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「正解のない問題」をどう考えるか?

結論から先に述べますと、「多目的最適化問題(Multi-objective Optimization Problem)」のシミュレーション手法が参考になります。
シミュレーションには、数式モデル化やプログラミングの知識が必要になりますが、途中段階を飛ばして「結果を考察してみる」だけでも、考え方のポイントは抑えることができます。

我々の身近にある問題の多くは「トレードオフ(何かを得ると、別の何かを失う、相容れない関係)」条件下にあります。「品質とコスト」「軽量化と強度」などはトレードオフの関係です。他にも様々なパラメータ(媒介変数)が互いに影響を及ぼし合って世の中が成り立っていますが、より良い条件を満たす「最適な組み合わせ」を導き出すことが「正解のない問題を解く」ことにつながります。

例として、以下のようなものが当てはまります。

○首都圏から関西地方に移動する
電車と新幹線を乗り継ぐ他に、空港へのアクセスが良ければ飛行機、費用を抑えたい場合は高速バスも使えます。最終便を逃した場合は、高速道路を車で飛ばせば始発便よりも早く到着できます。このように出発地点と到着地点のアクセス、移動する時間帯や到着までの時間的猶予、移動の快適さと予算の兼ね合いなどから、最適な組み合わせの経路を選択します。

○不動産物件を探す
一般的に都市中心部からの移動時間に比例して地価は下がり、最寄駅からの距離、築年数、間取りなどで物件の価格は変わります。「遠くても新しい方が」「古くても広い方が」「狭くても近い方が」など、選択基準は人それぞれ異なります。多くの選択肢から、要望になるべく近い条件の物件を探して絞り込み、その中から最終決定します。

主要な選択項目を書き出して、それに優先度をつけるだけでも、頭の中はかなりスッキリするはずです。複数のメンバーで意思決定を行う場合は、項目と優先度を予め一致させておくことが納得感につながります。

仮に、あなたが経営会議のメンバーだったとしましょう。いくつかの提案の中から、組織にとって最適な計画を選択する相談になりますが、シミュレーション結果を評価する際には以下の2点に注目してください。

パレート解(またはパレート最適解)
パレートフロント(またはパレートフロンティア)

他の解に優越されない(他の目的関数を劣化させなければ、それ以上は改善できない)優れた条件にある組み合わせが「パレート解」です。
その集合が「パレートフロント」であり、シミュレーションされたグラフ上には境界(線?面?帯?のようなもの)が形成されます。

このパレートフロントに「なるべく近い解」が有利な条件となるため、厳しい競争環境にある場合や、収益構造を大きく改善する必要がある場合などは、そこを意識して選択することが大切です。
パレートフロントを突き抜けて「実行可能領域」からはみ出してしまう条件では、計画は実現できずプロジェクトが破綻します。期日まで確実に納品しなければならない受注案件の場合、絶対に避けなければいけません。

新たなテクノロジーやツールの導入などで条件が優位に変わると、パレートフロントの位置も変わるため、それによって「実行可能領域」は拡がります。将来の展開を見据えた中長期的な計画などでは「いつまでに何がどこまで可能になりそうか」といった予測の見極めが非常に重要になります。

いずれにしても最終決定には、意思決定するメンバーの価値観や意向が反映されます。認知バイアスにとらわれないよう自覚すると共に、技術チームの見解や現場のオペレーションと大きなギャップ(温度差)が生じないよう、ふだんから判断材料となる情報に広く接しておく姿勢が大切です。

正解が判らないからといって「撃って撃って撃ちまくる」感覚に陥り、計画性を手放したケースも過去に見てきました。「パレートフロントの位置を見定めて、最適解を探る」意識を身につけると、大きな失敗を回避してトライ&エラーの効率を(理論的には)上げることができます。これこそが「正解のない問題」に対する、正しい姿勢ではないかと考えます。

参考に→ wikipedia「Multi-objective optimization」の日本語訳

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