恵比寿湯「銭湯は人と人の"繋がり”を感じる大切な場所でありたい」
銭湯と人の記事を開いていただきありがとうございます!
湯どんぶり栄湯のコミュニティマネージャーをしているふがしです。
”銭湯と人”はお風呂やサウナの設備(機能)的な価値ではなく、温浴施設で働く「人」の想いを世の中に発信するために始めました。そして「想い」を受け取った方が「応援したい」と思って記事にした銭湯・サウナ施設に足を運んでくれたら嬉しいです。
今回は湯どんぶりの待合室(コミュニティ)のメンバーと一緒に市川駅で営業をしている恵比寿湯にお伺いしてお話を伺ってきました。恵比寿湯のご主人はたったひとりで店を切り盛りされており、大変多忙な中「市川市の銭湯を盛り上げるために」と取材を快く引き受けていただきました。
最後まで読んでいただき「応援したい」と思ったら是非、恵比寿湯に足を運んでみてください。とても優しいご主人が出迎えてくれます。
恵比寿湯の紹介と歴史
恵比寿湯はJR市川駅より徒歩15分ほど歩いた閑静な住宅街の中にある銭湯です。サウナ・水風呂は無いのですが1つだけ小部屋になっている浴槽があります。浴槽から出る蒸気が充満し、まるで蒸し風呂のようでした。そのお風呂に入ったあとにカランの水を浴びて温冷浴をするだけでもとても気持ちがいいです。
ー恵比寿湯はいつ頃開業されたのでしょうか?
正確な年代まではわからないのですが昭和30年代です。ですから歴史的には70年弱といったところでしょうか。
ー恵比寿湯という名前が素敵ですよね。なんだか縁起が良い気がします。
わたしも名前の由来はちゃんと聞いたわけではないのですが「縁起が良いから」という理由だったと思います。今はもう無いのですが市川駅の目の前に大黒湯という銭湯もあったんですよ。七福神のようですよね。
ー大黒湯は今はもう無いと思いますがいつ頃まで営業されていたのでしょうか?
大黒湯は昭和60年代まではあったと思います。昔は市川は行徳エリアまで含めると銭湯が55軒ほどあったのですが駅から近いところほど早くに店を閉めてしまいましたね。昔は銭湯も好景気な時代があったんですが家風呂が普及してからどんどん厳しくなってね・・・そして設備も古くなってきて修理などしなきゃいけなくても「投資しても回収できるのか?」と不安になるんです。だから、不動産会社に「このまま銭湯を続けるより土地を売ったほうがよくないですか?」と言われたらね・・・・。
ーご主人はどうして銭湯を継がれたのでしょうか?
わたしの祖父が店を開業したのでわたしが3代目なのですが正直、レールに乗っかって継ぎました。高校を卒業してすぐに店を手伝いました。
父親の姿を見ていたら「自分は将来は銭湯で働くんだ」と完全に刷り込まれていた(笑)あと以前は好景気だったので不安もなかったし、個人的な時間も取れやすかったんです。今は全くですけど(笑)
ーお店のお客様の数は昔と比べて大分変わってしまいましたか?
はい。以前は数百名来ていましたが今は100名くらいかな。
ただありがたいことに若い方も最近は来てくれて常連さんが「ここは若い方も来るね」と言ってくれるんです。若い方が銭湯に来てくれるのは本当に嬉しいので若い方も大歓迎です。でもうちは設備も古いから若い方が喜んでくれているのか不安ではありますが・・・
ーお店は確かひとりで切り盛りされていらっしゃると聞きました。
はい、その通りです。コインランドリーだけ掃除してくれる方が居ますが基本的にわたしひとりで店を切り盛りしています。
以前は父親や姉が手伝ってくれていたのですが父親は亡くなり、姉は結婚して家を出ていってしまったので今はひとりになりました。
ーひとりということは営業中は番台から出られないですよね・・・。食事やトイレなどの休憩はどうしていらっしゃるんでしょうか?
トイレは基本は我慢です(笑)どうしても辛いときはちょっと席を外しますがわたしが番台に居ないと常連さんは分かってくれて待合室で待っててくれます。そして私が戻ってくるとお金を払ってお風呂に入っていかれます。
ーご飯はどうされているのでしょうか?
