20200822_蕎麦屋のタンメン、目を見てわかる

休みらしい休みの一日だった。
本当は8時に起きて9時にはスーパーへ行き、食材を買い込んで昼から料理をする予定だった。
実際8時には目が覚めた。しかしあまりにベッドと夫が私を恋しがるので10時半までダラダラと戯れてしまった。でもそれがいい。こうやって予定が狂っていくのが休日だ。

11時からスーパー近くの蕎麦屋がやっているぞと調べがついたところで、二人していそいそと起き出し、出発だ。先日揃いで買ったモンベルの日傘をさしたけれど、微妙な曇りでなんだか歯がゆい。日傘の良さを夫にドヤ顔で説こうと思ったのにな。

蕎麦屋には夫婦一組の先客がおり、料理を待っているようだった。我々はどっかりとテーブルに着き、「いっちゃいますか」「そうですね」という顔をしながら、瓶ビールと焼豚を注文した。なんて言ったって土曜日だから。アサヒかキリンか問われてアサヒを頼んだがはずが、堂々とキリンがきたけどそんなことはいいのである。

そう、この蕎麦屋には焼豚があるのだ。日本蕎麦屋と町中華が合体したようなお店で、鴨の塩焼きもあるし焼豚もある。控えめな冷え方のビールをちびちびやりながら待っていると、先客の料理があがってきた。タンメンと生姜焼きだ。思わず夫と顔を見合わせる。

それは、私以外にもこの店のタンメンを愛する人がいたのか、という驚きだ。この店には3回ほどしかまだ来ていないのだけれど、実は私はタンメンしか頼んだことがない。もとは夫が見つけた店で、ネットでメニューを見てピンと来たのだ。ここはタンメンの店だ、と。そしてその期待通り、素晴らしいタンメンが出てきたものだから、それから私はこの店のとりこなのである。

半分くらい大瓶を開けたところで、我々の焼豚もあがってきた。みっちりした厚切りのモモ焼豚が7枚、切りたてのキャベツの千切りの上に並んでいる。ちゃんとした中華皿だ。いよいよ蕎麦屋らしくない。
しっとりほろりとした食感に、ちょっと酸味のあるタレが旨い。ちゃんと仕込んである焼豚だ。

焼豚が最後の一切れになったところで、追加を注文。私はいつも通りタンメン、夫は炒飯とラーメンのセット。タンメンに炒飯、望めば広東麺だって五目そばだって食べられるんだこの店は。店構えは明らかに日本蕎麦屋のソレだから、きっとはじめは普通の蕎麦屋だったんだろう。それが常連の「野菜炒めとかも食べたいな」の一言をきっかけに、一念発起して中華鍋を購入。慣れない重たい鍋に四苦八苦しながら、インスタントのスープで適当に裏メニューとして出していた中華そばの改良にも着手する。美味しい焼豚の作り方を研究して、豚もも肉に行きついた。せっかく中華麺も仕入れるようになったのだからと、広東麺、五目そばにも手を出し、野菜炒めができるんだからタンメンもできるだろうと合体させたらあらこれが美味しいこと。いまでは蕎麦よりタンメンのほうが人気があるくらいだ。

という妄想が捗ったところで、料理が運ばれてきた。う~んこのラードの香りがたまりませんね。しゃっきりした野菜にもいい塩梅で塩気があり、ワシワシと食べられる。スープはたぶん化学調味料使っているけどやりすぎない感じ。味変用に酢とラー油がついているのも嬉しい。麺は今までは結構やわめだったのだが、今日はしこしことしたコシがあった!茹で時間変えたのかな?これからもこのくらいにしてほしい。麺は結構熟成された感じの食感だ。

夢中で食べていると、親子が入店してきて、座るなり大盛ざるとタンメンを注文した。我々はまたしても顔を見合わせた。3組の客が3組ともタンメンを頼むとは・・・やっぱりここの看板メニューはタンメンなのかな。嬉しくなった。

タンメンも残りあと4口くらい、というところになって突然お腹がいっぱいになった。ピンチ。何気なく夫を見ると、「今お腹いっぱいになったでしょ。3秒前にお前の目から光が失われたのを俺は見逃さなかったよ」と言われた。すごい。そういうのわかるものなんだ。夫は得意げである。残り4口はなんとか美味しく食べきり、少し涼んでから店を出た。いい昼飯だった。

夫の私の目を見抜く能力はスーパーでも発揮された。レジ待ちの間に一瞬見遣ったイカフライ、我慢しようと思って黙っていたら「まいけるイカフライ買わないの?欲しいでしょ。目が輝いてたよ」と言う。私がわかりやすいのか夫がすごいのか。どちらにしても夫が私のことをよく見ているのだと知って、もしかしてこの人私のこと好きなのかなと自惚れる。そうだったらいいな。

帰ったら汗がびちゃびちゃ。二人でシャワーを浴びる。冷たい水を急にかけられて心臓がヒュッとなる。これ、あと十数年後にやったらヤバイやつだよ、健康的に。

シャワーを浴びたらどっと疲れがでてきてしまった。プールの授業の後みたいなじんわりした疲れが指先まで染みる。これで昼寝したら最高に気持ちがいいだろうなぁ。だって今日は土曜だよ、と悪魔の声がささやいて二人してごろっと横たわり昼寝に突入。

起きたらすっかり夜だったけど、後悔はない。また一杯やって、早々に寝ちゃお。




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