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キャリア開発:Session5 発達的関係

Developmentは発達や開発、などと訳されるが、なんとなく違和感はある。英語だとDevelopmental Relationshipsというタイトルなのだが、良い訳が思いつかないので今回は発達的関係としておいた。

<授業での学び>

【メンタリング】
・メンタリングとは、より経験のある成人からより経験の少ない成人が仕事について学習の手助けを受ける関係のことであり、以下が含まれる。
 -心理的サポート
 -キャリア開発
 -ロールモデル
・メンタリングは、昇進、雇用可能性、収入の増加、幅広いキャリアの可能性、職務満足、キャリア満足に繋がる。

【Developmental Network】
・Developmental Networkとは、
 -キャリアを進展させるために成長のサポートを受ける人々の集合であり、職場の先輩、同僚、家族、コミュニティのメンバーが含まれる。
 -メンタリングよりも多様であり、乱れや移行に特徴づけられる新たなキャリア文脈の一部である。
 -キャリアを築く中でサポートを受け、発現するネットワークの中から、異なるタイプの関係を作る。
 -職場の中と外にある。
・Developerを持つ意味
 -職場外にDeveloperを持つことは、キャリアや人生の満足に関係する。
 -職場内にDeveloperを持つことは、給与、昇進、キャリアの満足に関係する。
 -これは、情報、リソース、視界、キャリアスポンサーシップによりアクセスできるようになることによる。
 -Developmental Relationshipにより、自主性、コンピテンシー、人とのつながり、を強化することができる。
・Developmental Networkの作り方
 -構造的欠陥の多いネットワークにいると、より多くの情報や力、視野を得る事ができる。構造的欠陥の多いネットワークにいると、より多くの情報や力、視野を得る事ができる。
 -ネットワークの多様性は、以下に依存する。
  ・異なる社会システムの数
  ・ネットワーク内の人がどれだけお互い繋がっているか
 -ネットワークの強さは以下に依存する。
  ・感情の濃さ
  ・成熟度
  ・コミュニケーションの頻度
・Developmental Network構造の結果
 -多様で強いネットワークは、情報と資源へのアクセスを増強する。
 -強いネットワークは、より影響のあるキャリア情報、学習に繋がる。
・ネットワークを最大化するには、以下のようにネットワークを作る。
 -組織の内外
 -上方向だけでなく、複数の階層
 -複数のネットワーク
 -自分が属する部門やグループのすぐ隣ではなく、それを超える
 -成熟と相互関係の上に築く
 -仕事の内と外両方について、キャリアと個人の課題に関係付ける
・仕事のアイデンティティは、他者との社会的交流の中で、作られ、展開され、変化させられる。
 -アイデンティティを作る実験
 -コネクションをシフトさせ、新たな人たちと交わり、古いアイデンティティを薄める
 -キャリア物語の中の変化として理解する

【キャリアへの介入】
・キャリアコンサルティング
 -キャリア開発ワークショップ
 -社内キャリアマネージャー研修
 -メンターのためのキャリア開発
 -タレントマネジメントとキャリアコンサルティング
 -ラインマネジャーのためのキャリアに関する会話
・キャリアカウンセリング
 -カウンセラーとクライアントの1対1のインタラクション
 -心理学の理論やコミュニケーションスキルと活用
 -クライアントがキャリアに関する意思決定をしたり、キャリアに関する問題に対処するのを助けることを第一の目的とする
・キャリアコーチング
 -出てきた背景は、
  ・キャリアの責任がより個人のものとなった
  ・仕事の環境変化
  ・仕事に関する問題の多様性と頻度が高まった
  ・勤労生活の長期化
  ・複数、グローバルのキャリア
 -自己と仕事を理解するために、メタスキルが必要となっている
 -4つのキャリアステージモデル
  ・関係を築く
  ・自己理解を促す
  ・新たな選択肢を模索する
  ・戦略と計画を立案する
・セラピー的カンセリング理論
 -人が中心、カウンセラーの姿勢にフォーカス
 -初期の経験と無意識の動機の重要性に注目
 -取捨選択する人/統合する人

