見出し画像

皇室オタクが皇位継承問題について真剣に考えてみた

初めに

前提として、僕は皇室がとても好きだ。皇室を擁していることが、日本という国のひとつのアイデンティティだと思ってる。(なぜわざわざこんなことを書いているかというと、この記事に書いたのと似たようなことをTwitterでチラッと書いたら、前後の文脈を見ずに皇室大好きな人たちからボロクソに叩かれ「皇室の滅亡を願う非国民」扱いされたことがあるからw)
好きだからこそ、今の皇位継承問題には思う所が色々とある。
僕個人としては、皇位を女性にも開くことが将来の安定的な継承に結び付くし、いらん混乱も起きないと思っているけど、実際にはそんなに一筋縄ではいかなさそうである。
ところが、ネットの書き込みなんかを見ていると、僕と同じ考えを持っている人でもそうでない人でも、さすがに色々なことを誤解して話していることがあるような気がしていて、「いやそれはどうなの?」と思うことも多い。
この記事では、そうした誤解を少しでも解きつつ、海外の例も示しながら、真剣に皇位継承問題を考えてみようと思う。

なお、この記事では実際の皇族の名前を挙げながら書いていくので、時に不謹慎、不敬ともとられかねない表現もあるかもしれない。とりわけ、人の結婚・出産という極めてプライベートな事情に口をはさむことになるが、全てが仮定の話であり、「こうなってほしい」「こうあるべきだ」という主張ではないことをご容赦いただきたい。

一番大事なのは、今いらっしゃる若い皇族方が、安心して学んだり生活していける環境を作り、皇室が長く続くようにすることだと思っている。

現状

現在、皇室には未婚の男女が6人いらっしゃる。
年齢順に彬子女王、瑤子女王、承子女王、佳子内親王、愛子内親王、そして悠仁親王。
このうち、皇位継承権を持っているのは悠仁親王ただお1人だけだ。

ちなみに、日本の皇室において「女王」とは、一番近い直系の天皇のひ孫以下に当たる人の身位であって、決して"Queen"のことではない。英訳はPrincessである。彬子女王、瑤子女王、承子女王の3人は、直系の天皇が大正天皇にあたるので、女王である。この3方に男性の兄弟がいれば、その方は「王」である。
秋篠宮の悠仁親王は男系の直系尊属の一番近い天皇である今の上皇から見て孫だけれど、彼がこのまま秋篠宮家を継ぎ、子供が生まれたら、その子は上皇のひ孫にあたるので「王」または「女王」になる。彼の父秋篠宮が天皇になれば、悠仁親王の子は「天皇の孫」の立場になるので「親王」を名乗ることになる。

また、この中で天皇の娘である愛子内親王にのみ「ご称号」が存在する。愛子内親王のご称号は「敬宮」である。
他の方々は、宮家の当主である父親や祖父が「宮号」を持っており、自身の称号は持っていない。例えば、佳子内親王は、父親の秋篠宮文仁親王が持つ宮号を添えて「秋篠宮家の佳子内親王」などと呼ばれたりする。秋篠宮文仁親王自身は、「礼宮」というご称号を持っているが、成人して独立した際に(一般で言う『分家を立てる』みたいなこと)「秋篠宮」という宮号を賜った。
愛子内親王は父親が天皇であり宮号を持たないので、「敬宮」という自分だけのご称号を持っている。女性の場合、通常は結婚によって皇籍を離れ、夫の姓を名乗ることになる。

日本の皇位継承法に当たる皇室典範では、皇位を継承できるのは天皇の男系の男子のみだ。
時々、愛子内親王が天皇になってほしいあまり「愛子さまは女性だけど男系だから皇位を継承できる。愛子さまが旧皇族の誰かと結婚すればいい」と主張している人がいるけれど、現行法では愛子内親王に継承権はない。
そして現行法では旧皇族はすでに一般人なので、愛子内親王が旧皇族と結婚したとしても「竹田愛子さん」なり「賀陽愛子さん」なりになるだけでその子にも継承権は発生しない。(旧皇族を皇族に復帰させる案もあるけど、これはとりあえず置いておく)

現状では唯一の次世代皇位継承者である悠仁親王の結婚は大変だ。妃殿下には現在の皇后が受けた皇太子妃時代にプレッシャーとは比べ物にならないプレッシャーがかかることは予想に難くない。
10-20年後、今とは全く違っているであろう時代に、まだ「必ず男を生まねば」というプレッシャーを全国民からかけられる妃殿下の気持ちが、今から偲ばれるというものである。
これでうまいこと男の子ができれば、「ああよかったね」でギリギリ皇位継承問題は次代に持ち越され、時代は繰り返される。
女の子しか生まれない、子供が生まれない、そもそも悠仁親王の結婚が遅れに遅れる、などの場合、今話してるのと同じ問題がもっと喫緊の課題として眼前に現れる。そしてその段階でできることはもはやほとんどない。

