アライとは? ~LGBT当事者インタビュー。ゲイの実生活と私たちができること~
こんにちは、セプテーニグループnote編集部です。
セプテーニグループでは、CSR活動の重点テーマの1つに「ダイバーシティ&インクルージョン」を掲げており、その一環として、グループ横断のLGBT&アライネットワーク「SEPALLY RAINBOW(セパライレインボー)」を組成し活動しています。
今回は、その「SEPALLY RAINBOW」で活動しているメンバーからの寄稿記事第2弾です!
▼第一回目の記事はこちら
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こんにちは!「SEPALLY RAINBOW」メンバーの岩瀬です。
今回は、私の大学時代からの友人で、LGBT当事者でもある林 康紀(はやしこうき)さんをゲストにお迎えし、インタビューを行いました!
インタビューでは実際の生活環境やアライへの考え方などを伺ってきたので、ぜひご覧ください!
■ゲスト
【プロフィール】
林 康紀(はやしこうき) 27歳 (写真右)
ゲイであることを大学のときにカミングアウト
アメリカ人の同性パートナーと2016年にご結婚
スタートアップのIT企業でディレクターとして勤務
■インタビュアー
【プロフィール】
岩瀬理香子(いわせりかこ)
セプテーニ・クロスゲート所属/SEPALLY RAINBOW 1期2期メンバー
■2人の出会いと、カミングアウトについて
ー最初に私たちが出会ったのは、サークルだったよね!
そうそう。
ライトな感じで仲良くなって、バーとかに遊び行ったりして。「飲み行こうよ!」っていうテンションが合った感じだったよね。
- 普通に仲良くなったよね。出会ってすぐにゲイであることをオープンにしていたけど、それまではどんな感じだったの?
元々、「なんか違うな」とは感じてたんだよね。
中学生の時に女性と付き合ったことはあったけど、高校大学と進んでいく中で、よくよく考えてみると「好きなのは女性じゃないな」と思うようになって。
ー 自分がゲイだということは、いつ気づいたの?
たぶん気づいたのは、中高生くらいの時かな。ただ、幼稚園とか小学生の時点で「何かが違う」とは思っていた。
例えば、どちらかというと、女性の体ではなく男性の体が見たいと思っていた。だけど、それがどういう意味なのかはわかっていなかった。
だんだん小学生高学年くらいになっていって、”男性は女性が好き、女性は男性が好き”というのが普通なんだなと思って、中学では彼女を作ってみたりしたけど、手をつないでデートしても何も感じないし「なんか違うな」って思っていた。
彼女とは話してたり遊んでたりして楽しいけど、「これは恋愛感情なのか?」と。
そんな感じで小中学校時代を過ごして、その後『ゲイ』っていう単語を知って「それや!」ってなった。
ー それは普通に受け入れられたの?「なんでみんなと違うの?!」とかは思った?
知ったときは「自分はたぶんゲイなのかなー」って思った。実は、あまり覚えてないんだけど(笑)。
どうなんだろうな・・・でも周りには秘密にしてたんだよね。秘密にしたってことは、あまり良いことだとは思ってなかったのかもしれない。
ー 大学に入ったときは「僕、バイセクシュアルなんです」って言ってたよね。
大学入ってからは、人に言おうと思ってた。
なんか嫌だったんだよね。例えば友達とAV女優の話になるんだけど、全然わかんなくて。
本当に最初のほうは「僕、よくわかんないんだ」って言ってたけど「彼女いたの?」とかも聞かれるし、めんどくさいなって思ってしまった。
でも周りにゲイだということを言ったことがなかったから、言うのも怖いしなと思ってたこともあって、落としどころになったのが”バイセクシュアル”だった。
それで反応見てみようと。 その後、徐々に「バイセクシュアルって言ってたけどゲイかも」って言い始めて(笑)。
最初からゲイっていうのは勇気がなかったので、ステップを踏んだイメージかな。
ー 私や私の周りは「そうなんだ」くらいだったけど、変な反応されたことはあった?
ポジティブな意味でおもしろがってくれた。変わった人を賞賛する大学やサークルだったっていうのもあるかな(笑)。
「あいつバイセクシュアルらしいぜ!」「めっちゃおもしろいじゃん。」みたいな感じだった。
自分としては、こういう反応について全然嫌な思いはなくて、周りに言った第一歩目だったから「おもしろがってくれてありがとう」って気持ちだった。
ー それはアウティング(※)でもあると思うんだけど、大丈夫だったの?私たちはアライとして「アウティングは悪!」と聞いていたりするのだけど。
僕の場合は、自分で言い出したから、大学の中に広まるのは大丈夫だった。
ただ、その時点で家族には言ってなかったので、もしそれが家族に広まってしまっていたらまたちょっと違っていたかもしれない。
家族には自分で言ったほうがいいだろうなと思っていたから。
※アウティング・・ ・本人の了解を得ずに、公にしていないセクシュアリティーを暴露する行動のこと。
ー 家族へのカミングアウトはそのタイミングではしなかったの?
