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背景のTips

SNS上に上げた背景を描くときのヒントのまとめです🙃

作画法より「考え方」に寄っています。



オブジェクトの強弱

オブジェクトの強弱

”目が近すぎる”傾向の人にありがちですが、物の強弱が弱く、どれも大きさや扱いが均等になってしまうパターン。一度やり過ぎと思えるくらい強弱をつけてみるのがコツです。

これは専門学校で非常勤講師をする過程気が付いたことですが、背景で悩んでいる、あるいは背景の扱いが不慣れな学生に共通しがちな問題点であり、大抵の場合、「質感」が上手くいかないとブラシや描き込みやら手を変え品を変えと試行錯誤をしているわけですが、実際の問題はそこではないのです。上手くいかない原因が構図や物の配置に起因している、ということの方が経験上多いのです。
逆に言えば、どんな絵柄であれ、描き込み量であれ、質感であれ、配置や構図が考え方が上手くいっているなら魅せる絵に仕上がるのです。



扱いに差を設ける

同じ題材を描いたとしても、その画面内での扱いの差で、フォーカスする部分が変わってきます。これはオブジェとの強弱と同じで、構図の中でも、その扱いに差をつけることで、意図的に視線誘導を生んだり引き込むような絵作りができるようになります。

キャラと背景の組み合わせなどで顕著になる問題として、こうした扱いの差を付けられないがゆえに、どっちつかずな絵になるという事例は大変多いです。


オブジェクトをまとめる&重ねる

まとめるたり重ねたり

昨今のCGイラストは情報量が多いものがリッチ感を感じるとされ喜ばれがちです。その賛否はともかく、情報を盛ろうとして様々なもの描きいれた結果、とっ散らかった画面になってしまうというのは良くあることです。オブジェクト同士を関連付け、まとめてみてください。


ライティング

シルエットだけのラフ
雲の隙間から落ちる光が高層ビルに当たっていると想定する。
これだけで画面の情報量が格段と増える

物の配置でも特に大事のが陰影表現です。画面全体の光源の意識、どこが明るくてどこが暗いのか?
例えば、エベレストのような高山の天辺だけに太陽の光が当たる現象を、モルゲンロート(朝日)、あるいはアーベンロート(夕日)と呼びます。そうした事象を目にした時、美しいやら凄いやらとエモーショナルな感情(いわゆるエモい)が湧きたつものです。これは絵も同じなのです。

アルプスのマッターホルン(写真模写)
建物の影が落ちる街並み

可能ならば、ラフの段階から画面全体の陰影、光源をしっかり決めると、絵の主題が迷子にならずに済みます。



陰影表現による遠近感の強調

遠くの山

ライティングにも直結する話になりますが、例えば、この絵は手前の崖と、遠くの山の天辺および空との間に、暗い箇所を設けています。これにより、手前と奥の関係が強調され、遠近感を生みます。


説得力

お城の塔は防衛のためにある

説得力はどこから生まれるのか?これは特に難しいわけでも専門知識が必要なわけでもなく、自分の身に置き換えた場合を想定すればよいのです。例えば、家を描くとします。雨に降られると濡れるから屋根を付けます。雨水が屋根にたまるとまずいので傾斜をつけます。といったように、機能による形態の決定はそうした単純な事象の積み重ねの結果であり、そこに気が付くと説得力が生まれます。説得力とは専門書だけを漁ればいいという話ではなく、物の本質に気が付くことです。

「設定」は何よりも勝る

設定と言語化にプロセス

私が再三主張することは、技法や図法だけでは絵は成り立ちません。当然これらはできたほうが良いのですが、同時に、いかに思考するか?という点が大事です。白紙の前で悩んでも出てこないならラフや文字で描き起こしましょう。
説得力という点において、しばしばリアリティという言葉が出ていきます。日常的な法則に着目し、設定を与え、掘り下げていく。そのプロセスを挟むことにより説得力のある絵に近づきます。

以下、西欧風の街並みを描くときの思考のプロセスの例です。

古い壺を描くとします。質感や描き込み量で古く見せることより、古い=ひびが入っているといった設定と視覚的な情報の方が、古いと瞬時に判断できます。あるいは、どうしてひびが入ったのか?という想像を掻き立てます。

「設定」とはそれくらい強い物なのです。


描きたいものは何なのか?