現存する宮家もすべて次世代は女性しかいないため、最悪の場合、日本の皇室は、静かにゆっくりとその歴史を閉じるしかないのである。

女性天皇 女系天皇

皇位継承問題が話題になるときに、「女性天皇と女系天皇の違いもわからないまま議論に参加してる人がいる!」と怒られることがあるので、一応触れておこう。
現在の皇室典範では認められていないが、日本には歴史上8人10代の女性天皇がいる。
「歴史上前例のない事ではないのだから、女性が天皇に即位してもいいじゃないか」というのである。
前例があるからOKかといえば決してそうではない。
日本の天皇はこれまで、全て男系でつながってきている。歴史上のあらゆる天皇の父親をたどれば、必ず別の天皇に行きつくし、さらに父親をたどれば、ひいては初代天皇である神武天皇に行きつくというのが、「男系」ということだ。
「天皇家は男系でつながってきたことにこそ意味がある」と思っている人たちは、これからも男系での継承を維持したいと思っている。

王朝交代?

僕の考えとしては、今の時代「男系」にこだわらなくとも、皇室の権威は揺るがないと思っている。すでに世界でこれほど長く続いている世襲君主の家系は他には存在しないのだから、もう「存在している」というだけでびっくりなんじゃないのか。
また、世界のほとんどの王室が、男子のみ、男子優先の継承だったものを、近年になって男女関わらず長子優先の継承に変えていることも、世界のトレンドという点では見逃せない。
欧州を中心として、他の王室がどうしているのかは後でまとめようと思う。

たまに「神武天皇のY染色体が…」と、皇位継承に染色体の話を持ち出す人がいる。
しかし、皇位の本質は決して染色体ではないはずだ。そうであるなら、神武天皇と同じY染色体をもつ日本中の男性に皇位継承権を与えないとおかしなことになってしまう。
まして、これは少し不謹慎な話になるけれど、今の天皇が本当に神武天皇と同じY染色体を持っているかどうかなんてわからないし、それは証明のしようもないことだ。
Y染色体を継承することよりも、三種の神器を継承することの方が重要なんじゃないの?と素朴に思ってしまう。

「女系の天皇が即位すると、日本の皇室では一度も起っていない『王朝の交代』が起こってしまう」という人がいる。
それこそ、海外の例を少し見てみたい。
英国のヴィクトリア女王は歴史上、最後のハノーヴァー王朝の君主である。彼女はドイツのザクセン=コーブルク=ザールフェルト公エルンストの次男アルバートと結婚したことにより、英国王室の家名は「サクス=コバーグ・アンド・ゴータ家」となり、息子のエドワード7世は「サクス=コバーグ・アンド・ゴータ朝」の初代国王になった。これが王朝の交代というものである。なお現在のチャールズ3世も同じ家系だけど、第一次世界大戦中に英国風の「ウィンザー朝」に改称された。
おなじように日本でもし、女性皇族が一般人男性――仮に『佐藤さん』としよう――と結婚してその子が天皇に即位したら、「佐藤朝」になってしまう、という主張である。
まあ、分かるんだけど…。
結婚したのがその家の女であったというだけげ、1000年も続いた「姓のない家系」の名前が変わる?そんな事ある?

実は、英国のヴィクトリア女王の時と同じことがエリザベス2世にも起こった。彼女はギリシャ及びデンマーク王子であるフィリップ・マウントバッテンと結婚し、エリザベス女王の直系子孫は「マウントバッテン・ウィンザー」を名乗ることになった。しかし今回、王朝名としては「ウィンザー朝」のまま変わりがないことが決定している。

オランダ王室は、先代のベアトリクス女王まで3代女王が続いている。いずれもドイツの貴族と結婚したが、3代続いて王朝名は「オラニエ=ナッサウ朝」のままだし、家名も変わっていない。今のヴィレムアレクサンダー国王の次も女王が即位する予定だけれど、オラニエ=ナッサウ朝の名前が変わることはないだろう。

スウェーデン王室は、現在の皇太子がヴィクトリア王女で、夫は民間出身のダニエル・ヴェストリングス氏だ。彼は王女と結婚するにあたり、ヴェステルイェートランド公爵の称号を得たが、ヴィクトリア王女が結婚してもベルナドッテ朝がヴェストリングス朝に変わることはないだろう。

