薄い文庫本を作った話5

ざっくりと文庫本にする原稿が整い、A6サイズで100ページほどのものができた。
このデータを挿絵を書く方に見てもらいたい、と思った時に、メールのやり取りでは何かと不便だということになった。
クラウドで自分の所有する音楽が聴ける世の中であるからして、きっとそういうサービスがあるのだろうという予感はするのだが、具体的にはわからない。
共同編集作業に適したクラウドのサービスを探したが、良くわからないなりに知名度があった最小機能のDropboxを新規で使用することにした。

Dropboxは単純なだけに使い勝手がいい。スマホとPCで同じものが使える見れるという重宝さもある。最初は同期や共有の方法でドタバタしたが、すぐに慣れた。
原稿ができると共有BOXにアップロードし、修正する度に上書きで差し替えていけばいいのが、とにかく楽だった。複数人数でもそれが可能だと分かったのは大きな収穫だった。

挿絵担当の絵師と、装丁や構成について意見をもらった知人と、何度もやり取りした。20年前ならコピーで作った借原稿を郵送で送ったりしたんだろう。時代って容赦ねえなと、浦島太郎の心境で作業は進んだ。

あっちを削ってこっちを増やして、こっちを追加してそっちは消して。ノンブル(ページ番号)を出したり消したりする、地味な割に面倒な作業の連続に、自分ではもうこんくらいでいいんじゃないかという妥協が生まれやすい。そこに他者の目を入れることで、クオリティがぐっと上がったことは間違いなかった。

究極、金さえあれば、本は誰でも作れる。どんな状態でも発行はできる。
でも印刷屋は基本的に印刷しかしないのである。ノンブルが飛んでいようが、誤字や脱字があろうが、そのままの形で刷られてしまう。
持つべきものは、価値観を共有できる友である。恥を忍んで、無理をお願いして、原稿を見てもらって本当によかった。

決定原稿直前に、セブンイレブンのコピー機のPDF小冊子印刷機能で、試し刷りをした。紙に刷ることによってページ送りや紙面のレイアウトの確認がよりはっきりと確認できた。イラストが潰れていないかなどもここである程度チェックできる。ここで修正や微調整をして、印刷屋に入稿となる。

次回は入稿と納品、配布について書きたいと思う。

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