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クルミドコーヒー影山さん・HAGISO宮崎さんを招いた「空き家相談会」レポート

こんにちは!銭湯ぐらしです。
私たちは、杉並区高円寺を拠点に、空き家の使い道に困っている人と空き家を使いたい人の出会いをつくり、暮らしを楽しめる拠点を増やしていくことを目指して活動しています。

2021年6月に開催した勉強会を皮切りに、これまで空き家活用に関する勉強会等の活動を続けてきました。

その後勉強会がきっかけで、築50年木造2階建の空きアパートだった物件から再生した「湯パートやまざき」が誕生するなど、実際に運用フェーズに進んでいる物件も出てきています。

▼これまでの活動記録


また、上記の取り組みが評価され、なんと国土交通省が募集した令和4年度「住宅市場を活用した空き家対策モデル事業」に採択される運びとなりました…!


そして今回、モデル事業となり気合いの入った私たちは、スペシャルゲストをお迎えしてさらにパワーアップした第3回勉強会「まちを良くする空き家相談会」を2022年12月11日(日)に開催しました!!


これまでで最大の規模となった今回の相談会。
参加者はゲストの講義やトークセッションに耳を傾け熱心にメモを取るだけでなく、閉会の時間ギリギリまで質問をするなど、これまで以上の盛り上がりを見せました!

今回のnoteでは、その相談会の様子についてお伝えしていきます!

「空き家相談会」主催者:銭湯ぐらし&まめくらしについて

まず最初に、今回の空き家相談会の主催者でもある、小杉湯となりを運営する株式会社銭湯ぐらし代表の加藤優一と、JRの元社宅をリノベーションした高円寺アパートメントを運営する株式会社まめくらしの宮田サラから、これまで取り組んできた活動について紹介しました。


影山知明さん(クルミドコーヒー/胡桃堂喫茶店 店主)の活動

一人目のゲスト講師は西国分寺で「クルミドコーヒー」、国分寺で「胡桃堂喫茶店」という2軒のカフェを営む影山知明さんです。

▼クルミドコーヒー

▼胡桃堂喫茶店


影山さんは新卒でコンサルティング会社に勤めた後、ベンチャーキャピタルでの業務を経験するという、カフェの店長としてはとても異色な経歴の持ち主。
バリバリの金融マンからカフェの店長という劇的なジョブチェンジを行った契機となったのが、実は空き家になってしまった西国分駅側の実家の相続でした。

家族会議で実家を引き継ぐことに決まった当時35歳の影山さん。当初は
空き家をお荷物に感じ、コインパーキングなどの収益不動産にすることも考えたそうです。

それでもせっかく自分が生まれたまち「西国分寺」という場所で何かやるのであれば、もっと良い使い方があるのではないかと思った影山さんは、人と人との繋がりを意識して1階はカフェと事務所、2階から上はシェアハウスという構成の複合施設「マージュ西国分寺」へと2008年5月に建て替えたのです。

当時はシェアハウスがまだ一般的ではなかったので、周囲からの理解を得にくかったそうですが、結果的には10年以上住んでいる人が7〜8割という住人に長く愛される居場所となっているそうです。

1階をカフェにしたのは、パブリックコモン(地域に開く縁側のような場)にしたかったから。
このような考えで誕生したカフェが「クルミドコーヒー」です。
2017年にはさらに2店舗目となる「胡桃堂喫茶店」をオープンさせました。

影山さんがこのような場の運営に携わる上で大切にしているのが「植物が育つように場をつくる」という考え方です。

例えば、マージュ西国分寺のシェアハウスでは、できるだけルールを少なくすることを意識しているそうです。
住人同士がお互いの配慮を忘れず、もし何かあった場合は話し合う。そして一度決めたルールは不変のものとせず、住人の入れ替えなど変化があれば都度改善する。

そうすることで、大家や管理人がいなくても住人同士で話し合いながら状況を改善していくような関係性がつくられています。
そしてカフェは、そうした関係性をシェアハウスの住人間に留めず、まちに広げるための拠点となっています。