家族へは大学卒業のタイミングで伝えた。
最悪のリスクで、家族に勘当された場合、大学卒業するまでのお金がなくなってしまうので、卒業する1ヶ月前くらいに言った。
母親は受け入れるのに少し時間は必要だったかな。ネガティブな感じではなかったけど、ポジティブでもなかった。今は受け入れてくれてる。
姉は「へー」みたいな軽い感じの反応だった。兄は前から知ってたみたいで、「気づいてたよ」って言われた。
兄は、高校のときに弟がゲイであることに気づいて、その時の先生に相談したんだって。
「弟がゲイみたいなんだけど、どう対応すればいいのかわからない」って。
そしたら先生が「特に何も聞かず見守って。本人が言ってくるのを待って。」って言ってくれたみたいで。
ー いい先生!!
いい先生だよね。いいアドバイスだなと思う。
ー 大学でカミングアウトして、それまでの友達には伝えたの?
仲の良い人には伝えた。大学でカミングアウトしてみて、言っても「大丈夫だ」って勇気が持てたので他の人にも言えた。最初に言った環境が良かったのは、あると思う。
最初に何か嫌なことを言われていたら変わっていたかもしれない。他のコミュニティでも「へー」って感じで受け入れてくれた。
ー そうなんだね。じゃあ、その最初の環境に私はいたことになるんだけど、私を”アライ”だと感じた瞬間ってある?
僕は、アライにもレベルがあるなと思っていて。
例えば初級アライが「ゲイなんだ、へー。」っていう受け入れることだとすると、中級アライは「一緒に遊びにいこう」とかもうちょっと行動を一緒にする感じ。
それが上級アライになると「一緒に戦う!」みたいなイメージかな!
こういうLGBTに関する活動をやっている人は本当に素晴らしいと思う。だから、アライだと感じた瞬間は今だね!
ー じゃあ私は上級アライなんだね!
本当にそう思う。
前に印象的な写真を見たんだけど、ある父親が、同性愛が違法だった時のアメリカでのプライドパレードで「私の息子がゲイです」っていうプラカードを持って歩いていたんだよね。
もしかしたら他の人に変な目で見られるかもしれないけど、自分の息子がゲイだからそのためにパレードを歩く、それが上級アライ。
これは、例えば障害を持っている友達とかとの関係も、きっと同じだなと思う。
■パートナーとの関係について
― 今は結婚してパートナーがいると思うのだけど、その経緯はどんな感じだったの?
最初の出会いはゲイクラブ。普通に話しかけたら「僕が君と話すべき理由を3つ挙げろ」って言われて(笑)。
「え?」って思いながらも3つ理由を言ったら「OK」って。
後から、なぜそんなことを言ったのかと聞いたら、日本にきて6年くらいたつけど、日本人は同じ質問をしてくるから、時間の無駄にならないようにおもしろい人かどうか先に聞きたかった、と。すごく合理的な人なんだよね。
そこから仲良くなって、半年後くらいに付き合い始めて2016年にアメリカで結婚した。
ー なんで結婚することになったの?
全然ロマンチックではないんだけど「うちら結婚したほうが良くない?」ってなった。
今後、他の国でも一緒に住みたいと思っている中で、付き合っている状態だと認めてくれる国とそうではない国があったりする。
例えば結婚しないうちはパートナーが病院に運ばれたとしても、僕には意志決定する権利はない。なので資産の問題とかも含め、法的に結婚したほうが良いんじゃないかと。
ー 家族の反応は?
家族へは結婚自体が事後報告だったので、そのことに母親は怒ってたね(笑)。
でも「あなたは昔から自分で決めたら絶対そう進める子だったから」って言ってくれて、いまはとても仲良し。
ー パートナー側も、家族にオープンだった?
オープンだった。ただ、彼の家族がクリスチャンだったので、僕よりも彼のほうが家族との関係は難しかったかな。
ー それは難しそうだね。LGBTの捉え方は国籍ではなく人によるって感じ?
うん、人とか宗教による。でも海外の人のほうがファイティングスピリットがあるかな。
アメリカとかイギリスの人は、「カミングアウトしないと生きていけない!」ってオープンにしている人も多い。でも一方で、批判も直接的で激しい部分もある。
― 普段パートナーとはどんな関係で、どんな暮らしをしてる?
