼きシンの働きにより辛うじて命をつなぐ事が出来た。
やがて元気になったソアラは大陸に根を下ろす倭国の商団員となり商いと文字を習得し、大陸の官吏役との外渉役を担うまでになっていた。
それは父エトが倭国との交渉役として権利をその商団から得られたのが大きな要因だった。

祖父エト、父シンは早良國を潰された。
激情を沈めてくれたあの日の夜、星々の運行と月の輝きに必ず再興すると誓った。

平和だけでは護れない。
いや、強く、備え、なければ永く平和を享受出来ない、と胸に固く刻んだ。
財力も。戦力も。そして、何より情報収集の力、団結の力を得るため知恵と心血を注いだ。

序2 文化ちからの交流
に、次の再興への詳細、展開を譲ることにする。

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