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リーダーシップとパフォーマンスマネジメント:Week1 見る人の目に映るリーダーシップ

早いものでもう最終の夏学期になってしまった。これも非常に興味のあるリーダーシップのモジュール。今回は、暗黙的リーダー理論(Implicit Leadership Theories)が非常に面白かった。これは1兆ドルコーチの主人公ビル・キャンベルが言っていた(はずの)「リーダーは人が作る」を科学的に証明したものと言えそう。

<授業の内容>

【イントロ】

・リーダーシップ研究のアプローチには、古い順に
 -特性
 -行動
 -偶発
 -文脈
 -懐疑論
 -関係性
 -ニューリーダーシップ
 -インフォメーションプロセシング
 -生物/進化論
があり、近年では特性、文脈、ニューリーダーシップとインフォメーションプロセシングが盛ん。
・論文としては、変化のリーダーシップ、リーダーとメンバーの交流 Leader Member Exchange(LMX)が多い。
・リーダーシップの定義は様々あるが、有力なものは、「リーダーが強制することなく、モチベートし力を与えることで影響していく」こと(所感:人が着いてくる、という要素が必要では)
・マネジメントとの違い
 ーマネージャーは物事を正しく行い、リーダーは正しいことを行う
 ーマネジメントとは、リーダーが定めたビジョンと戦略を日々の問題を解決しながら実行すること
 ーマネージャーがリーダーになることも、リーダーがマネージャーになることも可能
・リーダーシップは賛美されすぎる傾向にあり、組織の成功がリーダーシップに起因するという偏見がある。
・国の成長にはリーダーシップが重要であるという研究がある。

【リーダー分類理論 Leader Categorisation Theory】

・どの個人も典型的なリーダーのタイプに関する概念を持っている。
・その概念は社会化するプロセスや過去の経験から形作られる。
・人々は最小限の努力でできるだけ多くの情報を得ようとするため、分類の枠組みを形成する。

【暗黙的リーダー理論 Implicit Leadership Theories (ILT)】

・ILTは、フォロワーがリーダーに期待する特徴や能力を元に、リーダーを分類する、という理論
・ILTにおいて、フォロワーがリーダーに求める特徴(これがあるとリーダーだと認める)には、感受性、知性、献身性、ダイナミズム、専制、男らしさ、がある。
・この特徴は1994年の調査結果だが、2014の調査では、創造性、というものが加わっていた。このことから、リーダーシップの特徴には普遍的なものと文脈に依存するものがあることがわかった。
・フォロワーの期待とリーダーの実態のギャップは、LMXにネガティブに影響する(相関係数0.55)。
・ILTと同様に、暗黙的フォロワー理論 Implicit Follower Theory (IFT)もある。

【文化的裏付けのある暗黙のリーダーシップ理論 Culturally Endorsed Implicit Leadership Theory (CLT)】

・GLOBE (Global Leadership and Organizational Behavior Effectiveness) Projectにて、以下6つの特徴をベースに研究されている。
 ーカリスマ性/価値観
 ーチーム指向
 ー参加型
 ー人間指向
 ー自律性
 ー自衛的
・Fortune500の企業のうち85%でグローバルマネジャーが必要なスキルを身に着けていないことがわかった。

(所感)ILTは肌感覚でわかり面白いコンセプトだと思った。人間関係における期待の現れ方の1つと言えそう。これをどう職場で活用するかはもう少し知りたい&考えたい。リーダーの実態とフォロワーの期待にギャップがある場合、リーダーを変えるのか、フォロワーの期待を変えるのか。この手の関係性の向上にはコーチングが使えそう。

<課題論文1>

なかなか面白い論文。リーダーシップのアイデンティティは社会的プロセス(認知)によって決まる、という話。リーダーとなる人は、リーダー的な振る舞いによりリーダーであることを請求し、フォロワーはリーダーに従う振る舞いによって、その請求を受け取る。これが繰り返されることで、リーダー、フォローワーのアイデンティティが、個人の中で内在化され、関係性として認識され、組織内で積み重なって集合的な認識となる、というステップを通じて、最終的にアイデンティティとして確立される。このプロセスは、階層的リーダーシップ構造(リーダーは1人)を持つ組織でも、共有的リーダーシップ構造(リーダーは複数いる)を持つ組織でも同じ。ただし、メンバーないでリーダーシップ構造に関する認識が異なる場合は、上手くこのプロセスが働かない。

Derue, D., & Ashford, S. (2010). Who will lead and who will follow? A social process of leadership identity construction in organizations. Academy of Management Review, 35(4), 627-647.

<課題論文2>

これもなかなか面白い論文。授業でも出てきたILTの要素についての論文。ILTの要素を1994年と2014年で比較したところ、2014年には創造性が現れた、という話。セミナーでディスカッションして確かに、と思ったのは、TyrranyやMasculinityが2014年でも残っていた、という点。

Offermann, L. R., & Coats, M. R. (2018). Implicit theories of leadership: Stability and change over two decades. The Leadership Quarterly, 29(4), 513-522.

<課題論文3>

リーダーシップを賛美し過ぎるというRomancing Leadershipの話。リーダーシップに原因を求める際の偏見、フォロワー中心のアプローチ、リーダーシップの社会的構築、という3つのテーマがあるらしい。

Bligh, M. C., Kohles, J. C., & Pillai, R. (2011). Romancing leadership: Past, present, and future. The Leadership Quarterly, 22(6), 1058-1077.

<課題論文4>

実社会におけるILTについてまとめた論文。ILT、IFTについての概論に始まり、測定方法(Leader Behavior Description Questionnaireなど)、変遷、などについて記載。

Epitropaki, O., Sy, T., Martin, R., Tram-Quon, S., & Topakas, A. (2013). Implicit leadership and followership theories “in the wild”: Taking stock of information-processing approaches to leadership and followership in organizational settings. The Leadership Quarterly, 24(6), 858-881.

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