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教員採用試験の結果は……

懐かしい。思い出すだけでどこか恥ずかしくなる。私が大学生4年生の時の話。もう3年前になるからうろ覚えな部分もあるけど、少しずつ恥ずかしさを抑えながら思い出をみなさんに話します。これもTwitterと違って長くなるから、時間がある時でいいからね。


時間があるのね?じゃあ始めるよ。


今日は東京都の教員採用試験2時試験の発表日

体中が熱い

心臓がバクバクしている

これは不安と緊張という感情なのだろう

発表の時間になった

すぐには開かない

あえて少し時間を置く

LINEが飛んできた

「わかめ、俺受かったよ!」

ゼミの友人からだ

素直には喜べなかった

むしろ最悪

本当に人として幼い

するとまたLINEが鳴る

「わかめどうだった〜?」

別の友人からだ

ちなみにどうだった?と聞くやつは

大体受かっていない

そう思いながらあえて開かない

よし 見るぞ 大丈夫だ

あれだけ あれだけやったんだ

面接だってよく覚えてないけど

隣のやつよりはできた気がする

だから大丈夫だ

本当 今振り返っても

自分の幼さに嫌気がさすけど

本当にこう思っていた


Yahoo検索アプリを開く

『東京都 教員採用試験 合格発表』

ゆっくりと打ち込む

何となくここだろうという場所を

クリックしていくと

『東京都教員採用試験合格者発表』

に辿り着く

心臓はもうはち切れそう

たくさんの数字が並んでいる

私の番号は

『100861』

ゆっくりゆっくり探す

1007!このページだ!

指のスピードがさらに遅くなる

隣に友人がいたら

お前はナマケモノかと突っ込まれてもおかしくない



100781

100789

100801

100811

100825

心臓のバクバクが部屋中に響く

100854

100855

100858

頼む 頼む 頼む

100860

頼む 頼む 頼む 頼む

100865

体から熱が一気に抜けていった

いつの間にか膝立ちになっている自分に気づく

ゆっくりと座り込む

「そっかぁ」

それ以外出てこなかった

そう私の初めての教員採用試験は

不合格だった

張り詰めた糸が完全に切れた

LINEを開くと

通知が56件

開く気にもならなかった

そのままYouTubeを開く

いつもなら時間も忘れて見ていられるのに

全く話が入ってこない

そうか今自分はこれをしたいんじゃないのか

電話アプリを開く

電話帳にあるゼミの先生に電話をかける

『プルルルルルル はい』


先生はずるい

いつも電話に全く出ないのに

こういう日は本当にすぐに出る

こういう日っていうのは


私が弱っている日


エスパーかよ

「わかめです。今からゼミに行きます。いますか?」

『いますよ。気をつけて来なさい』

先生はとくに何も聞いてこなかった

そりゃそうか

合格してたら即 合格です っていうもんな

いつもはノースフェイスのリュックに

何でもかんでも入れて出かけるのに

今日は鍵とスマホと財布と学生証だけ

それしか持たなかった

いや、それしか持てなかった


大学までの道のりは意外と遠く

バスに乗って

電車に乗って

バスに乗って

ようやく着いた

バス停に降りて

エスカレーターに乗る

警備員が立っているからお辞儀をする

自動ドアをぬけて

左に曲がる

エレベーターの15階が

先生の部屋

逃げていった熱がまた戻ってきた

また心臓がはやくなる

だめだ トイレに入る

みっともない

ダサい

恥ずかしい

カッコ悪い

いろんな感情が私を殺そうとしてくる

息が苦しい 体が熱い 息が苦しい

LINEが鳴る

『シュークリームと紅茶を用意してあります』

『大丈夫 ゆっくり来なさい 大丈夫』

熱が下がっていく

呼吸がゆっくりになる

本当にエスパーかよ

泣きそうになったけど我慢する

大学生になって泣いたことなんて

映画くらいしかない

あと漫画か

まぁ珍しいってこと

トイレから出て

ゼミの部屋に向かう

誰かいたら嫌だな

ちょっと目を細めてみてみる

誰もいない…な

良かった

コン コン コン

「失礼します」


「こんばんは」

『こんばんわ』

「………」

『………』

「………」

「先生だめだった」

『………』

『うん』

「カッコ悪いよね。ごめんね」

『うん』

「こんな遅くに迷惑だよね。ごめんね」

『うん』

「さっきトイレでこもってたんよ。息が苦しくなって」

『うん』

「本当カッコわりぃ」

『うんうん、まずはシュークリームを食べなさい』

『それから美味しい紅茶も』

『さぁまずは座って これからの話をしましょう』


教育書だらけの机を綺麗にする

綺麗にすると言っても

A地点からB地点への移動


紅茶を飲む 甘くて美味しい

体がぽっと熱くなる

でもさっきの熱いとは全然違う

『さぁどうぞ 絶品だよ』

聞いたことないお店の名前

卵とバターのいい匂いが

部屋中に広がる

「いい匂い」

『そうでしょ そうでしょ 私のおすすめなんですよ』

「いただきます」

『どうぞ』

一口食べる

外はざっくざくのクッキー生地で

中のカスタードクリームが濃い

「美味しい」

そう呟いた瞬間に涙が溢れた

嗚咽はしない

ただただ涙が溢れた

『君の涙を初めて見ました』

先生がゆっくり私を見ながら

言葉を紡ぎ出していく



『その涙はきっと悔し涙と言うんですよ』

『それは努力をした人の涙なのです』

『精一杯頑張った人の涙なのです』

『そんなあなたを私は心から尊敬します』

『カッコ悪くもダサくもありません』

『君はめいっぱいの自分で』

『誠心誠意取り組んだから悔しいんです』

「……」


『大切な話をします ゆっくり飲み込んでくださいね』

『失敗と成功はよく選択が大切だと言われます』

『別れ道になっていて、成功を選ばないといけない』

『それは間違いです』

『実際は失敗という壁がいくつも並んでいます』

『その一番奥に成功があるんです』

『だから失敗というのは成功のための経験なのです』

『失敗は、上手くいかないから別の方法を探そうという発見なのです』

『失敗することは悪でも間違いでもありません』

心が少しずつ 少しずつ軽くなる


先生の言葉が

私の縦糸に触れる

先生の声色が

私の横糸に触れる


「先生」

『何ですか?』

「私は諦めません」

『そうですか』

『それがきっとあなたらしい』

『たくさん失敗しなさい そして成功もしなさい』


そこからはあまり覚えてない

でも最近の恋愛話と

先生が奥さんに怒られた話と

先生の愚痴をたくさん聞いた


私は期限付き合格という形で

完全な不合格ではなかったけど

合格ではなかった

でも経験して良かったと思う


私がみんなに伝えたいのは


不合格だからといって

あなたに価値がないわけではない

不合格だからといって

あなたが悪いわけではない


どんな結果であれ

頑張ったあなたは偉い


失敗とは

転んだことではなく

その後に起き上がらないこと

だからゆっくり上がっておいで


一人で苦しいなら

周りを頼って欲しい

一人で考えていても

いいことなんか何もないから


誰もいないなら

私に相談しておいで

話を聞くくらいはできるから



ここまで読んでくれたあなたが大好きです

最後にハートを押してくれたら

泣いて喜びます









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