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自転車にまつわる話(1) 女性警察官

続くかわかりませんが、一応、
私の自転車に関するたわいもない話を、ただただ書いていくシリーズです。

【登場人物】
私   ・・・高校一年生。髪型中分け全盛期。
Iくん ・・・中学の同級生。自転車を譲ってくれた心優しき友人。
女性警察官Aさん ・・・20代前半くらいのお若い感じ
女性警察官Bさん ・・・Aさんと同じ感じ(いかにも同僚感があった)

◆友人から自転車をもらった

私は中学時代、ボッロボロのT型ハンドルタイプのシティサイクルに乗っていた。
たまにメッシュのカゴが錆びてしまって、台座からカゴが崩れ落ちるように外れてしまっている自転車を見かけることがあるが、まさにあんな感じ。
チェーンは伸びてしまい、何かの拍子にすぐに外れてしまう。
ペダルを一漕ぎするたびに、曲がってしまったチェーンカバーのどこかに擦れて、カスッカスッと嫌な音をたてる。
その自転車は自分なりに「使い倒しきった」感があった。

その後高校へ進学し、電車通学となった。
電車通学と言っても、自宅から駅までは約3km程度の距離があり、
バスで移動するとえらく遠回りする必要があったため、もっぱら駅までは自転車で移動することとなった。

そんな折、中学時代の友人Iくんが新しく自転車を買ってもらったという。
聞けば、それまで乗っていたMTBタイプの自転車はもう乗らないという。
それならばと、
厚かましくも「その乗らなくなった自転車を貰えないだろうか」とお願いしたところ、快く自転車をくれた。
持つべきものは心優しい友人なんだなぁ。

かくして、使い倒したシティサイクルから、
まだ幾分か乗れるMTBタイプの自転車へと渡り歩くことになった、
私、高校一年生の春であった。



◆駅までの往復はサイクリングロード

実際はMTBタイプだったけどね

私の家から駅までのルートには、おあつらえ向きにサイクリングロードがあり、片道3km程度の距離の大半をそのサイクリングロードで移動することが出来た。
サイクリングロードのその区間は信号がなく、ただひたすら己の体力と脚力のみで移動時間が決まるため、
私は帰宅時、いつしか無駄に

「一人タイムトライアル」

をするようになっていた。
己との闘い。

ん?ライバル?
ライバルは昨日の自分よ。

ん?理由?
そんなものは無いよ。ただ走る。それだけだ。

そんな熱い、一人自転車バトルをしていた高校一年の春であった。


◆メガネ男子

突然だが、私は視力が弱い。
いわゆる近視であり、今はメガネを常用しているが、
高校一年生当時は、授業中だけメガネをかける程度のやや近視であった。

自転車移動の際、普段はメガネをかけていなかった。
というのも、メガネを常用するようになると、
近視の度合いが進み、いわゆる「メガネくん」になってしまうのではないかと考えていたことが大きい。
今でこそメガネ男子なんつって一定の需要があるかも知れないが、
思春期の男子にとって、メガネを常用しなくてはいけなくなるかどうかは
わりと重要な問題だったのだ。
(要は格好つけたかった)

それに、近視と言ってもまったく見えないわけではなかった。
例えば、前方にいる人の顔を判別しようとすると、
やや離れたところではぼやけてしまい「顔判別」は出来ないが、
ある程度近づけばその「顔判別」も出来た。

駅から自宅までのサイクリングロード走行において、
通り過ぎる人の顔判別までする必要はなく、
人自体や動くものの判別は出来たので、その点は困らなかった。
(今となっては若気の至り。真似せず、皆さんメガネをかけよう)


◆鳴り響くホイッスル

季節は陽も長くなってきた、
春から夏に移りかけたような頃だっただろうか。
その日も私は闘っていた。過去の己と。

「今日は調子が良い!これはイケル!」

「何が!?」
という感じであろうが、確かにその日はイケていた。

これは最速タイムが出る!
夕方のあのテレビ番組に間に合う!

MTBタイプであるからして、
オンロードには向かないブロックタイヤを履いていたように思う。
アスファルトから受ける激しい摩擦抵抗の中、
猛烈に我流でペダリングをし、
自宅まで残り800mくらいという地点だろうか、
顔まではわからないものの、前方に人がいるのがわかった。

避けなければ。

道幅は4m程はあると思われる。
だいぶ手前から前方の人を避けられるラインにしっかり入り、
私はペダリングの足を緩めなかった。

「ぬおー!」

すると、前方の人が私の走行ラインにやや寄ってくるではないか。
なんてことをするんだ。
季節の変わり目には変質者の出没率がUPすると聞いたことがある。
危ねぇ。危ねぇ。

「わざわざ早めに避けているのに、オレの邪魔をするんじゃねぇ~!」

私はそう心で叫びつつ、
さらにもう1ライン離れたラインに移動して、その人を避けきった。
ゴールはあと少し。
ラストスプリントだ!
I can do it!
I can do it!!
I・・・

ピピーーーーーーーーーー!!!!
ピピピピーーーーーーーー!!!!

