リーダーシップとパフォーマンス・マネジメント:Week2 リーダーシップの特質と行動
これまでに読んだ本や経験と特に齟齬はなく、大きな発見はなかったが、アカデミックに何が議論されてきたかという点で抑えておきたい内容だった。
<まとめ>
・外向性や知性など、リーダーが持つ特質は存在するが、度が過ぎるのは問題。
・リーダーと見なされたり、リーダーシップの効果を高める行動も存在し、特質より相関が強いので、後天的になんとかできる。
・リーダーの行動に関する研究から、状況対応リーダーシップ理論が生まれ、状況によってリーダーシップを使い分けると効果的であることがわかっている。
<授業の内容>
【個人の特性(traits)】
・特性とは
ー個人によって異なる
ー行動や思考、感情のパターンを表す
ー比較的長時間安定するが、ライフイベントによって変化する
・初期の特性理論からのアプローチ(1900年初期)
ー政治や軍事のリーダーが生まれながら持つ特徴に注目
ー身長や体重、健康、心理的エネルギー、性格を研究
ー理論的正当性に欠けていた
・以下のように様々なリーダーシップの特性が発見された。
・知性(Intelligence)は多くの研究でリーダーシップとの関係性が発見されたが、知性が高過ぎるのも問題であることも指摘されている。
・性格特性のBig Five Traitsとリーダーシップの関係
ーリーダーと見なされるのに関係があるのは、外向性、開放性、誠実さ
ーリーダーシップの効果と関係があるのは、外向性、開放性で、神経症的傾向は負の相関がある
・Big Fiveのどの要素も、度が過ぎると悪影響があることがわかっている。
・理想的なリーダーと現実のリーダーにギャップがあると、メンバーの満足度は下がり、一致するほど満足度は高まる。
【リーダーシップスキル】
・スキルからのアプローチもリーダーを中心とした見方をする。
・スキルは特性と異なり、学習し、開発することができる。
・Katzは効果的なリーダーシップは、techinical、human、conceptualの3つの領域を開発することだと主張した・
・効果的なリーダーシップは、スキルに依存すると考える。
・効果的なリーダーシップは、スキルに依存すると考える。
・特性がスキルに影響し、スキルが成果に影響する、と捉える
【リーダーシップ行動】
・行動アプローチ
ーリーダーのやることややり方に注目する。
ー言動が効果的なリーダーシップと関係があると捉える。
・リーダーシップ行動研究の例
ーオハイオ州立大学は、グループや組織を引っ張る際、タスク指向の行動と人指向の行動を発見した
ーミシガン大学は、パフォーマンスに関係するリーダーシップ行動として、製品指向の行動と従業員指向の行動を発見した
【状況対応型リーダーシップ】
・リーダーシップ行動の研究から、ある行動がポジティブであることやネガティブであること、またニュートラルであることが発見され、状況対応型リーダーシップ理論に繋がった。
・リーダーシップのパスゴール理論
ーモチベーションの期待理論に基づいて作られた
ーフォロワーは、自分に能力があり、努力が結果に結びつき、やる価値がある場合、モチベートされる、ことを前提とした
ーリーダーに必要なのものは以下の4つであると主張した
・ゴールの定義
・パス(道)の明確下
・障害の除去
・サポートの提供
ーまた、4つのリーダーシップがある
・指示的リーダーシップ:タスクや時間軸に関する指示
・支援的リーダーシップ:親しみやすさ、尊敬、傾聴
・参加的リーダーシップ:意思決定へのフォロワーの巻き込み
・達成指向リーダーシップ:フォロワーを高いレベルに駆り立てる
ーフォロワーの個性、タスクの特徴も、リーダーシップの効果に影響がある
・Least-preferred-cowerker(LPC) contingency theory
ーFiedlerが提唱し、状況変数には以下の3つがあると主張した
・リーダーとメンバーの関係
・タスクの構造
・地位的権力
・Situational Leadership
ーHerseyとBlanchardがさらに発展させ、Situaltional Leadershipを提唱した
ー以下のように状況応じてリーダーシップを使い分ける(下に行くほど成長段階が上がる)
・メンバーのコミットが高く、スキルは低い:指示型(指示を多く、サポートは少なく)
・メンバーのコミットは低く、スキルも低い:コーチング型(指示もサポートも多く)
・メンバーのコミットは低く、スキルは高い:支援型(指示は少なくサポートは多く)
・メンバーのコミットは高く、スキルも高い:移譲型(指示もサポートも少なく)
・Derueらは特性と行動を統合したモデルを開発し、特性より行動の方がよりリーダーシップの効果性を説明できることを突き止めた。
<課題論文1>
授業でも出てきたJudgeによる知性とリーダーシップの関係についてメタ分析した研究。主なFindingsは、
・知性とリーダーシップには関係があるが、以前考えられていた程ではない。
・人により認知される知性の方が、筆記試験で測定される知性より、リーダシップと強い関係にあった。
・リーダーのストレスが高かったり、リーダーが指示を多く出す場合には、知性とリーダーシップの関係が弱まった。
Judge, T. A., Colbert, A. E., & Ilies, R. (2004). Intelligence and leadership: A quantitative review and test of theoretical propositions. Journal of Applied Psychology, 89(3), 542-552.
<課題論文2>
こちらも授業で取り上げられたBig Five Personality Traitsとリーダーシップn関係をメタ分析したJudgeの論文。リーダーと見なされるのに関係があるのは、外向性、開放性、誠実さで、リーダーシップの効果と関係があるのは、外向性、開放性で、神経症的傾向は負の相関があることがわかった。
Judge, T. A., Bono, J. E., Ilies, R., & Gerhardt, M. W. (2002). Personality and leadership: A qualitative and quantitative review. Journal of Applied Psychology, 87(4), 765-780.
<課題論文3>
これも授業の最後の方でちらっと出てきたDerueらによる特性と行動とリーダーシップの関係をメタ分析し、特性より行動の方がリーダーシップを説明しうることを突き止めた研究。彼らの構築したモデルがこれ。
Derue, D. S., Nahrgang, J. D., Wellman, N. E. D., & Humphrey, S. E. (2011). Trait and behavioral theories of leadership: An integration and meta-analytic test of their relative validity. Personnel Psychology, 64(1), 7-52.