無数の可能的世界から現実的事象へ
全宇宙とその可能的世界を表出し現実存在へ向おうとする無数の存在者を含む全宇宙の、無数の可能的系列から一意の現実的宇宙が決まってくるような、この宇宙を支配する法則が存在する。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))
「可能なるものが有する無限性は、それがどれほど大きなものであっても、神の知恵の無限性には及ばない。神は可能なものをすべて知っているからである。神の知性の対象は可能なものを超えることがない―――としか考えられない―――のだから神の知恵が可能なものを外延的に凌駕することはないとしても、神の知恵は無限に無限な結び付きをもたらし、それについて同じだけ反省を加えているのだから、内包的には可能なものを凌駕すると言える。神の知恵は、すべての可能的なものを包含しそれを精査し、比較し、相互に考量して、完全性もしくは不完全性の程度、強弱、善悪を見積もるが、それだけでは満足しない。それは有限なる結び付きを上回り、無限の結び付きを無限に作る。つまり、各々が無数の被造物を含むような宇宙の可能的系列を無限に作るのである。こうすることによって神の知恵は、それまで個々別々に検討していた可能的なものを、無限の宇宙体系の内に分配し、それぞれを比較する。これらをすべて比較し反省したところからの結果が、すべての可能な体系の中で最善なるものの選択となり、こうして神の知恵は自らの善意を余すところなく満足させる。以上がまさしく、現実的宇宙を作る計画なのである。彼の知恵のこうした働きのすべては、そこに働き相互の秩序と本性上の先行性とがあるが、それらは常に一緒に生じているのであり、時間的な先行性はそこにはない。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『弁神論』本論[第二部]二二五、ライプニッツ著作集6、pp.329-330、[佐々木能章・1990])
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