見出し画像

図書館のお夜食

『図書館のお夜食』

原田ひ香(著)
発行:ポプラ社

今月の小説も、本好きに刺さる物語です。
本×ご飯×仕事を味わう、心に染みる長編小説。

東京の郊外にある、夜だけ開館する私立図書館は
今は亡き作家の蔵書を集めた本の博物館みたいな図書館。
そこに、ちょっと疲れた元書店員の主人公が
勤め始めるところから始まります。

もう、『夜だけ開館する私立図書館』
『作家の蔵書が集められた本の博物館みたいな図書館』
このワードだけで、何それ!行ってみたい!と
本好きの心をくすぐる設定です。
それに加えて、この小説の各章に登場する
お夜食(まかない)は、小説や作家ゆかりのメニュー。

井上靖さんの『しろばんば』のカレー
赤毛のアンのパンとバタときゅうり
田辺聖子の鰯のたいたんとおからのたいたん
...etc

誰しも一度は本の中のメニューを
食べてみたいなあと思ったことがあるのでは??
こういった設定も本好きの心をくすぐります。

そして、物語のなかで、主人公だけでなく
この図書館で働く人たちが、それぞれの本とのかかわり方
生き方を見つめながら、働いているのも
なんだか自分に置き換えて、しみじみと共感できるのでした。

若いころにまったく意味がわからなかった本が
今読むとぐっと心に沁みたり。
逆に、あれだけ若いときにハラハラドキドキしながら
はまった漫画が、今もとても面白いんだけど
やっぱり初読のときの高揚感は得られなかったり。
ライフスタイルによって読書のスタイルも変わったり。
(子育て中はそんなに長い小説読めないよ。。
 年を重ねると物語に没頭できる時間が短くなる。。。とかね)
なんだか、それもひっくるめて、今の読書スタイルや
本との向き合い方を肯定してくれるような物語でした。

SENSE OF WONDERが提唱する『本のある豊かな暮らし』
それって間違ってないよね。
めちゃめちゃ読書量の多い人が本好きってわけじゃないし
『今』の『自分』にあった本の愉しみをしたらいいんだ
ということを、やさしく教えてくれました。

そして、いつものSENSE OF WONDER発動です。
この小説の内容を翠さんに伝える前に
今月は『向田邦子の手料理』を出そうと言ってた翠さん。
そうです、この小説には『向田邦子の手料理』に
登場する「ままや」の人参ご飯の章があるのです。

気になる方は、2冊セットでいかがですか?(笑)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?