このように、最初から計画して理想の場所をつくるのではなく、一本の木から動植物などの生態系が育まれるように、”気がついたらこんな状態になっている”というようにつくられていくまちや生活の魅力を伝えてくれました。

宮崎晃吉さん(株式会社HAGISO 代表取締役)の活動

二人目のゲスト講師は株式会社HAGISOの代表をされている宮崎晃吉さんです。

宮崎さんが空き家活用を始めたきっかけとなったのが、社名の由来にもなっている谷中の最小文化複合施設「HAGISO」です。

▼株式会社HAGISO

▼HAGISO

谷中は寺町でお寺が多いのですが、その中の一つのお寺の住職が所有していたのが当時築50年を超えるアパート「萩荘」でした。
宮崎さんが大学時代に仲間達と一緒にシェアハウスとして住んでいたのですが、東日本大震災後にオーナーから災害時の倒壊の危険性を考えて取り壊すことにしたと告げられます。

萩荘は宮崎さんたちにとって思い入れの強い場所だったので、取り壊す前にせめて「お葬式」をしてあげたいということで、オーナーから許可を得てアートイベント「ハギエンナーレ」を開催しました。

▼ハギエンナーレ

建築家やアーティストを集めて展示会を開催し、3週間で1500人が集まりました。
このイベントがきっかけでオーナーが取り壊すことを考え直し、HAGISOとしてリノベーションすることになりました。

昔の建物を活かして生まれ変わったHAGISOは、カフェ・ギャラリーとして多様な年代の方が訪れており、まちの記憶をとどめるという役割を果たしています。

その後、風呂もキッチンもないHAGISOの事務所に寝泊まりしていた宮崎さんは、周辺の銭湯や飲食店をハシゴする生活をしているうちに、そうした生活にむしろ豊かさを感じるようになりました。
そしてまち全体を一つの宿として見立てる(=”まちやど”)ことで、従来のホテルや旅館の考え方にはない面白さがあるのでは、と言うことに気がつきます。
(この考え方は「まち全体を家と見立てる」銭湯ぐらしの活動との親和性を感じ、空き家を活用していく時の可能性を感じた話しでもありました。)

HAGISOがレセプション(受付)になり、宿泊施設や近隣でオススメのお店を紹介し、谷中のまち全体を一つの宿として楽しんでもらうことで、谷中の魅力に気づいてもらえるのではないか。
そう考えた宮崎さんは、宿泊の拠点となる施設を探し始め、HAGISOの近くに空きアパート「丸越荘」を見つけます。
宮崎さんは、紆余曲折を経て所有者の住所を知ることができ、想いのこもった手紙を出します。そして懸命なアプローチの結果、アパートをリノベーションして宿として使うことが決まりました。
そうしてできたのが「hanare」です。

▼hanare

こうした様々な活動をしていると、周辺の空き家を持つ方から「面白いことやっているね」と声をかけてもらえるようになり、向こうから相談がくるようになりました。
何か楽しいことを一緒にやりたい、そういった大家さんと繋がることで次第に拠点が増えていきました。

活動を通じて繋がった様々な地域の生産者さんから送られてくる食材を使ったお惣菜を提供する食の郵便局「TAYORI」。
TAYORIの店長が販売していた焼き菓子を販売する「TAYORI BAKE」も誕生しました。

その他にも、asatteや西日暮里スクランブルなど、現在運営するお店の数は8つにおよびます。
コロナ禍を経て浮き沈みはありながらも、仲間たちと一緒に谷中を拠点として新たな事業に挑戦し続けています。

▼株式会社HAGISOが展開する店舗・サービス一覧

トークセッション 〜空き家活用について考える〜

影山さんと宮崎さんの活動紹介が終わった後は、加藤と宮田も入り4人でトークセッションを行いました。

さて、ここからは空き家を使いたい「事業者」・空き家を持つ「大家」・銭湯ぐらしとまめくらしが描くまちづくりの舞台である「高円寺」などの視点からトークセッションの内容を整理して振り返っていきます。


