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ガーシュウィンやビル・エヴァンスの「ほぼ生演奏」を聴ける!? スタインウェイの自動演奏ピアノに感動した

こんにちは。私は作編曲・演奏家として活動している呼野 阿美香(よぶの あみか)と申します。

つい先日、前田ホールへ足を運んだら、ロビーにこんなものが!

Steinway & Sons創業170周年にあたる2023年に発表された、フランス人デザイナー Noé Duchaufour-Lawrance氏との協働による特別モデル「Noé Limited Edition」。

「スタインウェイじゃん!」とびっくりしていたら、「呼野、ちょっとピアノ弾いてみなよ〜!」と。あまり見慣れない色と形のピアノだったので、貴重な機会だと思い、僭越ながらピアノを弾かせていただきました。

「ありがとうございました〜^^」なんて言って満足していたら、目の前で鍵盤が凹みだし、なんと私が弾いたものを自動で演奏し始めたのです! そのときは何も知らなかったので、驚きの連続。軽くパニック状態でした(笑)。
 
なぜ、このピアノは前田ホールのロビーに設置されているのか。こちらは洗足学園音楽大学に寄贈された、Steinway & Sons社の自動演奏ピアノ「SPIRIO|r(スピリオアール)です。

個人的な話になりますが、さまざまなご縁があり、このピアノの管理と広報を担当することになりました。今回は多くの方に「SPIRIO|r」のことを知ってもらうべく、その機能・魅力を紹介したいと思います。


「SPIRIO|r」でできること

通常の「SPRIO」とは異なり、「SPIRIO | r 」は自分の演奏を録音・再生できるモデルです。

「SPIRIO | r 」は世界最高峰のハイレゾリューション自動演奏ピアノです。録音・再生・編集などの操作は、基本的にBluetoothで接続されているiPadで行う作りになっています。
 
このピアノで、できることは主に4つ。

1.   世界的ピアニスト(ホロヴィッツやグレン・グールド、ビル・エヴァンスetc.)の演奏を聴ける
2.   自分の演奏を録音・自動演奏してもらえる
3.   MIDIファイルを読み込ませたら、自動演奏してもらえる
4.  離れた場所でもリアルタイムに演奏を届けられる

①世界的ピアニストの演奏を聴ける

「SPIRIO|r」にはスタインウェイのアーティストによって収録された数千曲の演奏がプリインストールされています。

CDやレコーダーのように録音されたものをスピーカーから聴くのではありません。実際の演奏が「SPIRIO|r」で再現されるため、ピアニストの音色やタッチ、響きを直接楽しめるのです。

つまり、「ほぼ生演奏を聴ける」とも言えるでしょう。録音ではなく、生のピアノで聴けるのはなんといっても嬉しい部分です。

②自分の演奏を録音・自動演奏してもらえる

先述した通り、「SPIRIO|r」では自分の演奏を録音・再生・編集することができます。タッチや音色、響きを含めたニュアンスなども全て記録し、再現してくれるので、間違えたらそのまま記録されます(笑)。ただ、後から正しい音に修正することも可能です◎。

特にピアノを専攻している学生は、スマホのボイスメモで自分の演奏を録音し、聞き返す方も多いかと思います。実際のピアノで自分の演奏が再現されるのは、特に嬉しい部分ではないでしょうか。

また、自分の演奏と世界的ピアニストの演奏を聴き比べる……なんてぜいたくなこともできちゃいます。

③ MIDIファイルを読み込ませたら自動演奏してもらえる

音楽制作ソフトで作った曲など、MIDIファイルに変換して「SPIRIO|r」に読み込ませたら、自動演奏してくれます。こちらは私の曲で絶賛実験中ですので、この機能を活用していけるように頑張りたいです!

④離れた場所でもリアルタイムに演奏を届けられる

SpirioCast(スピリオキャスト)という機能、すごいんです。

この機能はまだ試すことができていないのですが……。どうやら他の場所にある「SPIRIO | r」にリアルタイムで演奏を送信できる機能とのこと。つまり、前田ホールのロビーで行う演奏は、世界中の「SPIRIO | r」で同時に再生できるわけなのです。

使い方によっては、「ライブ配信」の在り方が大きく変わるかもしれません。「SpirioCast(スピリオキャスト)」、早く試してみたい!

3つの活用法を考えています

さまざまな機能が搭載された「SPIRIO | r」。演奏会はもちろん、教育的な側面でも活用できないか?と考えています。

「SPIRIO | r」によるソロコンサート

まず考えているのは、「SPIRIO | r」によるソロコンサート。

先述した通り、「SPIRIO | r」は世界的ピアニストの名演を高い精度で再現できるピアノです。生のピアノだからこそ味わえる、ピアニストの音圧・音色・表現を存分に感じてもらえるコンサートを企画したいと考えています。

「SPIRIO | r」×「⚪︎⚪︎」

音響的に難しい部分もあるかもしれませんが、「SPIRIO | r」と何かのコラボレーションも面白そうです。

ヴァイオリンなどの生楽器や、プロジェクションマッピングのような映像とのコラボ。さらには読み聞かせ(BGMや効果音として「SPIRIO | r」を使用する)など……、さまざまな活用法が思い浮かびます。

音楽を専門的に勉強している方はもちろん、そうではない方も楽しんでいただけるような企画を考えていきたいと思っています。

実技試験前の研究にも

「演奏を録音し実際に再現してくれる」部分を教育に活かすべく、実技試験前に自分の演奏を録音・視聴できる機会を作りたいと思っています。先着順になるとは思いますが、より多くの学生に体験してもらえるよう進めていきたいです。
 
これからいろいろと試行錯誤していきながら進めていくので、未定な部分が多いのですが……。たとえば開場から開演までの間など。基本的には学内イベントが前田ホールで行われるときに、自動演奏をしてもらう予定です(前田ホールの使用状況やイベント内容の兼ね合いにより、自動演奏が行われない日もあります)。

また、自動演奏中の動画撮影はNGですが、写真撮影はOKです。

「SPIRIO | r」の横にあるQRコードを読み込んでいただくと……。

※自動演奏を行わない日は「SPIRIO | r」にカバーが掛かる予定です。

作曲家と一緒に記念撮影できるフォトフレームが出てくる仕掛けに(笑)。この記念撮影ができるのも自動演奏を行なっている日に限りますが、季節によってデザインが変わる予定なのでお楽しみに!

これから「SPIRIO | r」を活用して、さまざまな企画を実現できればと思っています。学内の方はもちろん、前田ホールでの演奏会にいらっしゃる学外の方も、洗足学園音楽大学にお越しの際は、ぜひ楽しんでいただければ幸いです。


世界的ピアニストの名演を高い精度で再現できること。自ら奏でた音の録音や、遠く離れた場所にもリアルタイムで演奏を届けられること。「SPIRIO | r」はただの自動演奏ピアノではなく、「音楽」の楽しみ方を拡張してくれるピアノだと感じています。

これからもたくさんのお力添えをいただきながら、「SPIRIO | r」の魅力を広めていきたいです。また、先日2台目の自動演奏ピアノが本学に寄贈されたようなので、そちらも後日紹介できればと。

「SPIRIO | r」を活用したイベントを行うときは、洗足学園音楽大学のSNSや私のSNSでも情報を発信していこうと思っています。ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。よろしくお願いいたします!

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Text by 呼野 阿美香(よぶの あみか)