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モチベーション:Topic5 ジョブデザイン
<授業での学び>
<イントロ>
・ジョブデザインは見ている切り口がことなるため、全てのモチベーション理論に関わる。
・初期のジョブデザインはタスクを単純化し、バラエティもなくしてしまったため、仕事を非人間化し、モチベートされない、つまらないものだった。(所感:恐らく産業革命時代のジョブデザイン)
・ジョブデザインに関する理論は、二要因理論、社会技術システム理論、職務特性モデル、ジョブクラフティング、と発展してきた。
・二要因理論では、衛生要因とモチベーターを考慮することで、仕事が豊かになると説明される。
<社会技術システム理論:Sociotechinical systems theory (STS)>
・技術的プロセスと社会的プロセスは、生産性と仕事におけるライフクオリティを最適化することを前提とした。
・社会技術システム理論は、グループやチームでの仕事にフォーカスする。
・自律的なグループや、自己管理するチーム、という概念を導入した。
・以下4つがポイント
ー仕事の方法はできるだけ特定しない:柔軟性・自律性(この点は自己決定理論と一致)
ー必要とするリソースにアクセスできる権限を従業員が持つ:自律性(この点でも自己決定理論と一致)
ー役割は複数機能を持ち、複数のスキルを使うものである:チャレンジング(この点では目標設定理論と一致)
ー再設計は継続的であり、一度で終わるものではない:テーラーメイド
・エビデンスは豊富ではない。
ーリサーチデザインが難しい
ー測定や評価が難しい
<職務特性モデル>
・次の5つの要素がモチベーション、パフォーマンス、仕事の満足につながる。
ーSkill variety
ーTask identity
ーTask significance
ーAutonomy
ーFeedback
・上記5つの職務特性を満たすと、心理的状態・心理的ニーズ(仕事の意味を感じる、仕事の成果についての責任感を感じる、結果についての知識を得る)を満たし、成果(モチベーション、パフォーマンス、仕事の満足、低い欠席や離職)に繋がる。
・職務特性モデルを提唱したHackmanとOldhamは、職務診断調査を開発した。
・モデル全体を検証した研究は少なく、各要素を検証したものが多い。
<ジョブクラフティング>
・以下のプロセスで行われる。
ータスクの境界を変える
ー関係性(関わる人、頻度)を変える
ー意味を変える
・エンゲージメント、満足度、回復力、成長力に影響する。
・短期、長期で個人、グループに効果があるが、リソースを消費する(時間がかかる)
ー長期的効果についての研究は少ない
・ポジティブな影響を受けるもの
ープロアクティブな個性
ー自己効力感
ー仕事の満足度
ーパフォーマンス
・ネガティブな影響を受けるもの
ー緊張感
・ネガティブな影響を与えるもの
ー年齢
ー在籍期間
(所感:年齢が上だったり、在籍期間が長かったりする人は、経験が豊富でネットワークもあるため、仕事の内容を変えたくない)
・重要ではないもの
ー離職意向
ー性別(所感:ジョブクラフティングに対する影響はない、という意味)
ー労働時間
ー教育(所感:ジョブクラフティングに対する影響はない、という意味)
(所感)
理論としてはまだ完成度が低い印象があるが、モチベーションを高い状態にするためにまず最初に取り組むべきことになりそう。できれば各モチベーション理論との整合性を図りたいが、多分難しい。まずは、二要因理論、期待理論、目標設定理論、自己決定理論あたりを使うと上手く行きそう。
<課題論文1>
ジョブデザインについてまとめた論文(記事?)。
・HackmanとOldhamが提案した、モチベーションを高める職務特性は以下の5つ。
-タスクバラエティ
-タスクアイデンティティ(1つのタスクを最初から最後までやれるか)
-タスクの重要性
-自律性
-フィードバック
・上記5つの職務特性に基づいてジョブデザインするのが難しい場合には、以下3つの方法がある。
-ジョブエンリッチメント:責任、意思決定、朝鮮、のレベルを上げる
-ジョブローテーション:同じようなスキルレベルで仕事ができる他の部署に移動させ、違う仕事をさせる
-ジョブエンラージメント:求められるスキルレベルは同じで、タスクの範囲を広げ、単調さを軽減する
Blyton, P. & Jenkins, J. (2008). Key Concepts in Work. London: Sage. Section on Job Design
<課題論文2>
ジョブエンリッチメントと肥満の関係について調査した論文。ジョブエンリッチメントが高くても低くても肥満になることを発見した。ここでジョブエンリッチメントが高い状態とは、負荷などが高い状態、ジョブエンリッチメントが低いとは、負荷が低い状態を意味する。
Fried, Y., Laurence, G. A., Shirom, A., Melamed, S., Toker, S., Berliner, S., & Shapira, I. (2013). The relationship between job enrichment and abdominal obesity: A longitudinal field study of apparently healthy individuals. Journal of Occupational Health Psychology, 18(4), 458–468.
<課題論文3>
タスクの重要性とパフォーマンスについて、3つの実験を行った研究。大学の寄付を募るコールセンターで、タスクの重要性を伝えられた(寄付が金銭的に困っている学生の大きな助けとなっているという文章を読まされた)グループでは、そうでないグループに比べて集めた寄附件数と金額が多かった。ライフガードを対象にした実験では、社会へのインパクトを認識することが、タスクの重要性が仕事への献身に及ぼす影響を仲裁し、社会から価値が認められるという認識が、タスクの重要性が救助行動に及ぼす影響を仲裁することがわかった。また、1つ目の実験と同じコールセンターで調査した結果、誠実さが低い人のパフォーマンスがタスクの重要性を伝えられた場合に高まる(誠実な人はもともとパフォーマンスが高い)ことと、社会性のある価値観を持った人のパフォーマンスが、タスクの重要性を伝えられた場合に高まることがわかった。
(所感)実証主義の読みやすい論文だった。この論文はエンプロイーエクスペリエンスでも紹介されていた気がする。
Grant, A.M. (2008). The significance of task significance: Job performance effects, relational mechanisms, and boundary conditions. Journal of Applied Psychology, 93, 1, 108-124.