事業者から見た空き家活用

ー宮崎さんはたくさんの空き家を活用されてきましたが、いつもどのようなことを心掛けていますか。

宮崎「大家さんとの関係性がとても大事だと思います。特に一番最初のHAGISOの大家さんとは、大家と店子の関係性を超えて一心同体みたいになっていて。もちろん家賃は発生していますが、家賃以上のものを得ているというか。大家さんはスタッフのことも可愛がってくれるし味方になってくれます。僕らもそういったgiveをもらえると家賃とは別の何かで返したいと考えるようになっています。でも大家さんにも2種類いて、ただ利回りを求めてくる大家さんと、一緒に楽しいことをしようと考えている大家さんがいます。ぼくらとしては後者の人たちと一緒にやりたいので、そういった大家さんと出会えることはとても重要です。もちろん事業性も見ますよ。でも前者だととてもビジネスライクになってしまう。」

ー収益性だけに囚われず、大家が事業者と一緒になって面白がることが大事なのですね。

宮崎「一方で、借主である事業者の目線に立てば、借りることに難しさもあります。特に多拠点でやっていると、賃料が積み重なって負担が重くなります。事業をする中で場所としての価値が上がっても直接自分の資産にはならず、大家さんのものとなってしまう。でも大家さんだって自分が受益している立場であることは分かっているので、賃料を相場より安くしてくれたりします。事業者も大家さんも一緒になって長期的な目線でやっていくことが大事だと思います。」

大家から見た空き家活用

ー影山さんはHAGISOの大家さんのように、お店を人に貸すという選択肢もあったと思います。なぜ自分でやることにしたのでしょうか?

影山「行きがかり上自分でやることになった、という感じですかね(笑)。2階から上はシェアハウスをつくると決めていましたが、そうした関係性を建物の中に閉じないようにするには、1階は地域との接続点にする必要がある。その接続点となるカフェの運営をチェーン店に任せたら上手くいかないので、カフェの経験なんてなかったけど、結局自分でやる方がシームレスに動くと思いました。」

ー影山さんの中で、借金をしてシェアハウスを建てたり、未経験のカフェをやると決めた時に迷いはありましたか?

影山「シェアハウスやカフェの運営が上手くいったことを後から聞くと、とても綺麗な絵に聞こえてしまうのですが、本当はやっぱり辞めておこうかと迷ったこともあります。ただ、最後に決断して踏み込む瞬間があって、その後は色んなことが自然に動き出しました。ぼくの場合のその瞬間は2億円くらいの借金をしてシェアハウスをつくると決めた時と、カフェを自分でやるって決めた時です。覚悟を持って意思決定すると、そういう覚悟があるのならとサポートしてくれる人が出てくるなど、今まで自分ではできないと思っていたのに、後から不思議と仲間や手段が集まっていくのです。

ー影山さんの大家としての関わり度合いを教えてください。

影山「マージュ西国分寺の日々の運営についてはかなり手離れできています。ただ、そうなるためには入居という初期のタイミングでどう話すかが大事になってきます。普通の賃貸借では借主(住人)はお客様意識となることが多いですが、共用部もあるシェアハウス運営において住人が受け身だと上手くいきません。大家や管理人に声をかけるのではなく住人みんなで話し合えるようにならなくてはいけません。」

ーシェアハウスの住人の中に、リーダー的存在はいますか?また、そういう人とは大家としてどのように接していますか?

影山「分からないことはこの人に聞けば大丈夫、というような人はいます。ただ、そうやって働いてくれる人に金銭的な見返りをあげると、せっかく善意のためにやってくれていたのに”お金のため”に変わってしまう。そしてそれを見た人が、じゃああの人に任せればいいと考えてしまい、結果として他の人の当事者意識も薄れる。金銭的な見返りではなく、いつもありがとうと声をかけるなどを意識する必要があると思います。」

宮崎「『経営者と従業員』や『大家と店子』も同じことが言えますよね。管理という側面が強いと従業員や店子の当事者意識が薄れる。任せるという意味ではある程度性善説でいく勇気が必要だと思います。」