描きたいものは何なのか?

案外抜けてる人が多いと感じるのが、自身が何を描いているのか?という自覚です。そこが整理できていないと、何をすべきか?何をやらなくていいか?の分別ができません。これは先の「設定」にも通じますが、そこが不在では先には進めないのです。

例えば、「綺麗な背景が描けるようになりたい」、では浅いのです。

せめて「メイド姿の女の子がイギリス風の庭で、花の手入れをしている。時代はビクトリア朝で、時間は昼。柔らかい光を意識したい。構図としては背景のキャラの比重の方が高い感じで、例えるなら〇〇先生の描くイラストみたいな…etc」

くらい、具体的なビジョンを考えておかないと、やるべきことが決まりません。


写真資料との向き合い方

再構築する

資料を使えと私はよく言いますが、ネット検索で出てきた写真、自身が構図といった要素を考えずに撮ってきた写真を、そのまま絵の構図として使うのはあまり良くはないです。(自前の写真資料を、そのまま絵に落とし込めるくらい構図やアングルを工夫して用意したというなら話は別です)。例えば、一つの解答例として、映画やアニメ、漫画のワンシーンを想定して構図やアングルを再構築すればドラマ性のある絵になります。



インプット、アウトプット

あくまでも私の経験則であり沢山の絵描き志望の学生を見た結果、背景の扱いに限定した場合でも、その力量の差は、他者の作品や世の中をしっかり観察し参考にし、貪欲に取り入れていくインプットと、とにかく考え手を動かし、絵を出力するアウトプットする量に比例しがちであるという結論には至っています。これらは多ければ多いほどいいのです。

さて、絵描き志望とは言え、イラストレーターか?漫画家か?背景屋か?アニメーターか?、希望はそれぞれあるのですが、イラスト志望と漫画家志望を比較した結果、どうにも漫画志望の子の方が構図出しが上手く、魅せるものを描くという傾向が強いのです。

私が注目したのが漫画では必要な工程とされる「ネーム」の存在でした。漫画はコマ数が多く、どのコマに優先順位を付けるか?絵として伝わるものになっているか?等々、考えてアウトプットした数がイラストのそれよりも段違いに多くなるのです。ともすれば得意な構図ばかり描くわけにもいかず、どれだけ多くのものを描けるかの勝負です。

一方イラストは1点を描き上げるのに時間がかかり、完成までしっかり描き込んだものを数多く上げるのは至難の業です。ところがそんなイラスト志望の学生でも、日常的に落書きをする学生は伸びが早いのです。これは本番のイラストでは出力しきれない部分を、無意識的に落書きで補っているわけです。描き上げなかったラフであっても、数をどれだけ多く出せたか? その習慣の比重が大きいのです。これはアニメーターや背景志望でも同じで、結局は場数です。


とにかくアウトプット

単刀直入に言えば、どんな技法書を買おうが、どんな学校に行こうが、どんな講師を付けようが、youtubeでどんな講座視聴しようが、描いたもの勝ちです。しかし先に言ったように、絵は手間と時間がかかります。慣れないうちは特に時間がかかります。だからといって妥協を重ねたり、焦ったりは禁物です。ゆえに、本気でしっかりと描いたイラスト合間に、多くの落書き(ラフな)絵を描く時間も同時に設けると、アウトプットも増え、肩慣らしにもなり、気分転換にもなり、大変良いと思います。そんなラフな絵を好んでくれるファンも出てくるかもしれませんよ?

所謂ラフな絵
1時間チャレンジ
本気の絵

なにより絵は言葉や文字と同じです。使えば使うほど研ぎ澄まされ、語彙が増えれば表現力も上がり、多くのことを伝えられるようになります。多くのことが出来るようになればそれだけ楽しくなる。しかし、使わなければ何も広がらず、何も得られず、忘れるだけなのですから。

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