おそらく、ヴィクトリア女王の夫アルバートの実家であるザクセン=コーブルク=ゴータ公家はドイツ帝国の構成国であり、両家の関係上、どんな話し合いが行われたかはわからないけれど、いわば戦略的に家名を王朝名に組み込んだんだと思う。エリザベス2世の夫フィリップの家名が王朝名に入らなかったのも、いわばそういう「大人の事情」があったんじゃないかな。

デンマーク王室では、マルグレーテ2世の夫ヘンリク王配が持っていた「モンペザ伯爵」の称号を、女王の男系子孫に儀礼的に名乗らせている。こんな風に、外から入ってきた家名や称号を儀礼的に使う例はたくさんあるけれど、一般人の苗字は普通はそこまでして残したりはしない。

21世紀は女王の時代だ。
欧州の君主国で女王が即位する見込みになっている。オランダ、ベルギー、スペイン、ノルウェー、スウェーデン…(王室ウォッチャーとしては、ノルウェースウェーデンオランダのチーム北欧女王sがアツい!)
彼らがこの先、王朝名を変更するとは思えず、同じようなロジックは日本の皇室に当てはめてもいいんじゃないかと思う。
日本の一般人の家だって、娘しかいないお金持ちの家が婿を取って家名を守るなんてことは昔からざらに行われているのだから、それで即「王朝が交代してしまう」「皇室は日本で唯一苗字のない家系なのに」というのはちょっと早計な感じがしてしまう。

法改正

皇室典範を改正して、女性にも皇位を開くとする場合、ザックリ2つの選択肢が考えられる。

  1. きょうだい間では男子優先とする

  2. 性別にかかわらず長子優先とする

1の場合、これはエリザベス2世が即位したころの英国の王位継承法と同じで、きょうだいに男性がうまれなければそのまま姉が王位を継ぐことになる。途中で弟が生まれた場合は、そちらが優先される。この場合、女性の長子は常に「暫定一位」の立場にあり、常に弟が生まれる可能性が考慮されることになる。例えばエリザベス2世は、父親が即位しても「皇太子」を名乗ることはなく、称号としては「イングランド王女」か、結婚後は「エディンバラ公爵夫人」を名乗っていた。

2の場合はもっと単純だ。スウェーデンのエステル王女は、スウェーデンでは初めて、生まれながらにして将来即位することが決まっている女性の王位継承者である。

女性にも皇位継承権を与えるとなると、問題なのは結婚相手の男性の扱い、そしてその子の扱いだろう。一般人と結婚したら夫の男性は現在の妃殿下方と同じように皇族になる?妻と子だけが皇族で、夫は皇族ではないことにする?その場合住居はどうなる?

女性も皇位継承できることになるとなると、当然女性の宮家も創設されることになる。現存する三笠宮、高円宮家は女性しか継げる人がいないので、もれなく女性宮家になるだろう。

秋篠宮家は、男子優先パターンなら愛子内親王が天皇に即位し、秋篠宮家は悠仁親王が継承、佳子内親王が新宮家創立(または結婚とともに臣籍降下)の流れだ。長子優先パターンなら、佳子内親王が秋篠宮家を継ぎ、悠仁親王が新宮家創立かな。
そうなると小室眞子さんと佳子内親王とで結婚後の待遇に差が出ることになるし、そもそも結婚したら家を出て行くつもりで育てられたはずの眞子内親王の心中やいかに、ということになる。
今いる内親王、女王方は結婚と同時に皇籍を離れるか残るか選べるようにする、としたとして、では愛子内親王の扱いは…?と、いずれにしても不均衡が生じてしまう。

さらに、現行の皇室典範にも、過去にも、皇室に非皇族の男性が入ってくることはなかったので、その人の扱い、称号や敬称などをどうするかは議論がありそうだ。場合によっては、新しい称号などを作る必要がある。
女性に皇位を開く場合、このように今までになかった皇族の在り方を考えなくてはならないことになる。果たして、女性皇族の夫として民間から皇室入りした男性を、国民は「皇族」と認めることができるだろうか?

個人の資質?

