今日も最高の一日!
「今日も最高の一日やね!」
僕はこの言葉を毎朝口にした。
それも飼っていた金魚に向かって。
毎朝起きてすぐに「今日も最高の一日やね!」と声をかけながら餌やりをするのは僕の日課となっていた。
しかし、その金魚が体調を崩して死んでしまった。
きっかけは去年の夏祭り。
うちの子供達は金魚すくいをしたいと言い出したので、仕方なくさせてみることにした。結果は一匹もすくえなかったが、おまけで2匹貰って帰ることができた。
はじめは子供たちも可愛がっていたのだが、だんだん飽きたのか?僕だけが毎日餌をやりをすることになった。
途中、一匹がブクブクに挟まって死んでしまい、残った金魚は一匹だけになった。
ミントちゃんと名付けた金魚は我が家の唯一のペットだった。
そんな1年前の夏、僕は仕事を辞めた。
家族5人を支えることに先行きの見えない不安が僕を襲った。
だけど決心したのは他ならぬ自分。兎に角前を向いて進むしかなかった。
そんな日々の中で口にするようにしたのが、「今日も最高の一日!」だった。
一人で言うと小っ恥ずかしい。そこで飼っていた金魚に言うようにしたのがはじまりだった。
毎日口に出していると不思議にも良い事が舞い込むようになった。
そんな僕は去年の年末、新たな職場で一歩を踏み出した。
前の仕事とは異なる業種を選んだ僕は毎日失敗に苦しんだ。
それは今も変わらないのだけれど。
朝起きてから、最高の一日なんてとても思えない日も勿論ある。それでも「今日も最高の一日やね!」と僕は金魚に言い続けた。
今の仕事は危険も多く神経をとても使う。
下手をすれば大きな事故に繋がる危険性だってある。
数えるほどだけど小さな事故だったら経験した。でも大問題を避けられたのは本当に運が良かったと言うしかない。
そんな僕がついに仕事で物損事故をしてしまった。
今までの運は通用しない。この問題は大問題に発展するだろう。
言いようのない緊張が胸に迫り、警察の処理を終えて事務所に帰る車中はとても重苦しかった。
しかし今回も不幸中の幸いであろうか?
被害を受けた相手が同業種であったことで、問題を大きくせずに済むことになった。
この事故の翌日、朝いつものように金魚のところにいくと様子がおかしい。
泳げず苦しそうにしていたが、そのまま逝ってしまった。
僕はもしかしたら金魚が身代わりになってくれたのかな?と思った。
今は寂しい気持ちでいるけれど、これからも「最高の一日やね!」と朝を迎えていきたいと思う。
ミントちゃんありがとうね!