<課題論文①>

「利用を目的とした関係性の構築による汚染効果:どのように我々はネットワーキングが汚いと感じるか?」
<イントロ>
・友達関係など自然発生的な関係は、お互いの思いやりが対称となることを想定している。
・仕事上の関係も対称性を求めてしまうために、相手から利を得ようとすると、こちらからも利を提供しなければならないと感じてしまう。
<仮説>
・H1a:仕事上のネットワーキングは、プライベートなネットワーキングと比べて、より汚いと感じられ、洗浄の必要性が高まる。
・H1b:利用目的のあるネットワーキングは、自然発生的なネットワーキングと比べて、より汚いと感じられ、洗浄の必要性が高まる。
・H1c:利用目的のあるネットワーキングが、我々に汚いと感じさせ、洗浄の必要性を高める程度は、個人的なネットワーキングより仕事上のネットワーキングのほうが大きくなる。
・H2:汚さを感じることは、仕事上の利用目的のあるネットワーキングと洗浄の必要性の関係性を仲介する。
・H3:利用目的のあるネットワーキングを汚いと思う程度は、利用目的のあるネットワーキングの頻度と負の関係にある。
・H4:利用目的のあるネットワーキングに関わる頻度と仕事のパフォーマンスは正の関係にある。
・H5:利用目的のあるネットワーキングを汚いと思う程度と、仕事のパフォーマンスの関係は、利用目的のあるネットワーキングに関わる頻度によって仲介される。
・H6:権力のない人に比べて、権力のある人が利用目的のあるネットワーキングは汚いと感じることは少ない。
<研究1>
・過去のネットワーキングの出来事について、どんなもので何を考え、どう感じたかを記述してもらった。
・H1a-cをサポートする結果だった。
<研究2>
・2つのグループに被験者を分け、一方は仕事のためにイベントに招待される、という話を読み、もう一方は、友達作りのためにイベントに招待される、という話を読んでもらい、汚さをどの程度感じたか、を答えてもらった。また、その洗浄製品(シャンプーなど)と通常製品(ポストイットなど)のリストからどの製品が望ましいか、応えてもらった。
・H1、H2をサポートする結果だった。
<研究3>
・北米の弁護士事務所にてサーベイを行い、利用目的のあるネットワーキングの頻度、汚さを感じるか、個人のパフォーマンス、ポジションについて聞いた。
・H3-6をサポートする結果だった。
<研究4>
・学生を対称に実験を行った。被験者は大きく仕事用ネットワーキンググループとプライベートネットワーキンググループに分けた。そしてマネージャーとスタッフの役割を与え、グループに分け、タスクを行わせた。その後ネットワークに入れたい人を選ばせ、仕事用ネットワーキンググループの被験者は「仕事用の関係を作るためにメッセージを送ります」と言われ、Linkedinでメッセージを送るよう言われ、プライベートネットワーキンググループの被験者は「プライベートな関係を作るためにメッセージを送ります」と言われ、Facebookでメッセージを送るよう言われた。その後、研究2と同じように製品を選ぶタスクを行ってもらい、どの程度の汚さを感じたか調べた。
・H6をサポートする結果だった。

<所感>これはパラダイムの影響もあるのでは。「一方的に何かを得よう」と思っている人は汚さを感じるが、「何か与えよう」と思っている人は汚さを感じなそう。権力の有無も考慮されているが、これは権力がある人=自己中心性が減少した発達段階がグリーン以上の人、なのでは。

Casciaro, T., Gino, F., & Kouchaki, M. (2014). The Contaminating Effects of Building Instrumental Ties: How Networking Can Make Us Feel Dirty. Administrative Science Quarterly, 59(4), 705–735.