こういう話をすると、必ず出てくるのが小室圭氏の話だ。小室氏本人がどうこう、という話はここではしないけれど、当時、「女性宮家創設で小室圭のような人が皇室に入って来られると困る」というのが大方の世論のようだった。僕は小室氏自身が特段ヤバいとは思わないけど(ヤバいのは母親)、まあヤバい人に皇族になられるのは困る、というのはわかる。

しかしそれって、リスクとしては現行法でも、「男性皇族とヤバい女が結婚して、ヤバい女が妃殿下と呼ばれる」というリスクもあるわけで、こっちは無視できるのにそっちは絶対に受け入れられない、というのが僕にはあまりよくわからない。

「そんな人を夫に選んでしまった小室眞子さん」にもかなり批判の声が高まっていて、その上返す刀で「愛子さまは聡明で素晴らしい、彼女こそ天皇になるべき」という論調もある。

しかし果たして、皇族(そして天皇)にいわゆる学級委員長的な「品行方正さ」を求めるのは正解なんだろうか。

天皇というものは、現状では皇室典範によって、すなわち法律によって継承順位が決まっている。もちろん、時勢に鑑みて柔軟に法律を変えていくのもひとつだと思うし、古くからの伝統を守り抜くのもひとつの考えだと思う。

しかし、「特定個人に継承させるために法律を改正する」というのはどうなのだろうか。ここ数年では、愛子内親王が大人気で、彼女を天皇に据えるべきだという世論も高まってきている。僕も正直それがいいと思う。

しかし、本来はそれを彼女が生まれる前に決めておくべきだった。正直、すべてが遅すぎるのである。

全ては法律によってあらかじめ決められているべきだ。でないと昔のように、兄弟間で皇位を争ったりして混乱が出てしまう。

皇位継承は人気投票じゃないのだ。

いまは愛子内親王がとても人気だけど、いつ世論が移り変わるか分からない。(実際、彼女は小学生時代に不登校気味だった時期があり、そのころは皇太子妃(当時)とともにかなり叩かれていた)
いま「愛子さまを天皇に」と言っている人たちは、この先彼女に何かあった時に、それでも同じ事を言えるのだろうか。

実際のところ…

もう1つ思っているのは、仮に今日、皇室典範を改正したとして、それは愛子内親王、悠仁親王に適用できるのかどうか、ということだ。この辺り、法律に詳しい人の話を聞いてみたい。

普通こういうのって、「法律改正以降に生まれた人」に適用されてる気がする。ましてや、次の天皇が誰になるのかが変わってしまう大きな変更だ。

例えば英国では、2013年に男子優先から長子優先の継承順に変わる法改正がなされたので、シャーロット王女は弟のルイ王子よりも継承順が上だ。しかし、その効力は「2011年10月28日以降に誕生する王位継承資格者とその子孫」に対してのみ有効なので、例えばアン王女は今でも弟のエドワード王子より継承順位が低い。

1979年、スウェーデン王位継承順位を男子優先から長子優先とする法改正を行った。法が施行されたのは1980年1月1日。ヨーロッパの王室では初めてのことだったそうだ。この時スウェーデンには、2歳の姉ヴィクトリア王女とまだ生後7か月の弟カール・フィリップ王子がいたが、この時を境に継承順位が入れ替わっている。出生後の法改正で次の王位継承者が変わった例は、僕の知る限りではこの時だけだ。ほかにもあるかな?いずれにしても、2人ともまだ小さかったからできたことで、おそらくカール・フィリップ王子誕生前から調整が進められてたんだと思う。

いま、20歳を過ぎて社会人となった愛子内親王を天皇にするための法改正、というのは、後出しじゃんけんのような感じで奇妙に感じる。まして、次代、次々代の皇位継承者が決定している状況である。悠仁親王の継承順位を下げて、愛子内親王の継承順位を上げる法改正をいま行うのは、色んな意味で危険だと思ってしまう。

旧宮家男子の皇籍復帰

戦後、伏見宮家とその支流合わせて11の宮家50人余りが、皇籍を外れて民間人となった。伏見宮、閑院宮、山階宮、北白川宮、梨本宮、久邇宮、賀陽宮、東伏見宮、朝香宮、東久邇宮、竹田宮の11宮家である。これ以外の宮家はすべて大正天皇の直系に当たるため、皇籍離脱を免れた。要するに「本家からみて遠い親戚」をグループから外した、みたいな感じだ。現在の皇族とこの伏見宮系の宮家とは、父系では霊元天皇まで遡らなければ共通祖先に出会わない。だいぶ遠い親戚だな。

この「旧皇族」の男系の子孫を、現在の皇室に養子に迎える案がある。現在の皇室典範は養子の受け入れを認めていないので、これも法改正が前提の案である。

個人的には、この案が一番ないと思っている。まさか、旧宮家の末裔男性を天皇家に養子に入れ、この人を天皇に即位させるわけではあるまい。それなら悠仁親王を天皇家の養子とした方がまだ現実的である。
となると、現存する宮家に養子に迎えるか、新たな宮家を作ってもらうことになるだろう。果たして、国民感情としてこの人を皇族として認められるだろうか?

