五十音川柳大会(ポルノグラファー&インディゴ編)を振り返って
前回に引き続き、連休後半に私が世話人として関わった、川柳大会からも好きな句を紹介したい。
ところで俳句と川柳の違いとはなんだろう。
自分で大会とぶち上げておきながら、門外漢の私には厳密な区分ができない。
季語なし、切れ字なしでもって機械的に川柳とするのも、なんだかしっくりこない。
というのも、季語や切れ字を含まない俳句も世の中には沢山あるし、自然や心境をよむ川柳だって沢山あるからだ。
それでも、と素人なりにあえて私が線をひいたのは、
俳句には、自然描写が主でそこに仮託した心象が描かれているか。
川柳には、人事描写が主で一読了解。そこに諧謔や穿ちがあるか。
の点である。今回は後者の川柳大会であるから、そこに基準を置いて選んだ。
大会は季語なし切れ字なしという気軽さもあって、沢山の方々に参加いただき、全部で110句の投句を頂いた。その中から僭越ながら5句選ばせていただいた。
○「手にしたい不実な君の誠実を」non
五十音中盤の【て】の句。
わかりやすい上に、不実と誠実が対になって韻を踏む感じもいい。ドラマの中では切実な感情であるので、読後に切なさが去来する。
○「好きなんです肩に伝わる君の熱」みぃ
序盤の【す】に「好きなんです 肩に埋める 俺の恋」と対になって投句されたもの。身体感覚のある歌や句を、世話人である私が好むのもあるが、あの場面の2人の近さが追体験できるような距離感がいい。
○「彷徨えど大学生にぶつからず」ヨル。
【さ】の句。ドラマチックな句が次々と投句されるなか、悠然とその「軽み」と「諧謔」で独特の存在感を放っている。ぶつからなかったら物語が始まらない。ウロウロしている木島が思い浮かぶとなかなか滑稽だ。
川柳のど真ん中をちゃんと射抜いてるのは、この句だったかもしれない。(いやマジで)
○「何もかも捨ててお前と生きれたら」鮎
後半【な】の句。ポルノグラファーの句が多く投句される中、インディゴ劇中の城戸独白の様な、切なさが光った。だったらいいよな、だったらどうなっていたんだろう。そういうifが含まれる表現も川柳らしいと思った。
○「苦しくてもう書けないと泣いた夜」チャウチャウ
まだエンジンがかかりきる前。【く】の句。
世話人が木島ファンというのもあるが、ストレートな心情を無理なく575にまとめていて、流行歌の詞のようである。とても座りがいい。口に出して心地いいというのも定型詩の魅力だとおもう。
川柳の目で見ると惜しくも選外になってしまうのだが、俳句的には完成度の高い下記の2句も捨てがたい。
○「隠語から紡がれていく夏の恋」sakura
スタート間もない【い】の句。原稿用紙と夏空が繋がる爽やかな情景。隠語という湿った語句と、夏の恋という炭酸水のような語句が同居する感じは、ポルノグラファーの世界観を端的に表しているのではないだろうか。
○「魂の芯がとろりと溶け儚夢」もー
【た】の句。幻想俳句のごとき佇まい。儚夢はロマンとよむのだろうか。浪漫という漢字もあるが、あえての「儚夢」だろう。魂の芯が溶けるという表現には独特の境地がある。画数の多い字が並ぶ中「とろり」というひらがなが妙に生々しく迫るのもいい。
興に乗って随分書いてしまった…
繰り返し申し上げるが、これはあくまでも世話人の好みで選んだもので、句の優劣を付けるものではない。
感想も作者の心境とはまったく別の物かもしれない。ただ単に世話人が好きなものを、好きなように語っているだけである。失礼があったらお詫びしたい。ほんとすみません、ごめんまじで。許してください、調子乗りました。
(とくに私は、字余り字足らずにはこだわりが強く、どうしても選べなかった句もあります…)
他にもいい語句、空気感、スタイルなどお勧めしたい句はたくさんあった。なにせ110句である。なんの予告もなしに無計画に始めたのに、力作ばかりバンバン投句されるガチンコの空気に一番震えていたのは私だった。
皆さんも恐れず、自分の解釈でもって俳句や短歌に挑んで頂きたい。
そして次回のポルノグラファー句会(あるのかな…やれんのかな…)の際にはぜひともご参加を!
皆さま、ありがとうございました。