<課題論文②>

「関係構築におけるサポート機能の特定:自己決定の視点」
<イントロ>
・開発サポート機能
 -Kramはメンタリング機能をキャリアサポートと心理サポートに分けた。
 -従来のメンターシップに加えて幅広い関係性を含めた場合、これらのサポート機能がどう変わるかはわかっていない。
・自己決定理論(Self-Detrmintation Theory)
 -DeciとRyanによって作られたモチベーションについての理論で、人間は自主性、能力、関係性の3つの基本的なニーズを持っているとする。
<方法>
・複数の業界から、18人の大卒のホワイトカラーを対象にインタビューを行った。
<結果>
・18人は全部で95人の開発者(Developmental NetworkにいてDevelopしてくれる人)が特定された。平均して5.28人の開発者がいた。少ないネットワークで1人、多いネットワークで15人のメンバーがいた。
・開発者によるサポートの形式は以下のように、自己決定理論によって分類できた。
・自主性サポート:自主性サポートはパートナーが対象者を理解しようとする際、明らかに存在した。
 -自由の創造:参加者は「開発者は自由の感覚をもたらしてくれる人だ」としばしば語った。
 -自己儀式の推奨:参加者は、どのように開発者が参加者に対しこれまでやったことがない方法で振る舞うよう推奨したかを説明した。
 -個人の価値観との調和
 -自主性の確認と賞賛
 -自主性ある行動の模倣:開発者をロールモデルとして見る
・能力サポート
 -効果的な行動の模倣
 -労働環境への慣れ
 -能力の確認と賞賛
 -弱点の容認
 -継続的開発への刺激
 -問題解決
 -練習環境の構築
・関係性サポート
 -親密性
 -自己開示
 -模倣となる関係構築力
 -本当の興味の提示
 -ケア

<所感>
モチベーション理論と紐付けられている点が非常に面白かった。もっとやってほしい。

Janssen, S., M. van Vuuren, et al. (2013). "Identifying support functions in developmental relationships: A self-determination perspective." Journal of Vocational Behavior 82(1): 20-29.

<課題論文③>

「ネットワーク構築における仕事以外の関係性の理解」
<目的>
・仕事上の関係性と仕事外の関係性がキャリアの成功にどのように役立っているか調べる。
<イントロ>
・HigginsとKramによってDevelopmental Networkというコンセプトが提唱されているが、仕事外のDevelopmental Networkについてはまだ研究が少ない。
<仮説>
H1a:仕事上の開発者(Developmental NetworkにいてDevelopしてくれる人)からのサポートは、給与水準と正の関係にある。
H1b:仕事上の開発者からのサポートは、キャリア満足と正の関係にある。
H2a:仕事以外の開発者からのサポートは人生の満足と正の関係にある。
H2b:仕事以外の開発者からのサポートは、キャリア満足と正の関係にある。
H2c:仕事以外の開発者からのサポートは、給与水準と正の関係にある。
<方法>
・パートタイムMBAの254名を対象にしたサーベイと、37名を対象にしたインタビューを実施した。
<結果・発見>
・仕事以外の能力開発者からのサポートは、キャリアと人生の満足と正の関係にあった。H2aとH2bをサポートする結果だったが、H2cはサポートされなかった。
・仕事の能力開発者からのサポートは、給与レベルとキャリアの満足と正の関係にあった。H1aとH1bをサポートする結果だった。
・定性分析からは、仕事上の開発者と仕事外の関係者が担う役割に違いがあることがわかった。
 ー仕事上の開発者の役割
  ・キャリアサポート系:コーチング、スポンサーシップ、挑戦的なアサイン、露見性
  ・心理的サポート系:カウンセリング、友情
  ・ロールモデリング系:模範となる振る舞い、関係構築
 ー仕事外の開発者の役割
  ・キャリアサポート系:コーチング(はあるが仕事上の関係者より少ない)
  ・心理的サポート系:カウンセリング、励ましや感情的サポート、友情
  ・ロールモデリング系:倫理観と価値観、ワークライフバランスの失敗例

<所感>
経験的にそうかな、と思われることが証明されていた。

Murphy, W. M. and K. E. Kram (2010). "Understanding non-work relationships in developmental networks." Career Development International 15(6-7): 637-663.



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