アメリカGPのアップデート競争:レッドブルとマクラーレンの挑戦と限界
アメリカGPでのレッドブルとマクラーレンのアップデート競争は、どちらも決して成功とは言えない結果に終わった。序盤から両チームは異なる方向性で新しいパーツを投入し、その成果をコース上で試みたが、最終的にはどちらもフェラーリの牙城を崩すには至らなかった。獲得したポイントではレッドブルがわずかに上回ったが、実際にはフェラーリが最も強力なパフォーマンスを見せた週末となった。
レッドブルの挑戦と課題
レッドブルはRB20にフロアとサイドポッドの改良を施し、シングルラップの競争力を取り戻しつつあった。実際、マックス・フェルスタッペンはスプリントの予選でポールポジションを獲得したが、それはルイス・ハミルトンが黄旗でアタックを中断された恩恵を受けた結果でもあった。メインレースの予選では、逆にフェルスタッペンがジョージ・ラッセルのクラッシュによってポールを逃し、そのチャンスをランド・ノリスが掴んだ。
レースでのレッドブルは依然として不安定だった。スプリントレースこそフェルスタッペンが制したものの、レース後の彼のリアタイヤは、ほとんど余力が残っていなかった。そのため、日曜日のメインレースに向けてレッドブルは対応策を講じたが、その結果としてアンダーステアが発生し、ピットストップでのフロントウイング調整でも解決には至らなかった。ハードタイヤに交換した後、さらに悪化したバランスにフェルスタッペンは不満を漏らし、「バランスが合わない。もう土曜日のようには攻められない」と嘆いた。
ヘルムート・マルコもまた、セッティングの過剰な調整が裏目に出たことを認めている。「リアタイヤに負担をかけないようにしすぎた結果、行き過ぎてしまった。ルクレールのタイヤがすぐに傷むと思ったが、実際にはこちらが問題を抱えたんだ」
レッドブルはリアタイヤへの負担を減らすためにセッティングを変えたが、それが過度に作用し、逆にアンダーステアを引き起こしてしまったのだ。このような状況で、レッドブルは本来の強さを取り戻すにはまだ時間がかかることを示してしまった。
「確かに目に見える進歩を遂げた。しかし、マクラーレンには十分だったが、フェラーリには全く太刀打ちできなかった」とマルコは述べた。
マクラーレンの改良と苦戦
一方で、マクラーレンはシーズン後半に向けて勢いを保とうと6つのエリアでマシンを改良した。新しいフロントウイング、修正されたウィッシュボーンとブレーキダクト、そしてビームウイングなどが導入されたが、その効果は期待したほどではなかった。
特にランド・ノリスはスプリントでもメインレースでも渋滞に巻き込まれ、戦略的に苦しい展開を強いられた。ノリスは第1スティントでタイヤを温存して長く走り、第2スティントでのアタックに賭けたが、フェルスタッペンを抜いた後にペナルティを受ける結果となり、その努力が報われることはなかった。
マクラーレンのアンドレア・ステラは、アップグレードによる競争力低下の兆候を否定しつつも、オースティンが今季で最も厳しいコースになることを予測していたと語った。
「データを見る限り、我々は進歩している。しかし、オースティンが残りのスケジュールの中で最も厳しいコースになることは、事前にわかっていた」
増大するフェラーリの存在感
データ上ではマシンが進歩していることを示していたが、実際にはフェラーリには太刀打ちできず、レッドブルとも互角の戦いに終始した。週末を通じてセットアップの変更やドライバーへの指示が行われたものの、フェラーリとの差を埋めるには至らなかった。
フェラーリはスプリントとメインレースで計55ポイントを獲得し、レッドブルやマクラーレンにとって脅威となる存在感を示した。フレデリック・バスールは、スプリントレースでも、もっと早い段階で前に出ていれば異なる結果が得られたかもしれないと述べ、フェラーリの強さが際立った週末だったことを示唆している。彼らのマシンはタイヤの消耗が少なく、今後のレースでもその優位性が鍵を握る可能性が高い。
レッドブルとマクラーレンに残された課題
結果として、レッドブルとマクラーレンのアップデートは期待されたほどの成果を上げることはできなかった。両チームともにシーズン終盤に向けての改善を模索し続けているが、アメリカGPでの結果は彼らにさらなる課題を突きつけた。レッドブルはかつての強さを取り戻すために、マクラーレンは競争力を保つために、次戦以降でさらなる進化を遂げる必要がある。
両者のアップデート競争は引き分けに終わったが、その背後には各チームの異なる課題と限界が浮き彫りになった。フェルスタッペンとノリスがコクピットで感じたマシンの不安定さは、まだ完全には克服されていない問題であり、彼らが本来の競争力を発揮するためにはさらなる改善が必要であることを物語っている。シーズン残り6戦、各チームがどのようにアップデートを進め、フェラーリに挑むのか、その戦いはますます興味深いものとなるだろう。