本当に普通。男女の夫婦と全然変わらないと思う。5:5で役割分担している。
”自分がやった家事はアピールする”っていう、ルールを作ったりしてる。言わないと相手は気がつかないから。
ー 子供については何か考えている?
将来的にいたらいいなとは思うけど、経済的にも時間的にも難易度は高いなとは思ってる。
アイデアの1つとして持っているのは、彼の妹さんに代理母をお願いするということ。感情的なことは抜きにして彼のDNAを彼女は持っているので。
そんな話をしたりはするけど、難易度は高いので、まだ時間はかけようかなと。
育てられるかどうかもわからないので、まずは植物を育てられるか確認して、その次に猫、それで大丈夫だったら考えようかな、と思ってる(笑)。
いまは植物を育てているので、次は猫にチャレンジ。
■職場での働きやすさについて
ー 職場でもカミングアウトしていると思うんだけど、働きやすさはどう?
いまの職場は全然オープン。最初から「ゲイです」って言ったから全員知っていると思う。入社後に結婚したし。
基本的に嫌な思いをしたことはないんだけど、一度僕の知らないところで「ゲイは気持ち悪い」と誰かが言ったことがあったらしい。
それにCOOが気づいて、その言った人を個別に呼んで厳重注意をして、
さらに後日僕を呼んで「こういうことがあって厳重注意をしました。二度と起きないようにします。」って言ってくれて。それはすごく嬉しかった。
ー それは素晴らしい対応だね。
うん、マネージャーとしてはそうしたほうが良いと思う。言った本人は反省している様子だったと聞いたので、たぶんぽろっと言っちゃっただけなんだと思う。ただ、会社としてそういう考えは許さない、という姿勢が聞けて良かった。
■LGBTをとりまく環境について
ー 周りの環境とかについて思うことはある?
日本のゲイの人は、嫌な思いをしてきて隠している人も多い。
僕は「言えばいいじゃん!戦えよ!」って思うけど、そうじゃない人もいっぱいいる。うつ病になってしまう人もいるし、ひどく苦しんでいた友人もいる。
僕は、今は家族もいるし、もし「きもい」とか言われても「そんなこと言ってる君のほうがきもくない!?」って言えるけど、みんながそうではないよね。
― 世の中がどうなっていったらいいと思う?
法的な観点では、やっぱり同性婚ができないのは暮らしにくい。
意識の面でいうと、”受け入れる”から”応援する”とか行動を起こしてくれる人が増えると良い。上級アライがいっぱいいたら心強いよね。
ー 一方でLGBTの人の中には「ほっといてほしい」という声もあるけどどう?
うん、触れないでほしいという人も多いと思う。
でも、黙っているとみんな気づかないし、10・20年後の同じ境遇の人がまた苦しむのかと思うと、僕はもっと声を上げていきたいと思ったりする。
ー そもそも、そう感じないような社会になればいいよね、同性を好きであることが普通になれば、カミングアウトする必要もなくなる。
みんなが「そんなの当たり前じゃん」ってなると良い。
日本は異性愛を前提とした意識が強く、それが当然のように話すから、カミングアウトしてないと生活が送りにくい。
大学で社会学を勉強してたんだけど、社会学の歴史的には、”人間のセクシュアリティはグラデーション”というのが普通。
例えばゲイだからって、男性が100%好きという人が全員ではなくて、男性が80%好きだけど女性もちょっと好きっていう人もいる。
ストレート(※)の男性も100%女性が好きかっていうと、本質的にはそうじゃないこともある。
社会として異性愛が当然になっているので、すりこまれてそう思っているだけで、もし別の社会に生まれたら違うかもしれない。
ロンドンの調査結果で、若い層では50%位の人が「自分はストレートかどうかわからない」って答えたというデータがあって、おもしろいなと思った。ロンドンってセクシュアリティに関して先進的な雰囲気があるから、異性愛がすりこまれていなくてそういう結果が出たんだと思う。
※ストレート・・・異性愛を意味する呼び名。 同性愛(レズビアンやゲイ)、両性愛(バイセクシュアル)などに対応する言葉。
ー その社会の中にいると気づきにくいけど、前提になってしまっているものを知るのも大事なんだね。
今日は、学生時代の話から、パートナーとの話、職場でのことまでいろいろ聞かせてもらってありがとう。
とても楽しくリラックスしてインタビューを受けることができました。ありがとうございました。
今回のインタビューを通じて、少しでもLGBTや性別について考えるきっかけになれば良いなと思います!
※いち当事者としてのご意見であり、LGBT全体の意見を代表しているわけではありません。
※本記事は、過去にセプテーニグループ内で公開された記事を転載したものです。年齢、所属等は、掲載当時のものです。
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