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組織の経済学(新制度派経済学)

新制度派経済学(通称:組織の経済学)について、どうして関心を持ち、期待しているのか?という観点から少し述べてみます。

新制度派経済学とは?・・・現在進行形で研究されており、定義にも広がりがありますが・・・特長は「経済合理性を ” 制度 ” を切り口に分析する」点にあります。単純に「どの制度が優れているか」の比較だけでなく、環境条件とのマッチングを評価しますが、そこに信念体系(慣習や信仰などの文化)まで考慮されている点に、ぼく自身は大きな感銘を受けました。

ある地域でうまくいっている制度だからといって、他の地域で真似をして必ずうまくいくとは限りません。背景にある様々な要因を見出して、建設的な提言につなげられる研究だと感じています。
コンピューターの活用と相性が良く(計量経済学に近い?)単純な「正解」がない問題に、複数の解決パターンと最適な選択肢の組み合わせを導き出せる「意思決定のサポート」的な研究であるため、人工知能との親和性も高そうです。
(詳しくは、マッチング理論、オークション理論、マーケットデザイン、メカニズムデザイン、などのキーワードで検索してみてください。)

一般的にビジネスの現場では、1円単位で費用を管理しながら、財務諸表レベルになるとある程度の「解釈の幅」が許されます。更にマクロ経済レベルになると、経済学の流派によって正反対の解釈すら出てきます。
お金を扱う規模が大きくなるほど自由度が拡がり、実態が判明できなくなるのは大きな矛盾だと思っていました。ぼくにとって経済理論の公式は(自然科学の物理法則と比べて)思想や宗教のように感じられます。
そんな自分の問題意識に応えてくれたのが、この新制度派経済学(通称:組織の経済学)でした。

例えば「プリンシパル=エージェント問題」といった研究があります。依頼人(プリンシパル)と代理人(エージェント)の利益相反は、あらゆる組織の役割・立場の間で生じています。
ぼくには過去に取引先との行き違いを穏便に解決したかったのに、先方の代理人弁護士から挑発されて憤慨した経験があります。問題がこじれた方が代理人の利益が膨らむ場合、こうして紛争が誘発される可能性があります。このメカニズムを念頭に置いてインセンティブやペナルティを設計しなければ、モラルハザードが起きるのは当然だと思います。

他にも「取引コスト理論」の研究では、受発注に伴う「目に見えない(数字に表れない)負担」がトータルのコストに及ぼす影響について考えます。
この研究を応用する形で、管理本部と各地域の営業所で「決裁権をどのように受け持つべきか?」を考えると、実践に役立つヒントが得られます。(この問題にも過去に散々悩まされたので、以下の記事のような明快な示唆には感動すら覚えました!)


システムの3原型の性能比較:戦略を決定する経営陣と、それを具体化する現場のモジュールについて、それぞれの最適パターンを検討した例。「安定した環境→本部主導のマニュアル管理」「緩やかに変化する環境→擦り合わせ型の調整」「複雑度や不確実性が高い環境→現場主体の臨機応変な判断」が最適であると示されている。(故青木昌彦 スタンフォード大学名誉教授による記事)

経済学に「メカニズムデザイン」という研究分野があったことに(過去に機械工学を履修した者として)驚くと共に、そのアプローチに親近感を覚えました。様々な社会問題の解決、市場の健全な発展のための「マーケットデザイン」には、産業分野の生産性を向上させてきたノウハウが、社会全体に広がっていく期待を感じています。

資本主義におけるビジネスと「信用の創造」は切り離せませんが、信用を直接的に評価できる数値的な指標はありません。新たな施策に取り組んで、その成果が売上の伸びや株価に反映されるまではタイムラグが生じます。流した汗との相関が見えにくいと、努力を怠る人が多くなり、組織内に不正や改竄が蔓延ってしまいます。
新制度派経済学のアプローチには、組織を効率良く運営するために「合理性を高める→倫理観が高まる」方向性が感じられます。それは結果的に、仕事の「やりがい」につながる(はず!)と感じています。

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