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なんどでも生まれる
『なんどでも生まれる』
彩瀬 まる (著)
出版:ポプラ社
久々に、ちょっと頑張りすぎてるときに読みたい心に効く小説をお届けします。
私も最近仕事に追われて、「よはく」がなかったのでレビューを書くために読み返しながら、ホッと心が落ち着きました。
さて、この小説の主人公はチャボの桜さん。
まあるくなって座る姿は玄米餅のようにラブリーです。
桜さんの飼い主の茂さんは、仕事や人間関係で調子を崩して下町の商店街のジイチャンとバアチャンが営む金物屋さんで自分と向き合いながら暮らしています。
チャボの桜さんの言葉は、言葉としては茂さんに伝わりません。
でも、玄米餅のような温かい体で寄り添って茂さんを想う気持ちはしっかりと伝わります。
この小説のなかの、人間も鳥たちもそれぞれの世界で、コミュニティで頑張って暮らしています。自分がどれくらい努力していても、どうしようもないことだっって起こる。鳥の世界も
『ある程度まで生き延びたなら、それそれの力の強さ弱さより、ずっと複雑で見えにくいものに俺たちは振り回されて生きてるんじゃねえかって思うよ』
とは、セキセイインコの師匠の言葉。
それを悲観しすぎたり、自分が悪いせいだって思わずに、ただ事実として受け入れることができたら、いくらばかりか楽になるのではないでしょうか。
迷うのも変えるのも、生き物ががんばって暮らしているから起こる、素敵なことです。
そして、卵の殻を破って生まれるときのように、ゆっくりと必要なだけの力が満ちて、さあ、あとは生まれるだけだって時がくるのです。
最近、(というかずっと?)翠さんと話している、焦らず足掻かず「今」に目を向けて、できることをやっていたら、大いなる流れのなかで来るべき時がくる。そして、実際に来ている!という話と同じかなと思っています。
チャボの桜さんやたくさんの登場人物、登場鳥たちの言葉がエピソードが心に沁みる小説です。
何かとせわしない12月ですが、ちょっと落ちつた年末年始に、この小説を読みながら、自分の心の中の棚卸をするのもよいかもしれません。