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真の哲学と、未来への希望


 「また、これらの原理から導き出し得るあらゆる真理を、かように導出してしまうまでには、幾世紀もが流れるかもしれないことも、私は充分に心得ています。なぜならば、今後発見されるはずの真理の大部分は、或る特殊な経験に依存し、この経験は決して偶然に出会われるものではなく、極めて知能のすぐれた人たちによって、配意と費用とをかけて求められねばならず、そしてこれをうまく利用することのできる同じ人が、そうした経験を行う能力を有つということは、困難であろうからであります。さらにまた、大部分の知能のすぐれた人たちは、彼らが現在まで行われてきた哲学のうちに認めた欠陥の故に、哲学全体に対して悪い考えを抱き、よりよい哲学を求めることに、専念できないだろうからであります。しかしながら結局、これら(私の)原理と、他の人々のあらゆる原理との間に見出される差異、ならびに前者から導き出される諸真理の堂々たる系列とが、これら真理の探究を続けることがいかに重要であり、そしてこれらの真理が知恵のどのような段階に、生活のどのような完成に、またどのような幸福にまで導き得るかを、彼らに認識せしめるならば、私はあえて信ずるのですが、かように有益な研究に従事しようと試みない人、或いは少なくとも、成果をあげてこれに従事するものに好意を示し、その全能力をあげて援助することを望まない人はないでありましょう。願わくば我々の子孫がその成果を見んことを云々。」
(ルネ・デカルト(1596-1650)『哲学原理』仏訳者への著者の書簡、p.29、[桂寿一・1964])
(索引:哲学、特殊な経験、実験)

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