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微小表象

行動の傾向性や慣習、情念は、必ずしも意識されない微小表象に由来し、それは意志決定においても「強いずに傾ける」。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))


 「あらゆる刻印が結果をもっていますが、すべての結果が常に目立つとはかぎりません。私が一方よりも他方を向くとき、それはしばしば微小な刻印の連鎖によるのです。そうした微小な刻印を、私は意識しているわけではありませんが、これらの刻印はひとつの運動を他の運動より少しだけ起りにくくするのです。熟慮を経ない私たちの行動はすべて、微小表象の協働の結果です。私たちの熟慮において多くの感応力を与える慣習や情念でさえ、それに由来しています。というのも、こうした習慣は少しずつ生まれるものですし、したがって微小表象なくして、私たちはそういう目立つ態勢に到ることはないからです。すでに指摘したように、そうした微小表象のもたらす結果を道徳において否定する者は、自然学において、感じとれない微粒子を否定するようなひどい教育を受けた人々の轍を踏むことになります。しかしながら、自由について語る人々のなかには、均衡を破りうるこれら感じとれない刻印に注意を払わず、道徳的行為におけるまったき非決定を思い描く人を見かけます。これではまるで、二つの牧草地の真中に置かれた「ビュリダンのロバ」の非決定と同じです。これについては後にもっと詳しく話し合いましょう。でもこれらの刻印が、強いずに傾けるものであることは認めておきます。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『人間知性新論』第二部・第一章[一五]、ライプニッツ著作集4、p.120、[谷川多佳子・福島清紀・岡部英男・1993])


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