世界で一番住みたい街
寂しがり屋だけど独りは好き
私がそのアパートに住む事を決めたのは、いくつかの理由があった。そもそも私は、我が事ながらひとり暮らし否定派だった。
だけど家から通おうにも公共交通機関を3つも4つも乗り継がねばならず、帰りに至ってはバスが無い時間。毎日家族に迎えを頼もうというのは、いくらなんでも無理があった。
そもそも通う為の労力もそうだが、資金面でもどう考えても一人暮らしした方が経済的だった。
ひとり暮らし否定派の主な理由としては、現在進行形で抱えている課題の一つである「寂しがり屋」が関係していたのだと思う。
幸いな事に、いざひとり暮らしをはじめてみれば1人は1人で性に合っていたようで、ホームシックというものを感じたことは本当に一度も無かった。頑張れば自力で帰れる場所(県内)というのも味方してくれたのだと思うが、兎にも角にも私のひとり暮らしは順風満帆なスタートだった。
2つの候補どちらも選ばず
話をアパートを決める件に戻すと、季節をもう覚えていないが、両親と共に大学の入学以降の説明を聞きにいった時のことだ。(私が大学に合格したのは11月だったので、おそらくは冬)
父「不動産会社が第二食堂ってところに集まっているらしいから、ご飯食べがてら行ってみよう。」
細かな部分を覚えていないが、何社かの不動産屋さんと、テーブルいっぱいに敷き詰められた間取りや立地などの条件が書かれた紙のカタログがあったのだと思う。
大学進学自体を家族全体にあまり歓迎されてはいなかった(喜んでくれてはいたが、生活面が苦しかったのは確か)のを知っていた私は、極力安いアパートを探した。
そこで選んだ候補は2つだった。
1つ目は家賃1ヶ月1万円。敷金礼金ゼロという破格の物件。が、内見に行ってすべてを察した。
オンボロなんてレベルではない。子供の性別が男だからといって、いくらなんでも流石の両親も不憫に思ってくれるレベル。すぐにその場を後にし、次の候補地へ。
2つ目は家賃1ヶ月2万円。敷金礼金はかかったが、1Kで7畳半、バス・トイレ別と中々悪くなかった。
しかし、「クーラーがない・・・」私はそう呟いた。35度を平気で毎日越えてくる今ほどではないが、当時だって夏は真夏日が当たり前。
はじめてのひとり暮らし。その場限りの良い子ちゃんを演じて両親の内申点を稼ぐよりも、4年間快適に過ごしたいという欲の方が余裕で勝ってしまった私。
両親もそんな事を言いだす息子に対し、やれやれという感覚でも無かったようで「立地の事はわからんけど、共用じゃない風呂・トイレと最低限のプライバシー、月に5万も出せないけど・・・まあ3万台までなら」と思ってくれていたようである。
「クーラーがない・・・」その一言を聞き逃さなかった大家さん。
「ああ、それならここからすぐの所に間取り条件は一緒で、エアコン付けたところがありますよ。5千円だけ月額増えちゃいますけど。同い年の子もう2人決まっているのよ。変な話ですけど、ちょうどもう1部屋しか空いてないんですよ。」
「そちら、見せて下さい!」
つづく(最近このパターン多いな!1話完結にしろよ!)
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