高円寺というまちについて

ー影山さんと宮崎さんから見た高円寺の印象や、高円寺のポテンシャルを踏まえたアドバイス等あれば教えてください。

宮崎「谷中は寺町なので実はほとんど借地です。土地に対する所有権が明確でなく、境界が曖昧なので、公園の整備も住人が自分たちでやるなど、近代的なまちと比較して公私の役割が曖昧です。高円寺にも似たようなウェットな印象を感じますし、そういう場所は魅力的だと思います。谷中もそうですが、高円寺も寺が多いのであれば、お寺とうまく連携できたらいいかもしれないですね。」

影山「高円寺は意志があったりやりたいことがある人が多くて羨ましいと思います。実は国分寺はそういった『やりたい』という人が少ない印象です。だからこそ、カフェが無目的に立ち寄ってくれる人がそこに集まって次第にやりたいことを見出してくれる場となりますが、それでも時間がかかってしまう。小杉湯となりや高円寺アパートメントのような絵姿がすぐに出てくるのは高円寺ならではなのだと思います。」

ー銭湯ぐらしは宮崎さんの活動の影響を少なからず受けていて、銭湯ぐらしでも銭湯のような地域の資源を活かした「まちを家に見立てる」まちづくりを目指しています。

宮崎「今はリノベーションが市民権を得ている時代ですが、建物を変えることに主眼を置いてしまうと、ボタンのかけ違いが生じてしまう。例えば銭湯が銭湯カフェに変わってしまうよりは、銭湯であり続けることの方が絶対価値があると思います。銭湯そのものを変えるのではなく、それこそ銭湯ぐらしが銭湯のとなりで「小杉湯となり」を運営したり、”風呂なし”アパートを”銭湯付き”アパートと呼んだように、思い込みを外して銭湯のあり方や関係性を再定義するのが大事だと思います。」

影山さんと宮崎さんからのメッセージ

ー最後に、空き家の大家さんへ一言メッセージをお願いします!

宮崎「大家さんを励ましたいんです。事業をやりたい人たちは沢山いるので、あとはまちの大家さん次第だと思っています。前向きに楽しんでいる大家さんがぼくの周りには沢山いて、大家さんがぼくたちのような事業者の活動を誇り高く思って自慢してくれるのでより一層がんばれています。そういった大家さんの姿だったり、関係性をもっと知ってほしいですね。」

影山「ぼくは大家の立場も借り手の立場も経験していますが、正直なところ、借り手側がどれだけ大変か、借りる側の気持ちを本当に分かっていない大家さんが多いと思います。少しでも運営に関わるなど、ある程度借り手に寄り添って境界線を超えられる大家さんが増えてくるといいなと思います。そういった大家さんとぜひご一緒できたら嬉しいです。」


今後、私たちが目指す「まちを家に見立てるまちづくり」

あまりにも濃密な相談会だったので、とても長い記事となってしまいました。
まずはここまで読んでくださって、本当にありがとうございます…!!

トークセッションにもありましたが、私たちは地域の資源を活用することで、「まちを家に見立てるまちづくり」を目指しています。

銭湯がまちの「浴室」であるように、空き物件を活用することで、まちの「台所」や「書斎」、「寝室」を増やしていく。自宅で生活機能を所有しきるのではなく、まち全体で共有することで豊かな生活環境や地域とのつながりを得ることができると考えています。
今後も、銭湯ぐらしは高円寺・中野エリアを中心に活用に困ってしまっている空き家の活用について取り組んでいきます!


私たちと一緒に、高円寺を豊かで明るく楽しいまちにしませんか?
前向きに空き家の活用をしたいと思ってくださった方々がいれば、是非是非ご連絡をお待ちしております!!

メールアドレス:tonari1010.realestate@gmail.com


なお、私たちの活動について、株式会社LIFULL様に取材していただきました。今回の勉強会についても取り上げてもらっていますので、ぜひぜひご覧ください!
https://www.homes.co.jp/cont/press/rent/rent_01049/


銭湯ぐらし不動産チーム

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銭湯ぐらし
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