空腹になることもありますがいつお客さんが来るかわからない状態なので番台でご飯を食べることはしません。小銭触った手でご飯を食べるのも衛生的に良くないですからね。そしてそれが原因で体調を崩してしまったら店を休まなきゃいけないのでやっぱり我慢です(笑)
ご主人のお風呂のこだわり
ーご主人のお風呂のこだわりを教えてください。
うちはお風呂のお湯の温度を高くしています。家風呂では味わえない熱湯を体験してほしいと思っています。「あぁぁ~っ!!」と言いながらお風呂に浸かると銭湯に来たなという感じになると思いますし、なにより私自身が熱湯が好きだからです。
ー確かに恵比寿湯のお風呂は熱めですよね!お風呂の温度は何度ですか?
わたしはそう思わないんですけそね(笑)
うちは43度にしています。お客さんから「ちょっと熱いよ」と言われたので父親の代のときよりは温度は下げたんですけどね。
ー何度下げたんでしょうか?
0.5度です(笑)
でも、0.5度でも体感的には大分違うらしく今では常連さんも「ここの風呂の熱さがいい」と言ってくれているのでありがたいです。
ーお風呂はなにで沸かしているのでしょうか?
うちは重油です。ひとりで店をやっているので薪とかだと手がまわないので重油にしています。重油だと自動で温度調整などしてくれるので助かっています。重油じゃなかったら店を続けるのは難しかったと思うのですが・・・
ただ燃料代が高騰しています。以前に比べて2倍近くなっており、こればかりは仕方ないのですがやっぱりキツイですよね。
井戸が潰れてしまい、店の存続の危機
ーお店を一時期休んでいたと思いますが理由はなんだったのでしょうか?
実は井戸が潰れてしまいました。水が出なくて砂しか出なくなってしまったのです。ただでさえ業者が少ないのに運が悪いことにコロナの真っ最中で更に半導体が不足している騒動の最中だったので業者が全く見つかりませんでした。
ー業者はどのようにして見つけたのでしょうか?
常連さんの中に銭湯が好きな方が居て熱心に探してくれたんです。
家庭向けの業者が多く、銭湯向けの業者が本当に少ないので「もう見つからないのかな・・・」と思いましたが一度は断れてしまった業者にも根気よく交渉した結果、なんとかお願いすることができました。3ヶ月間休んだのですがそこが見つからなかったらもっと休んでいたことでしょうね・・・。
ー3ヶ月もお店を休まれていたのですね・・・。
はい。業者が見つからない日々が続いたので「もう店を辞める時かもしれない」と何度も悩みました。井戸を掘る工事も決して安くはないのですが、応援してくれる方の存在が居たので「期待に応えたい」と気持ちが変わりました。
業者が見つかってから工事が始まった間、私はすることがなかったのでよく店の前に居たんです。そうしたら常連さんが声を掛けてくれました。そういった声があったから「頑張ろう」と思えました。
今後の展望、そしてご主人にとっての「銭湯」とは
ー今後、なにかやりたいと思うことがあればお聞かせください。
グッズを作れたら作りたいですね。今は千葉ジェッツとコラボしたスタンプラリーの景品がありますが、独自のものがあったら面白いのかなって思います。そういえば宣伝をしていないのにゴジラのグッズがすぐに完売したのには驚きました。まぁ、ゴジラは往年のファンが居るからでしょうが。
ーグッズがあるといいですよね。実はわたしは恵比寿湯でゆっポくんのTシャツを購入しに来たことがあります。
そうだったのですね!ありがとうございます。以前、江戸川区と千葉県でスタンプラリーのコラボした際に今まで来たことがない方も沢山来てくれました。
ー最後に質問させてください。ご主人にとって銭湯とはどんなところですか?
銭湯とはコミュニケーションの場ですね。それがなかったらつまらない世の中になってしまうと思います。だから私もお客さんとも話しますし、お客さん同士の会話を聞いていると幸せな気持ちになります。
あと最近はマナーを学ぶ場が少ないので銭湯がマナーが学ぶ場所としても機能しているといいなと思います。そしてうちは小さなお子さんも歓迎しています。幼少の頃に銭湯に行った経験があると大人になったときに思い出して銭湯に行ってくれると思うからです。そうして銭湯文化が長く続くように守っていきたいですね。市川市の銭湯は冒頭でも話したとおり、10分の1になってしまいました。「これ以上減らしたくない」という思いです。
だからうちの店だけではなく市川市、いや千葉県全体の銭湯が東京の銭湯のように盛り上がると嬉しいです。
ー今日はありがとうございました!またお風呂入りに来ます!
こちらこそありがとうございました。私はアナログな人間でスマホも持っていないのでSNSなど一切やっていません。だからこうして発信してくださると大変助かります。また是非お越しくださいね。