その人を避けきった直後、
背後からけたたましくホイッスルの音が鳴り響いた。
何!?
何何!?

いや、当時の私は近視ではあったが、
先述の通り、ある程度近づけば顔判別も出来たのだ。
横をパスしながらようやく気付いた。
後方で強烈なホイッスル音を響かせている人。

あれは間違いなく女性警察官だった(汗)。


◆女性警察官に詰め寄られる


後方から猛烈なホイッスル音を聞きながら、
「あ、これは無視したらいけないヤツだな・・・」
と、私は全力でブレーキをかけてその場に停止した。

「ちょっと!キミ!キミ!」

怒りのテンションで駆け寄ってくる女性警察官2名。
なんとなく状況のイメージがわくだろうか。
私はすこぶるバツが悪かった。

「なんで逃げるの!」

状況的に、

女性警察官の存在に気付いた高校生が、
スピードを緩めることなく、全力ペダリングで逃走しようとした。

という構図であった。

私「いや、、逃げるだなんて、、、」

警「今、逃げたじゃない」

私「逃げっ、そんなつもりはなくてですね、、、オヨヨ・・・」

物心ついてから警察官に呼び止められるのなんて初めてのこと、
そしていきなりの出来事だったこともあって、私はしどろもどろになった。
我ながらすこぶる怪しい。

警「じゃぁ、何をそんなに急いでいたの?どこに行くの?」

私「いや、家に帰る所です・・・」

警「帰るだけなのに、そんなに急いでたの?」

私「ええ、まぁ。。。」

思春期の少年せにょは、そこで
「己との闘いのため、タイムトライアル中でした!押忍!」
「どうしても、忍たま乱太郎が見たかったんです!押忍!」

とは、恥ずかしくてどうしても言えなかったのでした。


◆喋れば喋るほど怪しまれる

肩でぜーぜー息をしながら、参ったなと思っていたところで、
追撃の質問が飛ぶ。

警「ところで、その自転車はキミの?」

そこでハッと気づいた。
これはなんというか、やっちまった状況なんじゃないかと。

私「もちろんです!」

警「防犯登録確認させてもらっても良い?」

ここで、お気づきの方も多かろう。
この自転車は、春に友人Iくんから貰ったものであることを。

私「はい。あ、でもこれは友達から貰った自転車なので・・・」

これ完全に、
自転車盗んだ人の苦し紛れの言い訳にしか聞こえん。

警「友達から貰った~!? ウソついてない?」

完全に疑われている。
そらそうだわな。

私「いやいや、本当です」

警「ひとまず、防犯登録確認させて貰うよ?」

そう言って、もう一人の女性警察官が何やら無線で照会をはじめた。
当時、アマチュア無線が趣味なヲタク少年だったので、
「お!警察無線だ!」
と別のところで興味がわいたのだが、今はそれどこれではない。
うーむ。

ここまでの状況証拠全てが、
コイツはチャリをパクッて全力で逃げた高校生であると言っている。。。


◆逆転ヒットは友人の名前

警「友達から貰ったって言うけど、じゃぁその友達の名前は?」

どうやら照会かけた結果と、私の言う情報とで比較検証しようとしているようだった。

私「○○ △△くんです。」

私はIくんのフルネームと、加えて彼の漢字を説明した。
たまたま彼の名前は変わった漢字だったので、
その漢字と読み方をすらすらと説明したところ、
少しだけ風向きが変わってきたのを感じた。
そう、私を救ってくれたのはIくんの変わった読み方の名前だったー。

警「お友達とはどういう関係?」

私「××中学校時代のクラスメイトで、彼は今○○高校に通っています」

警「住所は?」

私「詳しい住所までは覚えていませんけど、○○町××丁目の△△団地です」

私が伝えた情報を、もう一人の女性警察官が無線で伝え、
無線の先で情報照会をして結果が返ってくる、という感じのようだった。
その結果、全ての情報は合致したとのことだった。

なんかそこからは事務的な会話から解放され、
妙にフランクな会話になったような気がする。

警「絶対、窃盗自転車だったから逃げたのかと思ったよー
  キミ、紛らわしいんだよー(笑)」

みたいに言われ

私「すみません。ボク、授業中はメガネかける程度に目が悪くて、
  すれ違い際まで警察の方だと気づきませんでした」

私「それに、本気で逃げる気だったら、わざわざ止まらずにそのまま逃げていると思います」

と言うと、
それもそうだわな~
的な感じになり、
最近の高校生はどうなの?
とか
将来警察官目指さない?
とか変な勧誘を受けたり、キャッキャキャッキャという感じで解放されました。



結局、忍たま乱太郎は見逃した。

おしまい

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