うしろむき夕食店
『うしろむき夕食店』
冬森灯(著)
発行:ポプラ社
四六判 308ページ
少し前置きが長くなるため、
本の紹介のみご覧になりたい方は
頭の方を飛ばしてください。
最近自分が楽しむためだけではなく
皆さんにおススメすることを頭に置いて
本を手に取ることが多くなりました。
また、いろんな方のブックレビューを
ちょこちょこチェックしたりしています。
そうすると、その作品の『良し』『悪し』
ではなく、読者のコンディションや
年齢や状況によってハマる、ハマらないが
あるんだろうなと思います。
実用書ではなく、マンガや小説は特に。
芥川賞と直木賞の違いや純文学とエンタメ小説。
高尚なものが良しというわけでもなく
面白さだけが良しというわけでもなく
それぞれ誰かにとって魅力的な作品なのだと思います。
10代の時に何のことだかちっともわからなかった作品が
40代になって激しく心を揺さぶることがあるというと
わかりやすいですか?
さて、ここからが本の紹介です。
この『うしろむき夕食店』。
優しくて、前向きに元気がでるような物語。
このお店を訪れた人たちが、
ここで食べた様々な料理や出会いをきっかけに
仕事を頑張れたり、人間関係を構築したりしながら
前へと進んでいきます。
題名とは正反対じゃない?!と思われた皆さん
そうなんです。ちっともうしろむきじゃないんです。
なぜ、この題名かというと、舞台が古き良き
昭和のたたずまいの洋食店だから。
そして、過去があるから今があり
今があるから未来があるのです。
そう思うと、過去(うしろ)を振り返るのも
悪いことではないように思いますね。
この小説を読むと、最後の大団円を含めて
連続ドラマを1クール見たような気になります。
文章のひとつひとつを嚙みしめて自分の糧とする
というよりは、深く考えなくても
楽しいうれしい頑張ろう!
という気持ちになれる小説です。
優しい人たちに囲まれて、SENSE OF WONDERを
好きでいてくれる皆さんにぴったりだなと思いました。
そして、先々月に紹介した『お探し物は図書室まで』
と世界がつながっている?と
思えるエピソードがあるのも、なんだか楽しい。
作者さんも全く違うから、繋がりがあるわけでは
ないのだけれど、いろんな小説の世界をコネクトして
世界を広げていけるのは読書の醍醐味ですね。
連作短編なので、ひとつひとつの章ごとに
のんびり読み進めていっても
よいかもしれません。
普段は小説を手に取らない方にも、
軽く楽しんでもらえるような小説です。
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