旧宮家といっても、戦後の環境はさまざまで、中には怪しげな事業に手を出して破産したり詐欺に遭った人もいるし、逮捕者もいる。残念ながら、決して品行方正な生活をしている人ばかりではない。そうでなかったとしても、小室圭氏の時にあれほど騒がれたのだから、この養子に迎えられた旧宮家末裔男性がマスコミや世間からどんな扱いを受けるのかは大体想像がつくだろう。逆に旧宮家末裔でなくとも、高円宮の絢子女王と結婚した守谷慧氏のような、「絵に描いたようなエリートのご子息」なんていくらでもいるものだ。

それに、旧宮家男性を皇室に迎え入れたところで、冒頭に述べた「将来的に唯一の皇位継承者となる悠仁親王が結婚した時に、その妻にかかる心理的負担は雅子さまとは比べ物にならない」ということは変わらない。旧宮家男性は、何のために皇籍に復帰するのだろうか?

何より、旧宮家はあまりにも天皇家から遠すぎる。先に述べた通り、戦後に臣籍降下した宮家の家系はすべて伏見宮邦家親王の子孫であるが、この伏見宮家は南北朝時代、崇光天皇の皇子栄仁親王から始まっている。全くの他人ではないにしても、700年近く前に本家から分かれた家の子孫を、いま本家に養子として迎えるって、庶民の感覚ではさすがにちょっと受け入れがたいものがあるのではないか。そういう人を、ある日から急に皇族として迎え入れ、国民全体でその人とその子孫を皇族として扱うことはできるのだろうか?

ではどうするべきなのか?

ここまでいろいろ書いてきたが、では現状の皇位継承問題についてはどうするのがいいのだろうか?
以下にいくつか考えてみたが、結局のところどれもうまくはいかない予感がする。この議論は、本当は令和に持ち越すべきではなかったのだ。

1. 法改正し、女性にも皇位を開いた上で、愛子内親王とその子孫が天皇になる

「皇位の安定的な継承」という意味では、これが一番いいと思う。しかし、上でも述べた通り、もう20歳も過ぎた愛子内親王に、いきなり皇太子になれというのも、全てが遅きに失している感がある。今さらのことになってしまうが、愛子内親王が生まれる前に、女性も皇位につけるような法改正を思い切って行うべきだったと思う。
また、「皇室に入った民間出身の男性」の扱いをどうするかは議論の余地がありそうである。

2. このまま何もせず、秋篠宮文仁親王→悠仁親王の順で男系男子に皇位を継承する

「皇位の安定的な継承」という点では何ひとつ解決しないが、うまいこと悠仁親王が結婚して男の子を産めば、当面の問題は解消される。現状、あと2代の皇位継承者が存命であるというのは、心強いと言えば心強いが、20年後、悠仁親王が結婚し、子供が…となった時に全く同じ問題が起こることは確実で、その時には皇室にはおそらく悠仁親王しかいない状態で、もうできることは何もなくなってしまう。

3. 法改正して女性に皇位を継がせ、愛子内親王には旧宮家末裔男性と結婚していただき、男系を守りつつ次代に引き継ぐ

残酷すぎる。
また、これをすると、愛子内親王に娘しかできなかった場合、やはり旧宮家から婿を取るのどうのとなり、同じ問題が繰り返されることになる。
「男系男子と結婚するならば法改正をしなくても女性の愛子さまは天皇になれる」というような理解をしている人もいるようだが、上でも書いた通り、結婚相手によって皇位継承権が発生するはずもなく、現状のままでは旧宮家末裔男性と結婚した愛子内親王は、旧宮家の民間家庭に嫁ぐのと同じ扱いである。

4. 悠仁親王を天皇家の養子とし、皇太子とする

継承問題はひとつも解決しないが、将来天皇になることを見据えた特別な教育のために。なお、皇室は現在養子を認めていないので、これも法改正が必要になる。
これをするならやはりもっと早い方が良かった。

5.他には…?

他にできることがもう何も浮かばない…orz
なにかありますか?

まとめ

そもそも、「将来の皇位継承が不安定になる」というのは、それこそ昭和の頃からわかっていたことで、側室制度が消えた今、「安定的に、常に必ず男の子が生まれる」保障などどこにもないのに、この事に関する議論をずっと避けてきた政府が本当に良くない。
皇族は、自分自身で自分たちの家のことを決めることができないにもかかわらず、誰一人として真面目に皇室の将来について考えたり議論した人がいないというのが、もう本当に悔しいのである。

今からでも遅くないので、皇室の将来のことを真剣に考えてほしい。

いいなと思ったら応援しよう!